「メイクイーン」放送終了…4ヶ月間も人気を得た理由とは?

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※この記事にはドラマ「メイクイーン」の結末に関する内容が含まれています。
写真=MBC
韓国で8月18日に放送開始し、12月23日まで続いたMBC週末ドラマ「メイクイーン」は全38話で4ヶ月に渡って放送された。このように長期間に渡って放送されたにも関わらず、引き続き人気を得た「メイクイーン」が視聴者を虜にしたその魅力とは何だろうか。

「メイクイーン」は一人の女性が周りの厳しい環境や人生の試練を乗り越え、海洋専門家に成長する過程を描いたサクセスストーリーだ。蔚山(ウルサン)を舞台に描かれた同ドラマは華麗な映像で、夢と愛の大切さを届けた。

「メイクイーン」は勧善懲悪とハッピーエンドで長かったストーリーの幕を閉じた。韓国で23日に放送された最終話で、チャン・ドヒョン(イ・ドクファ)のすべての悪行に気付いた家族は彼から背を向けた。これまで成功と野望だけを追いかけてきたドヒョンは、自身に残っているものは何もないということに気付いた。結局ドヒョンはこれまでの人生を反省し、自殺を選んだ。娘のチョン・ヘジュ(ハン・ジヘ)がドヒョンを父親として認めたが、ドヒョンは笑顔で死を選んだ。

それから1年が経ち、主人公たちが幸せに暮らす場面も描かれた。イ・ボンヒ(キム・ジヨン)はユン・ジョンウ(イ・フン)の子供を授け、イ・グムヒ(ヤン・ミギョン)とチャン・イルムン(ユン・ジョンファ)は仲直りし、親子関係を取り戻した。チャン・インファ(ソン・ウンソ)は田舎で弁護士として働いているパク・チャンヒ(ジェヒ)を訪ね、復縁に成功した。

何よりも主人公のチョン・ヘジュ(ハン・ジヘ)はドリルシップ“メイクイーン号”を出航し、成功を遂げた。子供の頃からドリルシップが作りたいと願っていたヘジュが夢を叶えたのだ。その時、ヘジュの前にはカン・サン(キム・ジェウォン)が現われ、ヘジュにプロポーズをした。二人はこれからも一緒に夢を見ようと約束した。

「メイクイーン」は11.3%(AGBニールセン・メディア集計、全国基準)の視聴率でスタートし、成人俳優たちが出演してからは20%を越える視聴率を記録した。最終話の視聴率は26.4%で、番組史上最高の視聴率を記録して有終の美を飾った。「メイクイーン」はMBCが自ら制作したドラマであり、大きな成果を残したといえる。

「メイクイーン」は当初、「ダサい」「ありきった話」「典型的な韓国ドラマだ」などの酷評を受けてきた。それにも関わらず、引き続き反響を得てきたのも事実だ。その理由を分析してみた。

どろどろ系ドラマだって?「メイクイーン」が伝えたメッセージ


「メイクイーン」には“どろどろ系ドラマ”という汚名が被せられていた。その理由は、ドラマで一貫した素材が「私の10年の秘密」であるためだ。

チョン・ヘジュ(ハン・ジヘ)はチョン・ホンチョル(アン・ネサン)の家でチョ・ダルスン(クム・ボラ)からいじめられながら育った。幼い頃、ダルスンが実母ではないということには気付いたが、ホンチョルが実父ではないと思ったことはなかった。それだけホンチョルはヘジュを大事に育ててきた。

しかし、実はヘジュの実母はヘジュの友達であるチャン・インファ(ソン・ウンソ)の母親ヤン・ミギョンだった。二人は涙の再会をし、ユン・ハクス(ソヌ・ジェドク)を殺したチャン・ドヒョン(イ・ドクファ)を目標に復讐を計画した。

ここまでは最初の設定を元に展開されたシナリオであったため、頷ける内容だ。しかし、終了まで残り3話となったところで、ヘジュの実父が実はチャン・ドヒョンっであるという事実が公開され、人々を驚かせた。劇中でヘジュは父親が3人、母親が2人もいたということになる。視聴者は衝撃を受け、「メイクイーン」は一気に“どろどろ系ドラマ”に転落した。

実際、ヘジュとドヒョンが許しあい、仲直りをするためには何らかのきっかけが必要だった。そのために二人が親子関係であるという劇的な装置が用いられたと見られる。ヘジュは自分からチャン・ドヒョンの血を抜きたいと言うほど苦しんだが、最終話ではドヒョンを父親として認めた。

「メイクイーン」は「血が繋がっていなくても家族だ」ということを伝え、家族愛を強調した。ヘジュはイ・グムヒが実母であるということを知ってからもすぐにはグムヒのところへ行かなかった。ダルスンの家族と共に生活するほうを選んだのだ。27年間も共に暮らしてきた絆があるので、彼らが自分の本当の家族であると思ったためだ。また、ヘジュは3人の父親の中でチョン・ホンチョルを自身の本当の父親として認めた。

「メイクイーン」は家族の重要性とともに夢への希望も届けた。チャン・ドヒョン(イ・ドクファ)が友達を殺すなどの悪行を行った理由は、野望のためだった。ドリルシップを作るという野望に目が眩んでいたのだ。

これまで視聴者はチャン・ドヒョンの極悪な行動に憤慨した。しかし、最終話のドヒョンの告白はそんな視聴者をも泣かせた。ドヒョンは「僕が生まれ、生きてきた時代は戦争と貧困の時代だった。成功のために誰かを破滅させることを恥ずかしいことだと思っていなかった」と告白し、ヘジュが新しい時代を切り開いたことを誇りに思った。ドヒョンは時代が生んだ被害者でもあったのだ。

結局ドヒョンが熱望していた夢は、ヘジュとカン・サンが叶えた。ドリルシップは二人の夢でもあった。「メイクイーン」は夢を諦めず、前向きに生きれば成功できるというメッセージも伝えた。

子役から中年俳優まで…安定した演技

お茶の間の視聴者を虜にしたのは、出演俳優たちの安定した演技だった。ベテランの俳優たちがそれぞれのキャラクターの悲しみを上手く表現し、ドラマへの集中度を高めた。

「メイクイーン」の序盤の成功をリードしたのは、子役たちだった。MBC「太陽を抱く月」で切ない演技を披露したキム・ユジョンは、今回のドラマでは演技の変身を試みた。キム・ユジョンは方言を自由自在に操り、どのような試練があっても明るく笑う“キャンディー”みたいなキャラクターを素晴らしく演じきった。カン・サン役のパク・チビン、パク・チャンヒ役のパク・コンテもキャラクターを上手く表現した。

子役からバトンを受け取った成人俳優たちも安定した演技を披露した。子役と成人俳優間のシンクロ率が高く、劇に自然に溶け込むことができた。

成人俳優が登場してから、チョン・ヘジュは多少ワイルドなキャラクターに変化したが、ハン・ジヘの演技は安定していた。ハン・ジヘは愛くるしい演技や涙を流す演技で輝きを増した。ハン・ジヘは父親への懐かしさと実母ヤン・ミギョンに対する切なさを上手く表現したという評価を受けた。

ヘジュの隣を守る二人の男、カン・サンとチャンヒ役のキム・ジェウォン&ジェヒも大きな反響を得た。カン・サンは図々しいキャラクターで、チャンヒは心の暗闇を持っている人物だ。二人はそれぞれの魅力を披露し、女性視聴者を虜にした。

「メイクイーン」では中年俳優たちの活躍も素晴らしかった。イ・グムヒ役のヤン・ミギョンは実の娘のユジン(ハン・ジヘ)を探して彷徨う母性の手本を演じた。ヤン・ミギョンは夫のチャン・ドヒョン(イ・ドクファ)の悪行を知ってから一変するキャラクターを演じ、長い期間培ってきた演技の底力を見せてくれた。

何よりも「メイクイーン」で最も輝いたのはチャン・ドヒョン役のイ・ドクファだった。イ・ドクファは言葉通り“チャン・ドヒョンみたいに見えた”。イ・ドクファは同ドラマを通じて悪役演技の一人者に浮上した。

また、継母から“国民の母親”になるクム・ボラ(チョ・ダルスン役)、ドタバタで同い年のカップルキム・ジヨン(イ・ボンヒ)&イ・フン(ユン・ジョンウ)は劇に活力を与えてくれた。

「メイクイーン」の後続番組として、ソウル出はずれの老舗を舞台に3代に続けて蕎麦工場を経営する家族のストーリーを描いたホームドラマ「百年の遺産」が韓国で2013年1月5日から放送される。

記者 : ソン・ヒョジョン