“悪役専門俳優”クァク・ミンソク…平凡な顔が武器

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国民的なドラマKBS 2TV「棚ぼたのあなた」には可愛らしいキャラクターが多かった。その分、憎たらしいキャラクターも多かった。そんな中でもチプロデューサーは欠かせないキャラクターだ。

ドラマでチプロデューサーは“悪魔の編集”でユンビン(キム・ウォンジュン)とパン・イルスク(ヤン・ジョンア)を困らせた人物だ。むしろ「この世界がもともとこういうものだと知らなかったのか?」と自分の行動に堂々としていた。

チプロデューサーを演じた俳優はクァク・ミンソクだ。クァク・ミンソクの演技に視聴者たちは「本当にテレビ局の社員だと思った」「テレビだということを知りながらも憎かった」「最高の悪役だ」などと反応を示した。

実は彼、悪役は初めてではなかった。クァク・ミンソクは映画「モダンボーイ」で主演のパク・ヘイルを拷問した厳しい日本人刑事として、MBCドラマ「紅の魂~私の中のあなた~」ではトラックに乗った殺し屋として、「チング~愛と友情の絆~」では憎たらしい浮気者として登場した。そのため彼は、“悪役専門俳優”と呼ばれることもある。

実際の彼はどうだろうか。180cmを越える長身に善良な印象を持っていた。隣のおじさんのような親しみが感じられた。彼を見た瞬間、“美中年”という言葉を思い出した。こんなにも善良そうに見える俳優が“悪役専門俳優”だとは、多少驚きだった。

こんな反応についてクァク・ミンソクも「皆実際に会ったら、とても優しく見えると言う。しかし、撮影に入ったら認めてくれる。むしろ顔が平凡だから、色々な役を演じることが出来ると思う。ひげをつけるだけで違って見えるから」と笑顔で話していた。

写真=KBS 2TV「棚ぼたのあなた」(上)、映画「モダンボーイ」スクリーンショット(下)、MBC「紅の魂~私の中のあなた~」スクリーンショット(下)

気づく人々……「僕もびっくり」

クァク・ミンソクは「棚ぼたのあなた」が国民的なドラマであることを実感した。クァク・ミンソクは1ヶ月ほどしか出演しなかった。短い出演だったが、注目せざるを得ないキャラクターだった。クァク・ミンソクは「『棚ぼたのあなた』に出演していたとき、僕に気づく食堂のおばさんたちがいた。僕もびっくりした。サインして欲しいという方もいれば、『なんでそんなに意地悪するの?』と聞く方もいた」と当時を振り返った。

「棚ぼたのあなた」の放送終了後、クァク・ミンソクは再び注目を浴びた。SNSに掲載した一枚の写真のためだ。クァク・ミンソクは先月21日、TwitterにBIGBANGのT.O.P、俳優のキム・ミンジェと一緒に撮った写真を掲載した。この写真は「T.O.Pの近況」というタイトルが付けられ、リアルタイム検索ワードランキングの上位にランクインした。

クァク・ミンソクがT.O.Pと一緒に写真が撮れた理由は映画「同窓生」で共演したためだ。「同窓生」はT.O.Pが主人公を演じた映画ですでに多くの関心を集めている。

クァク・ミンソクはこの映画で、T.O.Pの父であり、スパイとして出演する。彼は役割上、T.O.Pと一緒のシーンが多かった。クァク・ミンソクの撮影は終わっている状態だ。しかし、彼はまだ映画の役から抜け出せずにいる様子だった。彼は後輩のT.O.Pを大切にする心を隠すことなく表した。すでにT.O.Pのアイドル出身というレッテルを剥がし、俳優として認めていた。

「T.O.Pは集中力が本当に高い。大型芸能事務所のアイドルで、ちゃんとした演技のコースを踏んだわけではない。それでも、従来の俳優を越えるほどの集中力、イメージ管理など基本的なことがすべて出来ている。主演としてストーリーを引っ張っていく力もあると思う。実際のT.O.Pは親しみやすく、いたずらっ子な一面を持つ。しかし、演技に入るとキャラクターにさっと入り込む。なぜ人々が熱狂し、呼応するのかが分かった」


演技人生10年、最高の作品は…

クァク・ミンソクは慶星(キョンソン)大学演劇映画学科を卒業した後、長い間劇団生活をした。お金がないため、いわゆる肉体労働をしながら、一日一日をつないだ。2003年彼は“商業俳優”になった。彼は商業映画とテレビドラマに出演するという意味で、自身を商業俳優だと話した。その後10年間、黙々と自身の道を歩いている。

「父が2003年に急に亡くなった。葬儀を行うお金もなかった。30歳の初め、長男の役割が出来ていなかった。お酒とタバコをやめ、劇団の代表に一緒に出来ないと話した。一般的な職業に就こうとも思った。しかし、僕にできることは演技しかなかった。そのときちょうど、「ビッグ・スウィンドル!」のオーディションがあった。プロの俳優になって、自分の名前3文字を残そうと誓った。父は演劇映画学科を卒業したが、生きていたとき、この仕事をやらせようとしなかった。それだけ大変だから。化粧する人にはなって欲しくなかったようだ。「ビッグ・スウィンドル!」が公開されたとき、僕の出演シーンが編集されずに、そのまま流れたのですごく泣いた。父に見せたかったのに、本当に残念だった」

「ビッグ・スウィンドル!」の撮影以降、彼は4~5年の間プロフィールを持って、映画会社を自分で回った。そうやって彼は映画12本、ドラマ22本に出演することになった。映画「幻想劇場」とドラマ1~2本で主演をつとめた以外は、助演またはエキストラだった。クァク・ミンソクはしばらく悩んだ末、人生最高の作品として映画「モダンボーイ」と「幻想劇場」を選んだ。

「『モダンボーイ』はチョン・ジウ監督の作品だ。撮影のとき、映画とキャラクターについて監督とたくさん話した。監督が『これぐらいだけ表現してください』という人ではなく、食事会のときや、他の場所でも映画についての話をした。演技をしている気分になった。日本人刑事を演じたが、印象深かった。興行的にあまり成功せず、残念だった。

もう一つ選ぶとしたらイ・ギュマン監督の『幻想劇場』だ。20分ずつ、短編3本が集まって長編になった映画だ。主演だったため、最初から最後まで見通す必要があった。それが大変だった。どうしたらいいか、分からなかったが、監督が助けてくれた。『幻想劇場』がソウルで公開される前に、全州(チョンジュ)国際映画祭で舞台あいさつをして、観客との対話を行った。そのとき、客席にパク・ヘイルさんが座っていた。ついでに来たのだと思うが、とても有り難く、不思議な気分だった」

辛く、無視されたことが多かったにもかかわらず、長い時間耐えてきたクァク・ミンソクは、自分を褒めていた。彼は「以前は、幸せだとは思わなかったが、現場に行くと幸せな気持ちになる。いつも頑張ろうと思う」と話した。


準備された“ヤイロチョウ俳優”

クァク・ミンソクには“悪役専門俳優”よりも“ヤイロチョウ(八色鳥)俳優”という言葉が似合いそうだ。実際彼は“悪役”より医師や警察など強そうな役をよりたくさん演じてきた。つまり、カリスマ性あふれる男らしい役をたくさん演じてきたのだ。その中で悪役がより強烈な印象を残し、“悪役専門俳優”になっただけだ。

「最初は善良な役をたくさん演じた。刑事でオーディションを受けたのに、先生役を演じろといわれたこともあった。強い性格の演技を始めたのはクァク・キョンテク監督の『タイフーン/TYPHOON』からだった。短い出演だったが、クァク監督が演技が上手だと褒めてくれた。それに出てからクァク監督がずっと呼んでくれた。『タイフーン/TYPHOON』以降、すべての作品に愛着がある。役について徹底的に研究するスタイルだ。演技については自信がない。できるだけキャラクター化させることが長所だと思う。僕はキャラクターに完全にはまる。準備をする1ヶ月間、体重を落としたり、方言などを身につける。俳優は顔におしろいを付けたら、ほかのキャラクターに変われなくてはならないと思う」

クァク・ミンソクはいつも変化する準備が出来ている俳優だ。彼は「“悪役専門俳優”という言葉も僕は好きだ。悪役をまた演じることになったら、今より上手にできる」と自信をみせながら、「観客が期待して、また見たいと思う俳優になりたい」と話した。そう言いながらも彼は「ちょっと欲張りすぎた発言かな?」と恥ずかしそうに話しながら微笑んだ。

40代になって注目を浴びている俳優クァク・ミンソク。これについて彼は「僕は一度も遅れたと考えたことがない。少しずつキャスティングの連絡が来るだけでありがたい。もっと頑張ろうと思う。時間が経つにつれ、自分を大切に出来るようになる」と所信のある発言をした。

「人々の喜怒哀楽を上手に表現できる俳優になりたい。学ぶことも生きること自体も、賢明に判断できないときがあった。そのとき、とても面白く切ない映画を見た。その瞬間だけは現実的な悩みや感情などを忘れることができた。演技で人々に影響を与えることができることに気がついた。誰かが僕の演技に勇気付けられ、元気付けられることもあるから、真心を込めて演技をしようと思う。上手に自己管理しながら、真剣にすべての瞬間に取り組む。そんなことに気づいた今が好きだ」

記者 : ソン・ヒョジョン、写真 : キム・ジェチャン