「ウララ・カップル」妻を泣かせてはいけない理由とは?

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写真=KBS

疲れた妻の現実を頼りない不倫夫が理解する、精神成長ストーリー

「ウララ・カップル」のコ・スナム(シン・ヒョンジュン)とナ・ヨオク(キム・ジョンウン)は、前世で実ることのなかった夫婦の縁を、転生し現世で結んだ夫婦だ。彼らの前世は、1919年、日帝時代の独立軍の闘士であったジュファン(シン・ヒョンジュン)と芸者のサユリ(キム・ジョンウン)である。ジュファンはサユリの助けを借り爆弾テロを試みるが、総督の暗殺に失敗してしまう。

爆弾テロが失敗したら、自分はそれ以上生きてはいないだろうと暗示したジュファンの手紙を読んだサユリは、ジュファンが死んだと思い自殺する。爆弾テロに失敗したジュファンがサユリのもとへ戻った時には、サユリはすでにこの世にはいなかった。ジュファンとサユリの結ばれなかった切ない恋を強調するために、ドラマチックな設定を浮き彫りにしている。

コ・スナムとナ・ヨオクが前世で結ばれなかった切ないストーリーは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のアレンジに他ならない。「ウララ・カップル」でサユリは、ジュファンが死んだと思い込み、ジュファンの死を確認もしないで自殺するのは、「ロミオとジュリエット」で仮死状態のジュリエットをロミオが見て、彼女が死んだと勘違いし毒薬を飲んで自殺するストーリーと同じ内容だ。

しかしジュファンとサユリが、コ・スナムとナ・ヨオクに転生した今の現実は、「結婚して幸せに暮らしました」というおとぎ話のハッピーエンドとは似ても似つかない話だ。サユリがナ・ヨオクに転生して夫から受けるのは、“妻”でなく“お手伝いさん”としての待遇だ。ホテルマンのコ・スナムは、職場では優しくジェントルマンな姿で女性の歓心を買う“完璧な男”だが、自宅の玄関に入った瞬間からは妻から王様のように接してもらわないと気が済まないという二重人格の持ち主だ。

妻を手伝おうと自分が寝た布団を畳むどころか、一緒にその布団で寝た妻にも布団をたたむ義務があると大声を出すコ・スナムは、家父長制を代表するキャラクターだ。職場では女性顧客のロマンであり、不倫相手には限りなく優しい男だが、妻には“夫は天、妻は地”という論理から家父長の権利だけを主張し、家長としての義務には背を向ける、家父長制の面影を浮き彫りにするキャラクターなのだ。

このような家父長制の苦労をさらに大きくするのは、夫の家族全員だ。息子は毎日愚痴を言うし、姑は嫁を自分の秘書とでも思っているようだ。離婚した夫の妹は、家事など全然手伝わず、ナ・ヨオクの家事労働だけを楽しんでいるだけで、ナ・ヨオクの夫の実家は「夫婦クリニック 愛と戦争」(以下、愛と戦争)の典型的な姿以上に酷く、それは劣ることのない悪夢だ。

ナ・ヨオクが経験する現実の姿は、家父長的な権利意識に駆られた夫と、「愛と戦争」を真似たような夫の実家という二重苦の中で鬱憤を抑えなければならない“優しい妻”としての典型的な姿だ。このようにナ・ヨオクが受けている二重苦が、夫と魂が取り替えられるという設定で、どれほど痛快になるかをアピールするドラマチックな展開が今後の放送で明らかになる。

悔しい思いを味わったナ・ヨオクが夫の体に入るということは、抑圧される妻が家父長の夫になることで、二人の地位が逆転され、それにより以前は分からなかった気苦労が絶えない妻の現実を、甲斐性なしの不倫夫が理解するという精神成長ストーリーが展開することを示している。

これは、ナ・ヨオクが経験している夫の実家がどれほど無残なものかを初回でドラマチックに描写することで、ナ・ヨオクのやり切れない気持ちが解放感へと変わる、今後の放送分の痛快さをドラマチックにするための戦略でもある。

家父長の権威の下で笑っていたコ・スナムが、妻の立場になって流すことになる汗と涙を放送する前に、逼迫と苦難の険しい道を歩いているナ・ヨオクの姿が初回からリアルに描かれている理由がここにある。

記者 : パク・ジョンファン