「優しい男」ソン・ジュンギはなぜ“悪い男”になったのか

OhmyStar |

写真=KBS

KBS 2TV「優しい男」納得できる過程の展開が必要

KBS 2TV「優しい男」の冒頭部分だけを見ると、メディカルドラマのように見える。カン・マル(ソン・ジュンギ)はソク・ミンヒョク(チョ・ソンハ)も診断できなかった病名を正確に当てるほど、抜群の医学的な才能を持っていた。

少なくてもこの点だけを見ると、「優しい男」は「ゴールデンタイム」とは真逆の位置にある。「ゴールデンタイム」は個人が、たとえその人がチェ・イニョク(イ・ソンミン)のようにいくら優れた医師だとしても、病院というメカニズムの中で抜群の能力を発揮するのは限界があることを克明に表すドラマだ。

しかし、「優しい男」はそれとは異なる。カン・マルという頭のいい予備医師が病院に入れば、彼を社員として採用する病院は千軍万馬を得たことになるだろうという点においては「ゴールデンタイム」と真逆の位置にあることは明らかだ。

ミュージカルのファンであれば「優しい男」がミュージカル「二都物語」と共通点があることが分かるだろう。「優しい男」のカン・マルは、自身がやってもいない殺人容疑をハン・ジェヒ(パク・シヨン)に代わり、5年間囚獄される。ミュージカル「二都物語」の中のシドニー・カールトンは愛する女性の夫の代わりにギロチンに上がる。カン・マルもシドニー・カールトンも自身が犯してもいない罪を他の人に代わってかぶるという共通点がある。

また、「優しい男」は週末ドラマ「蒼のピアニスト」とも共通点を持つ。「蒼のピアニスト」は序盤の設定で、火事の中に閉じ込められた母親チェ・ヨンラン(チェ・シラ)を養子のユ・ジホ(チュ・ジフン)が助けず放っておくが、これは義理の母に一種の“復讐”をしていることを表すシーンだ。

「優しい男」も飛行機で意識不明になったソ・ウンギ(ムン・チェウォン)を助けるために努力するカン・マルにソ・ウンギの義理の母ハン・ジェヒが感謝はおろか冷たく対応する。ハン・ジェヒのために刑務所まで行ってきたカン・マルにハン・ジェヒは感謝して当たり前だ。

しかし、このようなカン・マルにハン・ジェヒが冷たい態度を見せるということは、ハン・ジェヒがカン・マルに感謝せずかえって彼を利用したことを表すシーンであり、ハン・ジェヒに利用されたカン・マルがどんな形であれハン・ジェヒに復讐をすることを暗示するシーンだ。「優しい男」と「蒼のピアニスト」の共通のキーワードである“復讐”が劇中で重要な部分を占めることは明らかだ。

結果から見せてくれたカン・マル、その背景が気になる

しかし、「優しい男」をこのような様々なドラマや公演と比較して共通点あるいは反対だという点は論外にして、初回の放送だけを見た時、釈然としない部分がある。シーンとシーンのつながりが緩すぎるという点だ。

カン・マルの妹カン・チョコ(イ・ユビ)は体が弱い。兄を心配させないためにひどく辛くない限り訴えない配慮深い妹だ。しかし、妹が兄に辛いと打ち明けても、カン・マルは妹を病院に連れてからハン・ジェヒの元に行くのではなく、妹はほったらかしてハン・ジェヒの元に駆けつける。

カン・マルがハン・ジェヒに代わって殺人の容疑を認めるという設定も同じだ。誰かの代わりに罪をかぶるということは、たとえ幼馴染であっても不可能に近いことだ。それにもかかわらず、カン・マルがハン・ジェヒの殺人容疑をかぶることは、その分カン・マルにとってハン・ジェヒが大切な人であることを知らせてくれる。

にもかかわらず、「優しい男」はカン・マルの行動の背景について説明してはくれない。“過程”そのものがない。カン・マルがどれほどハン・ジェヒのことが好きだったのか、その“過程”を見せず、ハン・ジェヒに代わって殺人容疑をかぶるとか、病気の妹を後にして彼女の元に駆けつけるという設定は“結果”だけを見せることだ。

人物の“結果”だけを見せるシーンはその他にもある。囚獄を終えたカン・マルが詐欺師になった“過程”が抜けていた。これにより視聴者は、優しい男カン・マルが、ある瞬間から突然詐欺師になってしまったことに慣れる時間が十分ではなかった。

もちろん、始まったばかりのドラマのため期待もある。予告編にはカン・マルとハン・ジェヒがどれほど愛し合った仲だったのかを見せるシーンが暗示される。これから視聴者がドラマに集中するために納得できる過程を見せてくれるか注目したい。

記者 : パク・ジョンファン