「紳士の品格」キム・ハヌル“イスは難しい子…10行の台詞で3回の感情変化”

TVREPORT |

会話を交わせば交わすほど、彼女の愉快な魅力にハマった。サバサバといている性格に、飾り気のないトークの才能。“率直”という言葉一つで表現できる女優キム・ハヌル(34)。お茶の間を“イスアリ(恋の病で寝こむこと)”で沸かせ、今では“キム・ハヌルアリ”まで……。

キム・ハヌルは12日までSBS週末ドラマ「紳士の品格」で“愛らしいドジ女”ソ・イス役を演じていた。運が良かったのか、ロンドン五輪で2週も放送が延期となり、最終話をリラックスして見ることができたという。

「ハッピーエンドだから、より一層良かった。実はフランスのニースで仕事があったので、19話、20話は見られないと思っていたけれど、オリンピックのおかげですべて見ることができた。久しぶりにドラマを見たら、共演者やスタッフたちに会いたくなった」

「ラブコメの女王?決まった幅がないので一番難しい」

―「紳士の品格」の視聴率にプレッシャーもあったと思うが。

キム・ハヌル:私やドンゴンさんもそうだったし、監督さんや脚本家さんも視聴率に対するプレッシャーはあった。だけど、視聴率も良かったし、ドラマがどんどん話題になり、反響が良かったので現場でも元気が出た。

―ドラマの序盤、演技力に対する酷評があったが。

キム・ハヌル:序盤は演技を巡って評価が分かれていた。良かったという評価もあったし、多少大げさな演技だという評価もあった。ドラマは映画より長いので、色々と挑戦してみたかった。制作発表会でも話したけど、ラブコメディが一番難しい。その幅が決まっていないから。序盤はわざとがむしゃらに演じてみたりして、放送されるドラマをチェックして、どんな感じなのか自分で判断しようとした。私に足りない部分と、やり過ぎている部分が見えてきたので、話が進むにつれ、過度な部分は押さえ、足りない部分は埋めていった。

―劇中のイスに溶け込むことができたのか?

キム・ハヌル:毎シーンでそう思っていた。いかに自然に演じられるかが、ラブコメディでもっとも重要な点。どうすれば現実でも遭遇しそうな人物として演じられるのかを悩んだ。例えば、酔っ払って携帯電話のメールを間違って送信したシーンでは、「同じことが実際に起こったらどう行動するんだろう」ということを念頭において演じた。

―「紳士の品格」で大変だったのは?

キム・ハヌル:イスが大変だった。イスは感情の変化が激しい。台詞が10行もあれば、3回は感情が変化する。ドラマなのでゆっくりと見せることもできないし、早く転換しなければならないので、そこがすごく難しかった。監督にも何回も相談したけど、その度に監督さんは「上手くできる!できる!」とおっしゃるだけだった(笑)

「チャン・ドンゴン流ラブコメディとは?真剣に演じるコメディ」

―パートナーであったチャン・ドンゴンとの共演はどうだったのか?

キム・ハヌル:所属事務所が同じなので、脚本のことを気楽に話し合うことができた。お互いの演技のチェックもした。私の演技のトーンはこれでいいのかと、監督にも聞いたし、ドンゴンさんにも聞いた。相手役の俳優は私の演技をそのまま感じる人なので、なるべくコミュニケーションをとった方がいいと思っている。

―チャン・ドンゴンのラブコメディの演技を評価するならば?

キム・ハヌル:正直、最初はどうやってラブコメディを演じるんだろうと気になっていた。ドンゴンさんのラブコメディの演技は、私から見ても新鮮だった。私が、片思いをしていたテサン(キム・スロ)ではなく、ドジン(チャン・ドンゴン)にチョコレートを渡し、告白をするシーンがある。ドジンが私の家を訪ねて来て、意地悪な台詞と笑顔を見せるシーンだった。ドンゴンさんがコミカルなシーンを真剣に演じていたので、そこがおかしかった。結局みんなで笑ってしまい、NGが出た。そのシーンを撮影してからドンゴンさんも余裕を持つようになり、私もよりストーリーに溶け込むことができた。

―年下や同い年ではなく、年上との共演だった。どんなところが違っていたのか?

キム・ハヌル:これまでは主に同い年や年下の俳優と共演してきた。今回は年上の俳優と共演し、これまで感じられなかったことを感じることができた。演技をしながらすごく楽だった。これからも先輩たちとたくさん共演をしたい。

―イスがイケメン中年4人組に負けていなかった理由は?

キム・ハヌル:イスは持っているものが多い。ドラマの女性主人公は、その幅が狭いと思っていた。だけど、イスは本当に自由自在で幅が広かった。先生だから、単調で型にはまっている人物だろうと思っていたのに、野球の審判をしたり、様々な面を持っていた。そんなイスだから、負けなかったんじゃないかな?

―チャン・ドンゴンよりもカッコいいキム・ハヌル。女性ファンが多い特別な理由は?

キム・ハヌル:性別を変えた「紳士の品格」のパロディー写真を見て、3日間笑った。とても面白かった。私にはもともと女性ファンが多かった。ファンの半分は女性ファンだった。だけど、今回の『紳士の品格』で男性ファンがすごく増えた。これは本当に嬉しい。

デビュー当時から“イケてる”より“恵まれている”と思っていた

―長く休むことなく活動を続けている“営業の秘訣”を挙げるなら?

キム・ハヌル:デビュー当時から「私が一番イケてる」と思うよりは、「私は幸運に恵まれている」と思っていた。でも、ずっと幸運が続くわけではない。幸運を掴めたのは、結局自分で努力をしたから。常に努力してきた。振り返ると、幸運と努力、そして周りの人々のおかげでここまで来ることができた。

―毎作品で相手役の俳優との呼吸がとても合っているが。

キム・ハヌル:いつも作品をするときは、「パートナーがカッコよく見えないと」と思っている。私から見ても相手役がカッコよく見えるように、私のパートナーはもちろん、監督、脚本家も最高であると常に思っている。私からそう思わないと、観客もそう思ってくれない。

―前作の低い視聴率と、映画「ブラインド」の主演女優賞にプレッシャーを感じなかったか?

キム・ハヌル:主演女優賞受賞というタイトルはもちろん、前作「ロードナンバーワン」の視聴率に対するプレッシャーはあった。受賞当時、多くの人から祝福され、私もすごく嬉しかった。だけど、それで私が変わることはないと思った。受賞をしたからって、作品を選ぶ基準が変わるわけではない。作品を選ぶ際に、ヒットしてほしいと思うのは当然のことで、作る側だけが満足しようと思って作品を作っているわけではない。

―女優歴15年目となる。今も新しい作品をする度に緊張するのか?

キム・ハヌル:新しい作品に出演する前は、一週間は眠れない。どんな作品であっても前日はほぼ眠れず、一睡もしないまま現場に向かう。ラブコメディは自然に溶け込むことで良い演技を見せられる作品がほとんどだけど、心構えだけは常に緊張していなければならない。現場で緊張がなくなったらすべてが終わりだから。作品を終えたときの快い感じが好き。「紳士の品格」も完全燃焼できたので、後悔なくイスから離れることができそう(笑)

記者 : ファン・ソヨン、写真 : キム・ヨンドク