「10人の泥棒たち」イ・ジョンジェ“彼について覚えておくべきこと”

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「10人の泥棒たち」のポパイ役は役者人生のターニングポイント

映画「10人の泥棒たち」に登場した多くの“泥棒たち”の中でイ・ジョンジェは、最近なかなか会うことのできなかった“泥棒”だった。にもかかわらず、彼は映画の中で自身のキャラクターを見事に演じきった。約2年のブランクを感じさせないほど彼は“ポパイ”そのものになりきっていた。強引な印象を受ける口髭を付けて、“ホダン(どこか抜けている)泥棒”がイ・ジョンジェによって生かされているようだと言っても過言ではない。

役者としては復帰作で目立ちたい気持ちも当然あるだろう。しかし彼はそのような欲は捨てたように見えた。まるで様々な部品が組み合わさってうまく動くように、彼も一つのキャラクターとして映画を支えたのである。

俳優イ・ジョンジェに3つのことについて聞いてみた。大きくは彼の演技と生活に関する質問だった。“青春スター”というあだ名がいつも彼についているような気がするが、イ・ジョンジェの現在を定義したいと思ったからである。


意欲満々、しかし演技をするときは力を抜きたい

「『10人の泥棒たち』の撮影を始めるとき、相反した気持ちを持っていました。多くのキャストが揃っているから、気が楽というか。役割もバランスよく配分されていたし、こんなに大きなプロジェクトを一人で背負うようなプレッシャーはなかったんです。一方では豪華な顔ぶれが集まっているのに、僕がついていけなくなったらどうしよう、という心配も少しありました」

“気持ちが不安定”であったとはいえ、現場は楽しかったという。もちろん、厳しいのはどの現場も一緒だ。ただし、役者として楽しい現場に出会うのはなかなか簡単ではないことを彼は良く知っていた。“10作品のうち2作品”だという。そのため、厳しくても楽しい現場で仕事ができたのは彼としても幸運だった。

今回彼は演技のことだけを考えることができた。ベテランのキム・へスク、キム・ユンソク、キム・ヘスと若手のキム・スヒョンとの間で彼はちょうど真ん中の立場だった。軍隊でも、階級が中級の人は、体は疲れても心は穏やかなことと一緒だという。

「真のプロは調和を重視していると感じました。みんな自分のパートをきっちりやっていて良かったです。経歴では僕が真ん中くらいですが、ある意味ではみんな仲間です。でも、先輩の気持ち、後輩の気持ちをお互いがより分かり合えるようになりました。

キム・ユンソクさんは後輩を集めてご馳走をしてくれます。キム・へスクさんは地方の撮影から戻るたびにお土産を買ってきてくださったし、末っ子のキム・スヒョンはムードメーカーだった。それで僕とチョン・ジヒョンはやることがなくて、演技のことだけを考えればOKというか(笑)」

軽いジョークのようだったが、その中からも現場の厳しさがうかがえる。デビュー20年目を迎える彼も現場ではいつも緊張している。だからイ・ジョンジェは最近では演技をするときに力を抜こうとしている。

「以前は力も入りすぎて、凄く緊張していました。それでは不自然になりがちです。アドリブや表現力の幅が乏しく見えてしまう。歳を重ねていくにつれて(演技が)楽になるということはないと思います。自分が満足のできる作品に出会うのも簡単ではないし。僕が欲張りだからかも知れないけれど、演技というものはもともと完璧にはならないものですから。

だからこそ、もっと頑張りたくなります。体をほぐして考えも深くなるにつれ少しずつ良くなるわけです。若いころは一発で何とかしたくて、演技のトレーニングもたくさんやっていました。しかし、演技というのは生活から感じる些細な感情をもとに何かを表現するものですから、たくさん経験することが肝心です。歳を重ねるにつれて経験豊富な方がいい演技をするのは当たり前のことです」


ブランクは演技に集中するための一つの過程だった

確かにイ・ジョンジェは2年ほど観客の前から姿を消した。ブランクともいえる時間だった。当時彼はファッション、レストラン、不動産など、様々なビジネスに携わっていた。今はすべてから手を引いて演技だけに没頭している。

「男が30~40代になると、周りから色々と声を掛けられます。投資をしないかと。そうすると、やってみようかとう気になったりします。僕もそうでした。それで肝心なシナリオをじっくり読まずにほったらかしにしていたのではないかと。

実はブランクには2種類があります。外部からのものと自らの意思によるもの。声を掛けられず、自分の意思とは関係なくブランクになることもあれば、仕事への熱意が足りず休むこともあります。

実は色々とオファーは受けていました。当時はそれらのキャラクターが好かれるかどうか悩んだ末、諦めていました。周りからは『考え込みすぎじゃない?』などと言われていました。その通りです。考えすぎて『これは多分、好かれないだろう』と思い込んで、断ったのも事実です。

振り返れば、やるべきでした。当時、経験を積んで、演出家やスタッフとともに工夫を凝らして、皆さんに好かれるような作品を作るために頑張るべきでした。ただひたすら待っていたのは間違いだったと思います」

イ・ジョンジェは“多作”という言葉を口に出した。これからは多くの作品にチャレンジしたいと。その証拠となるのが、今年彼が出演する映画である。既に「10人の泥棒たち」は公開されており、現在は映画「新しき世界」の撮影の最中である。またキム・ヘス、チョ・ジョンソクと共演する「観相師」への出演も決めた。今年だけで3つの映画に出演するのだ。


青春スターを乗り越え……チョン・ウソンとの共演もOK!

彼がより多くの作品をすると決めた背景には、役者として観客にもっと身近に感じてほしいという気持ちがあった。役者ならば誰でも観客の信頼を得るのが一番の目標であるだろう。イ・ジョンジェもスター性を越え、役者として大きな節目を迎えているように見えた。

「その通りです。確かに観客はイ・ジョンジェという俳優に求めるものがあるようです。その期待に応える作品に出演したときには多くの方々が観てくださるけど、そうでない場合は、あまり観てくださらないみたいです。すべてを完璧にできるわけではないから、はまり役が人気なのは当たり前のような気がします。

僕の場合、もっと多くの作品に出演すべきだと思います。それでいろんなキャラクターを演じる必要があります。そのうち『イ・ジョンジェはこういう俳優だ』と分かってもらえるようになると思います。今のところ、なんとも言えない部分があるのも事実ですし」

単刀直入に聞いてみた。ひょっとしてチョン・ウソンとともにバディ・ムービーに出演する意向はないかと。映画「太陽はない」を思い出したからである。

「チョン・ウソンさんも仕事をもっとしたいと言っています。でも色々と考えているみたいで。彼も少なくとも1年に1作品はやりたいと言っているけど、なかなかできないみたいです。

ポータルサイトに人気フォト検索ランキングというものがあるようです。それを見たら、『太陽はない』がトップ10内に入っています。不思議ですね。毎日変わるランキングで、映画も常に新作が出てくるのに、特別なことがなければ、見るたびにその映画がランクインしています。もう一度観たいという意味でしょうか?本当に真剣に考えてみましょうか(笑)」

彼のその言葉に激しく同意した。二人の再会はきっと観客にとって大きな喜びになるはずだから。そしてまた心から歓迎したい。彼がまた役者魂を燃やしていることを。だからこそ、これからの彼の作品に期待したい。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル