【PEOPLE】ソン・ヒョンジュを構成する5つのキーワード

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ソン・ヒョンジュ

「初心を失わずに、すべてのことを短期間で終わらせようとしないで、ただ前に進めば良い。死ぬとき、自分の演技が完成したと考える人は誰もいない。演技に完成という言葉はない。前に進んでるうちに良いこともあり、悪いこともあるから、死ぬまで勝負だ。短期間で何かを得ようとするのは泥棒と同じだ」

ソン・ヒョンジュ「マガジンT」とのインタビューより


クォン・ヘヒョ

ソン・ヒョンジュと劇団ミチュで一緒に活動した俳優。
当時彼は朝から晩までずっと勉強し、劇団の事務室で寝泊りするというつらい生活をしていたとき、長くはなかったが進路を悩んだときもあった。このとき、先輩が経営するホルモン屋で調理師としてあらゆるホルモン料理を作りながら、お金を稼ぐということがどんなに大変なことなのかを実感し、観客に入場料に値する感動を捧げることを決心する。ソン・ヒョンジュはこのホルモン屋で仕事をしていたとき、KBS14期のタレント部門の公開採用に合格し、本格的な演技者としての道を歩み出す。4才になってもなかなか話せない子供だったが、当時放送していたラジオの連続ドラマのタイトルを生まれて初めて口にした。中学生のときから演劇を始めた男が演技のテクニックと世の中での経験を積んだ時間。

イ・ビョンホン

ソン・ヒョンジュのKBS同期。
デビュー直後から各種ドラマの主役級俳優として大活躍し、以後韓流スターになった。その反面、自ら「(顔が)大きくて、良いところも特にない。電信柱にあたって鼻がゆがんだし、あごには崖から落ちて鉄芯を入れた」というソン・ヒョンジュはKBSドラマ「現金に手を出すな」の“医師”編で病院の廊下を通る医者のエキストラとしてドラマに出演した。演技者として簡単ではなかった出発。だが、彼は「劇団で民族公演を一度するときは、1人で10役を引き受けることが当たり前だったため、配役に対する意欲よりは短いシーンでも舞台に立って“俺の舞台だ”という想いがあってこそ演技をすることができた」と語った。

ファン・ウンジン

ソン・ヒョンジュが初めて大きな役を務めたKBSドラマ「兄」の演出者。
ソン・ヒョンジュが一生の恩人として大切にしている人物。本来は召し使い役として出演するシーンが短かったが、出演が終りに近づくにつれ、もっと演技がしたいとお酒を飲んで泣いたことが噂になった。その噂を聞いた「兄」のキム・ウンギョン脚本家が「そんなことで泣くな」と言い、たくさんのチャンスを与えたお陰で、ソン・ヒョンジュは演技者として安定することができた。本格的に顔が知られたのは、KBSドラマ「風は吹いても」だが、当時の演出者が「3日間~1週間は出れるかもしれないけど、それ以上は君次第だ」と話し出演させた。視聴者には見えない、配役一つが演技者にとってどんなに大切なものなのかを見せてくれた例。

ソン・チェファン

KBSドラマ「初恋」で共演した女優。
最高視聴率60%を越えた「初恋」の人気とともにドラマの中で無名の歌手チョンナムを演じたソン・ヒョンジュの人気も急上昇した。「チョンナムの初恋メドレー」「チョンナムのIMFメドレー」など2枚のアルバムを出すほどだった。特にこの作品で彼は知的障害を持った女性を愛する男を演じ、本格的なラブロマンスを披露した。彼のラブストーリーは主役俳優のようにドラマチックだったり、美しいストーリーではなかった。だが持っているものもなく、少し何か足りないような姿で日常生活の中で着実に感情を積み重ねたソン・ヒョンジュの姿は、主役俳優のラブストーリーに劣らない反響を引き出した。平凡な男の純愛が視聴者に受け入れられた瞬間、または、ソン・ヒョンジュ式の恋愛ドラマの開始だった。

チャン・ジン

映画「あきれた男たち」で初めて出会った監督。
ソン・ヒョンジュはチャン・ジンが自分と同じトラジタバコを吸っていることを知って好感を感じたという。チャン・ジンは軍服務中、トラジタバコがなくなるということを聞いて煙草専売局の局長に嘆願書を送ったこともある。ソン・ヒョンジュは「あきれた男たち」で絶えず何かに絡む小市民を演じた。そして「ガン&トークス」では暴力団の親分を演じたりもした。テレビではほとんど素朴な役だったり、馬鹿正直な姿を見せていたが、映画では神経質だったり悪人の演技も見せてくれた。エキストラとして演技をしていた俳優がある瞬間、テレビで馴染んだ俳優になって、その顔で見せてくれる演技も少しずつ多様なイメージを持つようになった。そして主役の時代がやってきた。

ユ・ホジョン

MBCドラマ「お向かいの女」で共演した女優。
結婚はユ・ホジョンと、恋愛は違う女とする不倫男の役を演じた。そんなにお金が多いわけでもなく、カッコいいわけでもない。いわゆる悪い男でもない男が若い女性と不倫関係になる設定は当時としては新しい設定だった。ソン・ヒョンジュ特有の庶民的な雰囲気がなかったとすれば、成立できないキャラクターだった。以後、KBS「バラ色の人生」、SBS「隣の敵」などで不倫男または、バツイチ男を演じたが、それにもかかわらず“不倫専門俳優”や“バツイチ専門俳優”のイメージが固定しなかったのは、不倫相手とチムジルバン(韓国式サウナ)でゆで卵を割って食べる姿が似合う日常生活が現れたからだ。また、彼は自分のせいで妻が専攻である声楽を諦めたことに対していつも申し訳なく思っていて、家では「水くれ」のような汚い言葉遣いは絶対にしない。そして家族のことを考えて家族を一切公開しない。

ムン・ヨンナム

KBSドラマ「風は吹いても」からSBSドラマ「糟糠の妻クラブ」まで、ソン・ヒョンジュと9つのドラマで一緒に仕事をした脚本家。
特に「バラ色の人生」は彼が「兄」「ソル薬局の息子たち」とともに最も記憶に残る3作として選んだドラマである。「バラ色の人生」で彼は不倫を犯し、その上妻に暴力を振い離婚を強要する。だが、妻が癌であることを知ってからは妻に献身的な愛を見せる。言い換えればつじつまが合わないキャラクターだが、彼は純粋ではないが素朴な感じで自身のキャラクターを演じそのキャラクターに現実味を与えた。「バラ色の人生」は“マクチャンドラマ”(非現実的で無理やり作った感じのドラマ)という批判も受けたが、彼の演技力はかえってこのようなドラマが奈落に落ちるnのを防いてくれた。“(演技者は)演技をしてお金を稼いで生活している人”と言いながら文字一つ間違えないように台本を完璧に把握するこの俳優は「何かが入っているかごを脚本家から渡されると、それを持ってどう調理して美味しくするのかだけを考える」という気持ちで演技をする。彼は余計な飾りなどない、最も現実的で天職に最も忠実な演技者である。

コ・ジュニ

MBC「キツネちゃん、何してるの?」とSBS「追跡者 THE CHASER」(以下「追跡者」)で共演した女優。
ソン・ヒョンジュはモデルを演じたコ・ジュニと付き合う事業家を演じた。自力で成功してお金持ちになったが、普段は下品で野暮ったく見える。だが、内面には人間味があった「キツネちゃん、何してるの?」のキャラクターはその当時、俳優としての彼の位置と似ている部分があった。KBS「うそ」では主演と助演として会ったユ・ホジョンと「お向かいの女」では相手役として会って、「バラ色の人生」ではチェ・ジンシルとともにミニシリーズ(毎週連続で二日間に2話ずつ放送されるドラマ)で主役となった彼は、それくらい明確な存在感を持った俳優として飛躍した。だが、彼は「一日4万ウォン(約2700円)もらって12時が超えると2万ウォン(約1400円)をさらにもらえたので、ただ待っていたときもあった。これよりどん底はない」と話した。そして彼は、連続ドラマのマンネリから抜け出し気持ちを整えるために絶えず短編ドラマに出演した。後輩たちに「自分で重心をちゃんととっていれば、せめて俺のように“日常生活を演じる平凡な俳優”にはなれる」と話しているが、実は彼は重心を失わず馬鹿正直に一本の道を歩んで一家を成した、ただ食べていくためのお金を稼ぐことだけでは満足できない俳優である。

エバンジェリ(Evangeli)

ソン・ヒョンジュが団長を務めている障害を持つ子供の合唱団。
カトリック教会の神父のホン・チャンジンの勧めで創立基金の用意をしたことから、エバンジェリの活動に携わっている。今では合唱団の子供たちは20歳近くになって、ソン・ヒョンジュはそんな彼らの未来を心配して“社会的に仕事をどう創出するかに対して”を悩み始めた。ボランティア活動により彼自身も成長しているわけだ。彼はボランティアについて「動けば目標ができ、前向きな思考をするようになる。そして生きていることに感謝する」と話しながら、演技もボランティアだと思っている。「視聴者たちがいるから私たちが存在して、いつも視聴者に面白味と感動を与える義務がある」ということ。俳優の自意識は置いておき、視聴者たちが共感できる演技をして、それに対してできる限り真面目に挑みながら、少しずつ深さを積み重ねていく。これぐらいなら“好機を待ちながら実力を練磨し、大きな頭に心が広い男性像”という自分の目標はほとんど達成したのかもしれない。

キム・サンジュン

ドラマ「追跡者」で共演している俳優。
ソン・ヒョンジュは娘の死の真相を調べるために権力に対抗する刑事として出演する。言い換えれば「追跡者」は彼の怒りと熱意のパワーで動き、だから彼にしかできない。しばらくの間娘の状態が好転したときは、妻のそばでおならをしながら笑うほど平凡な市民であると同時に、権力に退かず突進する男の演技は彼でなければ考えられない。「追跡者」は平凡な市民が手段を選ばず捜査の邪魔をする権力に対抗して、何とか這い上がって権力を奪い返す話だ。そんなソン・ヒョンジュは最も平凡にデビューして、平凡な役を演じながら最終的に非凡な俳優の座を占めたのだ。彼のように「不道徳に富や名誉を掴んだら、必ずそれに対する責任を負わなければならない」という話は誰にでもできる話しである。だが、その発言が本心であるということを見せてくれる人はそう多くない。彼は今、それができる俳優だ。私たちの身近にいる、近所のおじさんのような俳優である。その俳優がドラマ「追跡者」で私たちのヒーローになってくれるだろうか。

記者 : カン・ミョンソク、翻訳 : チェ・ユンジョン