「蜜の味」受賞失敗が“悲劇”?国際映画祭はオリンピックではない

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カンヌ国際映画祭 コンペティション部門に集中した韓国メディアの過度な関心、問題はないか?

「2サンス」カンヌ受賞失敗…韓国映画のカンヌ神話が破れた」
「“受賞失敗”イム・サンス監督、『もどかしい、私の悲劇は……。』」
「イム・サンスの白人攻撃発言、評論家の機嫌をそこねたか?」
「カンヌ受賞失敗した『蜜の味 テイスト オブ マネー』チーム、ハグで慰めた」


27日(フランス現地時間)行われた第65回、カンヌ国際映画祭の閉幕式でミヒャエル・ハネケ監督の「Amour」がパルム・ドールに輝いた。「白いリボン」に続く2回目のパルム・ドール受賞となった。

興味深い点は、韓国のメディアはパルム・ドール受賞作がどんな映画なのかと言うことよりも、イム・サンス監督の「蜜の味 テイスト オブ マネー」(以下「蜜の味 テイスト オブ マネー」)が受賞に失敗したことに関心があった点である。記事には「受賞失敗」はもとより、ひどい場合は、イム・サンス監督の閉幕式前のインタビューを言及し“悲劇”“異変”だという表現まで登場した。一緒にコンペティション部門に出品されたホン・サンス監督の「他の国で(IN ANOTHER COUNTRY)」に関しては「受賞失敗」という表現は相対的に少なかった。

それもそのはずだ。「蜜の味 テイスト オブ マネー」の配給会社は、映画祭が後半に差し掛かっている頃、映画担当数十人を連れてカンヌを訪れた。イム・サンス監督への異例とも言える受賞失敗のインタビューが出た背景である。普段から「受賞結果や『カンヌの男』という修飾語は何の意味もない」と強調していたホン・サンス監督とはあまりにも違う姿であった。

コンペティション部門への過度な関心

韓国映画のカンヌ国際映画祭コンペティション部門への出品は、2000年イム・グォンテク監督の「春香伝(チュンヒャンドョン)」が始まりだった。同時期、ホン・サンス監督の「秘花 ~スジョンの愛~」が“ある視点”部門に、イ・チャンドン監督の「ペパーミント・キャンディー」が“監督週間”に、チョン・ジウ監督の「ハッピーエンド」が“批評家週間”に出品され、韓国映画のルネサンスを開いた。

続いて、2002年「酔画仙」のイム・グォンテク監督が監督賞を受賞し、2004年韓国国内での興行にも成功したパク・チャヌク監督が「オールド・ボーイ」で審査員特別グランプリを受賞し、人々のカンヌへの関心も高まった。2007年イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」で女優賞を受賞したチョン・ドヨンが「カンヌの女」になり、2009年パク・チャヌク監督の「渇き」は審査員賞を、2010年イ・チャンドン監督の「ポエトリー アグネスの詩」は脚本賞を受賞した。

2000年代以降から本賞受賞の可能性が高くなり、大手企業の配給ネットワークを利用した作品がコンペティション部門に出品され、以前にはなかった現地発の記事が殺到している。カンヌ国際映画祭が一種のジャンケット(junket:映画会社がメディアに所属している映画記者や映画評論家を招いて映画の試写会を行い、俳優や監督をインタビューするイベント)やファムツアー(Familiarization Tour:事前実地踏査の旅行)の様相を見せることになったのはここ数年のことである。

コンペティション部門上映作に対する一種の尊敬の表現である、5~10分のスタンディングオベーションをめぐり「カンヌ国際映画祭スタンディングオベーションでの激賞」云々する記事が未だに登場する理由も同じである。映画祭全体の雰囲気を伝える“専門誌”らしいレポート記事が出なくなっている中で、コンペティション部門に出品した韓国映画に関心が集中するのは、ある意味で当然のことのように見える。「なぜ韓国記者は映画祭に行って映画を見ないのだろう」という不満も出ている始末である。

ただ、複数のメディアがカンヌに常駐しているだけに、批評家週間でカナルプリュス賞を受賞した「サークルライン(Circleline)」のシン・スウォン監督のインタビューや、監督週間に出品された「豚の王(The King of Pigs)」のヨン・サンホ監督のインタビュー記事が載ったのは幸いというべきだろうか。


「蜜の味 テイスト オブ マネー」受賞失敗、本当に悲劇だろうか?

「映画祭で受賞できなかったのは悲劇ではありません。そこは元々受賞できなかった人の方が受賞した人より多いんですよ。景色もよく、天気のいいカンヌに遊びに行って、自分の映画も上映して、有名な人と遊んで見栄を張ってみたらそれでいい。何が悲劇?」ある映画評論家は、イム・サンス監督の受賞失敗に関するインタビューでこのように苦言を言った。

受賞失敗は、もちろん監督本人や映画ファンに残念なことではある。しかし、観点を変えれば映画祭での受賞失敗に“悲劇”という表現まで登場するインタビューが出てくる雰囲気が果たして正常なものなのか、考えざるを得ない。国際映画祭での受賞有無に対する競馬場式の報道に「映画祭はオリンピックではない」という批判の声が出始めているのももう数年前のことである。

むしろ振り返るべきなのは、カンヌ映画祭に8回も出品され、3回目にコンペティション部門に出品されるなど、世界的な巨匠になっているホン・サンス監督に対する、国内の映画賞や人々の関心と待遇である。低予算で映画を撮っているホン・サンス監督の映画は、有名スターが出演しているにもかかわらず、国内映画賞で疎かにされている。

しかし、商業性に偏った基準に対して問題提起をするメディアはごくわずかである。「蜜の味 テイスト オブ マネー」への関心もこれを同じである。いつまで5月になれば、オリンピック中継に近い映画祭記事を見なければいけないのだろうか。また、そのような歪んだ関心は韓国映画の成長にどれくらい役に立つのだろうか。

記者 : ハ・ソンテ