「赤道の男」オム・テウンの失明の演技、新たな復讐劇を描き出す

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写真=PANエンターテインメント

「赤道の男」お互いの首を絞めている固い悲劇の紐

突然、父が謎の死を遂げた。そこに友人の裏切りで視力を失う、過酷な運命に翻弄される男がいる。金と権力ではなく、愛ひとつで傍にいてくれる女性と出会ったが、敵から恋人を守れない自分の無能さに苦しむ。すべてを諦め、落胆している瞬間「俺がお前の父だ!」と言いながら胸倉をつかむ正体不明の救世主が登場する。そして、救われた男は誰もが羨む最高の男になり、自分を苦しめた者たちへの復讐を始める。

ここまで聞くと、ある男の平凡な復讐物語に過ぎないように感じる。しかし、KBS 2TV水木ドラマ「赤道の男」がただの平凡な復讐劇に過ぎないという予想を覆し、新しい復讐劇の幕を開けたのは、他でもなく、突然視力を失ったソヌ(オム・テウン)の存在があったからだ。

何年間も植物人間の状態で病院にいたソヌは、起きるや否やジャンイル(イ・ジュニョク)が自分の頭を殴って崖の下に落としたことを、ハッキリと思い出す。しかし、一寸先も見えない状態ですぐに復讐できるはずがない。視力を失った彼にできる唯一のことは、記憶喪失を装って相手に近付くことだった。


「一人、また一人、運命という見えない紐で強く縛られているのかもしれない。私たち、もうその紐を放しましょう。お互いの首を絞めているでしょう?」

相手が見えないために動き続ける焦点の合わない瞳は、自分の目を奪ったジャンイルと向き合って話す時、自分の本音を隠す絶好のチャンスにもなる。しかしオム・テウンは、目を閉じたり、サングラスをかけたりせず、あえて自分の瞳を動かす難しい方法を選んだ。

失明の演技だけでなく、見えない目で虎視眈々と、自分を注視する敵と向き合わなければならない。それに、ジウォン(イ・ボヨン)との恋愛まで演じる難易度の高い役柄だ。しかし、このオム・テウンという俳優は、監督はもちろん、視聴者がソヌという役柄に期待していたことを120%満たしてくれる。オム・テウンは、ドラマ撮影の直前に、目の不自由な人のための福祉施設を訪ね、彼らの行動を詳しく観察したという。視聴者に、実際に目の不自由な人を見ているような印象を与えるのはそのためだ。

ところが、さらに驚くべきことは、瞳の焦点が合わず、相手の俳優と目を合わせないながらも、眼差しが鋭いときは確かに鋭いし、恋人のジウォンと切ないラブシーンを演じるときは、限りない切なさを漂わせるオム・テウンの繊細な感情の表現力だ。特に、焦点の合わない目でも、ソヌが置かれた状況によって刻々と変わる彼の表情と行動は「オム・テウンの演技はすばらしい!」というレベルを超え、視聴者に、無念にも失明したソヌその人物の存在のみに目を向けさせるようにする。

「赤道の男」での見どころはオム・テウンの演技だけではなく、他にもある。それは、従来のような対象をひとつとした復讐劇ではなく、複雑に絡んでいる人間の対立だ。

「赤道の男」OST(劇中歌)のタイトル曲であるイム・ジェボムの「運命の紐」の歌詞のように、チン・ノシク(キム・ヨンチョル)は、ムン・テジュ(チョン・ホビン)とソヌをにらみ、ソヌはチン・ノシクはもちろん、自分を殺そうとしたジャンイルへの復讐を誓う。それだけでなく、ジャンイルの父がソヌの養父を殺す場面を目撃したチェ・グァンチュンの娘(イム・ジョンウン)は、ジャンイルに執着する傾向が強い。また、不倶戴天の敵であるソヌとジャンイルは、同時にジウォンを愛する。このように、人物と人物を固く結ぶ“紐”がこのドラマで予想された悲劇をさらに一筋縄ではいかないものにする。

果たして彼らは、いつになれば、お互いの首を絞める固い紐を手放すのか。

記者 : クォン・ジンギョン