「武神」キム・ジュンの涙にもらい泣きする理由

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写真=MBC

童話のような純粋な愛は、悲劇に終わる

「和尚様、ウォラが戻りました。ウォラが戻りました」

4月8日の日曜日、MBCの時代劇「武神」でのキム・ジュン(キム・ジュヒョク)の悲痛な叫びに、視聴者は涙を禁じ得なかった。恋人のウォラ(ホン・アルム)の遺体を抱いて叫ぶキム・ジュンのセリフは、痛ましい愛を一人で受け止めるしかない男の、悲劇の叫びだった。

8日に放送された「武神」では、幸せを夢見ていた恋人同士、キム・ジュンとウォラの愛が悲劇的な結末を迎えた。ウォラはキム・ジュンとの結婚を前に、彼らを妬むチュンシム(キム・ハウン)とキョンガ(ペク・ウォンギル)の罠にはめられ、マンジョン(キム・ヒョク)に陵辱されてしまう。その屈辱に耐えられなかったウォラは劇薬を飲んで自ら命を絶つ。

キム・ジュンは訳もなく不安にかられ、ウォラを探し出すが、やっと出会ったウォラはすでに劇薬を飲んで死にかけていた。キム・ジュンは愛する人の死を見守りながら嗚咽した。「幸せだった」というウォラの短い言葉が彼らの痛ましい愛を物語った。

キム・ジュンは、ウォラの遺体を馬に乗せて師匠のいる興王寺に向かう。明け方になって到着した興王寺でキム・ジュンは叫ぶ。「和尚様、ウォラが戻りました」と。響き渡るその叫びは、時代劇「武神」を悲しみに浸すエレジーとなった。


残酷な運命、キム・ジュンの涙に視聴者も泣いた

キム・ジュンとウォラ、ドラマ「武神」で繰り広げられた彼らの愛は、童話のように純粋で美しいものであった。ニ人にとって互いの存在は“自身のすべて”だった。一夜にして奴隷の身分に転落し、運命の崖から突き落とされたキム・ジュンとウォラ。ニ人には子供の頃から一緒に育った、互いの存在だけが頼りであった。

撃球(馬に乗って棒で球を打つ競技)大会を機に一発逆転を図ろうと、キム・ジュンは命をかけてそれに参加する。彼の目標はただひとつ。撃球大会で最後まで生き残り、皇帝にひとつの願いを告げること。そのひとつの願いを叶えるために、キム・ジュンは身を投げ打って、全身に怪我を負っても耐え続けた。

死の危機を何度も乗り越えたキム・ジュンは、ついに目標だった撃球大会で、最後まで生き残ることとなる。しかし皇帝に告げたキム・ジュンの願いは、金や権力のようなものではなかった。自身の欲を満たすためのものではなく、ただウォラの平凡な幸せのためのものであった。


「ウォラという女の召使いを、興王寺の僧スボプに送ってほしい」

子供の時から一緒に育ったウォラの幸せを願うこと。それがキム・ジュンにできる愛のすべてだった。しかし、キム・ジュンの願いは叶わない。ウォラが興王寺へ行かないと決めたためであった。キム・ジュンがウォラの幸せを願うのと同じで、ウォラもキム・ジュンを残して一人で行くことは出来なかったのである。

結局、ウォラはキム・ジュンと一緒にいるために、キム・ジュンの願いを拒んで都房(武神が率いる私兵集団)に残る。そんな紆余曲折の中で、ニ人は互いの気持ちを確認する。たとえ、奴隷の身分であっても、何ひとつ他を羨むことはなかったはずのニ人であった。しかし、悲劇は彼らをあまりにも残酷に引き裂いた。

悲劇の始まりは他の者たちの“妬み”や“欲”からであった。幸せだった彼らを、見過ごすことができなかった者たちの謀略により、彼らは不幸のどん底に突き落とされてしまう。キム・ジュンとウォラの幸せは、無残にも、最も悲しい形で崩れてしまった。

希望の見えない奴隷という身分。もがいてあがいて“幸せ”への脱出口を見出そうとしていたキム・ジュンにとって、愛する人の不幸は、何よりも耐え難いものであった。恋人の冷たくなった体を抱いて嗚咽するキム・ジュンを見て、視聴者も彼が負わなければならない計り知れない悲しみを思わずにはいられなかったことだろう。

残酷な運命、キム・ジュンの涙に視聴者がもらい泣きするのも何ら不思議ではない。劇中の武神政権の最高権力者となるキム・ジュン。この深い傷をどうすれば癒せるのだろうか心配でならない。愛する人を失ったこの哀れな男から、しばらく目が離せそうにない。

記者 : クァク・ジンソン