ファンか、ストーカーか…韓国の「過激ファン」論争

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人気商売のスターにとって、ファンはなくてはならない存在だ。だが、スターに対するファンの気持ちが「愛情」を超え「執着」に変わると、ファンはスターにとって最も手ごわい「敵」ともなる。先ごろ浮上した男性グループJYJの「過激ファン」への暴行をめぐる波紋が、その代表的なケースだ。

ファンなのか、ストーカーなのか。私生活まで追いかけてくる過激ファンをめぐる論争を追った。


盗聴、尾行、無断侵入まで…まるで「柵のない監獄」

JYJが先日の記者会見で明らかにした過激なファンたちの行動は、度を越している。

JYJのジュンスは「(ファンらが)僕たちの身分証を盗用して通話履歴を流出させ、車に位置を追跡するGPS(全地球測位システム)をこっそり取り付け、追いかけてきた。頻繁に無断侵入して私物を撮影し、寝ている僕に近づきキスしようとしてきたこともある」と打ち明けた。

ユチョンも「デビュー以来、ありがたくも皆さんにたくさん愛されたが、一方では8年間ずっと過激なファンに苦しめられた」と吐露した。

過激なファンに苦しめられているのは、JYJだけではない。グループ・東方神起のチャンミン(マックス)も昨年、MBCのバラエティ番組で「いたずら電話がよく掛かってきたため電話番号を変えたところ、5分後に『番号を変えたんですね』と携帯電話にメールが来た」と明かし、出演者らをぎょっとさせた。

また、ガールズグループ・少女時代のテヨンは昨年の公演中、ステージに乱入した男性客に連れ去られそうになり、警備員にかろうじて助けられた。歌手のフィソンも、公開番組出演中に酔った客に襲われたことがある。

ある芸能事務所の関係者は「アイドルスターは程度の差こそあれ、誰もが一度は過激なファンに苦しめられた経験がある」と話している。


過激ファンを生んだ原因は

過激なファンが登場した原因として、専門家らは競争社会の中で目立ちたいという心理、プライバシー侵害に寛大な韓国の文化などを挙げている。

ソウル大学心理学科の郭錦珠(クァク・クムジュ)教授は、こうしたファンたちは「自分はスターとこんなに親しい」ということをアピールしたいがゆえに、次第に過激な行動に出ると分析している。また、スターの一挙手一投足がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を介してあっという間に広がり、ファンの間の競争心があおられ、一層極端な振る舞いに出るようだと説明した。

大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は、プライバシー侵害に比較的寛大な韓国特有の文化も問題だと指摘する。韓国では個人の私生活に関心を持つことが「親密感の表現」と受け止められることがあり、特に芸能人は有名人という理由でプライバシーを保護されないケースが多いと説明した。このほか、マスコミの加熱報道も過激なファンを生む一因だと苦言を呈している。


解決策は?

ファンの過激な行動を防ぐには、どうすればいいのだろうか。郭錦珠教授は「誰でも一方にだけ目を向ければ、客観性を失ってしまう。自分が楽しく、幸せなことにだけ目を向けるあまり、大好きなスターを苦しめているのではないか、客観的な判断基準を失っているのではないか、振り返ってみる必要がある」とアドバイスしている。

また、過激なファンの問題は個人の問題でもあるが、社会的問題でもあるとし、ファン層の中心となる青少年にさまざまな文化体験の機会を与えて文化的欲求を満たし、テレビが唯一のストレス解消ツールにならないようにすべきだと指摘した。

チョン・ドクヒョン氏は、プライバシーを保護するための法的・制度的な措置が必要だとし、有名人であっても最小限のプライバシーを保障される権利を持つということを明確にしてこそ、ファンの過激な行動を防げると助言した。

記者 : 聯合ニュース