【CLOSE UP】ヒョンビン ― ゼロは無限大
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いつでもゼロからスタートする俳優
ヒョンビンは予想しづらい俳優だ。それはただKBS「彼らが生きる世界」より前に撮影された「私は幸せです」が、MBC「チング~愛と友情の絆~」よりも遅く公開されたという理由だけではない。ヒョンビンはいつでもゼロから再びスタートする俳優だ。MBC「ノンストップ4」の優等生は、「アイルランド」では傷を持った人に献身的に尽くし、自身の存在価値を確認するカン・グクになった。また「私の名前はキム・サムスン」では世界中のロマンス小説の主人公の魅力をすべて込めたようなヒョン・ジノンに変身した。俳優が人生でただ一度、出会うことすら難しい強烈なキャラクターを二度も演じ、世界のすべての女性の愛を手に入れた時、彼はたったの24歳だった。だがこの華やかな容姿を持つ美少年は、スターという重さに踏み付けられることも、人気に浮かれることもなかった。 平凡な幸福を享受することができず、他人の名前で世の中を生きるKBS「雪の女王」のテウンを通じて、絶対的な孤独を抱き暮らす男の目つきが、どれくらい凄然なのかを見せたヒョンビンが、続けて「私は幸せです」を選択したことは、“自分を顧みなければならない時点”に立っているからだった。過去の経験を踏み台に登っていくよりも、一歩ずつ前に進むようなスタイルのヒョンビンは、「私は幸せです」で適度な休符を打つ。とある瞬間、とても俳優らしくなったり、スターらしさが出て日常の風景を不自然にしてしまう人とは違い、ヒョンビンは「私は幸せです」、続けてKBS「彼らが生きる世界」でも日常的な男性の生き方を見せている。だから、マンスがみすぼらしくてしわがよったジャンパーですらりとした体格を隠し、田舎のカラオケで背中を見せて涙を流す瞬間、人生の重さに耐えきれずに誇大妄想から現実逃避した彼が、焦点が定まらない目つきで秀麗な顔立ちを歪ませる時。また「彼らが生きる世界」のジオが些細なことで恋人にカンシャクを起こし、緑内障でふらつくたびに思うのは、ハンサムな俳優の変身に対する違和感というより、ただかわいそうだということだ。
予想し難い歩みの後に見つけたまた違う道
しかしそのような日常を生きたヒョンビンが、男らしい人生に向かって歩むということは、誰も予想できなかったことだろう。チャン・ドンゴンの影が色濃く残っていた映画「友へ チング」をリメイクした「チング~愛と友情の絆~」では、ドンゴンには勝てないゲームのように見えた。だが、皆の反対を振りきってドンスになることに固執した彼は、生まれつきの優しい目つきと穏やかな話し方を捨て、チャン・ドンゴンとはまた違った悲劇の主人公を作り出した。そして死ぬこともできない人生の苦痛(「私は幸せです」)、愛しても耐えがたい日常の重さ(「彼らが生きる世界」)、死ぬことによって終わるだるい運命(「チング~愛と友情の絆~」)の順に描き出し、ヒョンビンは同年代の俳優の中ではもちろん、今の韓国の俳優の中でも自身の領域を明確に広げていく存在として数えられるようになった。だから、故イ・マンヒ監督の最高傑作とされ、「家族の誕生」のキム・テヨン監督がリメイクした映画「レイトオータム」の主人公としてヒョンビンが選ばれたことは、彼が今まで歩んできた道の前にさらに広いまた違う道が開かれていることを意味するのかもしれない。「私は幸せです」の原作小説「チョ・マンドク氏」が、彼が生まれる前の80年に発表されたように、「レイトオータム」もやはり66年に初めて作られた作品だ。今のヒョンビンには、古典に似合うだけの深さと共に時間と共感を越え、独特な現実感が存在する。王子様も恋人の顔も未練なく捨て、また再びゼロから始めるこの俳優の次の歩みへの期待は、信頼できるものだ言える。
【ヒョンビン主演ドラマ「シークレット・ガーデン」情報】
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記者 : チェ・ジウン、編集:イ・ジヘ、翻訳:平川留里