【PEOPLE】スエを構成する5つのキーワード

10asia |


スエ

「演技をしてなかったら、私はつまらない人生を生きていたと思います。この仕事に確信があったわけではないけど、演技に対して1つずつ知っていくことが楽しくて頑張っていたらここまで来ました。これまで演技以外のことを考えたことがないです。だから、演技をしてなかったら、ずっと無意味に暮らしていたかもしれない」――スエのあるインタビューから。

頑張った。でも焦ってはいなかった。演技で人生の意味を見つけた。でも演技だけが人生のすべてではなかった。そして、彼女が30歳を過ぎて出会った決定的なある瞬間。


チョン・ユニ

スエが似ていることで有名な伝説の女優。
スエは子どもの頃から親戚にチョン・ユニに似ていると言われてきた。スエの顔は古風な印象があったためか、デビューしたての頃は純粋でか弱い女性の役を主に演じていた。しかし、実際のスエは学生時代に陸上部に入っていたほど運動が好きで、高校時代は自分の顔があまりにも優しく見えるという理由で眉毛を剃ったこともある。学校で発表することが苦手で、発表の授業は最初から後ろに立って罰を受けるほどの臆病な性格。かと思えば、高校卒業後は事務所にも所属しないで友達4人とアイドルデビューしようとした唐突なところもある彼女。
スエは歌手を目指している時にある事務所からスカウトされて女優としてデビューした。当時、スエは演技に対する自信などまったくなかったが、「ベスト劇場」(MBC)で涙を流す演技をする時、「ここにいるスタッフ皆が私のせいで時間を過ごしている」という状況を負担に感じてワンワン泣いて、その時から「あら~私が?できるんだ」と思ったそうだ。スエは差し迫った状況になればやる女優なのだ。


チョ・ヒョンジェ

「ラブレター」(MBC)に一緒に出演した俳優。
「ラブレター」の人気は非常に高く、放送からしばらくの間、チョ・ヒョンジェはドラマの中で使っていたクリスチャンネーム「アンドレア」と呼ばれ、スエは純粋でか弱いイメージを植えつけられた。神父の道を選んだ初恋の人、アンドレアを忘れられず、不治の病までかかってしまったスエのキャラクターは2000年代からドラマで徐々に見なくなっていた悲恋の女主人公を復活させた。
スエはその後「メリーゴーランド」(MBC)でも不運な人生を生きる女性を演じ続け、“涙の女王”というニックネームまでできた。可憐なキャラクターを主に演じたスエは1980年代のチョン・ユニが演じたキャラクターに似た演技をチョン・ユニに似た顔で見せてくれた。「メリーゴーランド」が終わってしばらくすると、ネットユーザーにとても美味しそうにフライドチキンにかぶりつく写真を見つけられ“フライドチキン・スエ”と呼ばれたり、「学校2」(KBS)にちょい役で不良女子高生を演じたりと、「ATHENA-アテナ-」(SBS)でニーキックをする彼女の姿はこの時から既に準備できていたのかもしれない。


チュ・ヒョン

映画「ファミリー」でスエの父親役の俳優。
スエは「ファミリー」で父親に愛憎を抱くスリを演じ、これまでとは違う雰囲気の演技で、青龍映画祭の新人女優賞を受賞した。さらに「ウェディングキャンペーン」で演じたキム・ララは結婚の相手を探すためにウズベキスタンに行く農村の独身男性たちの通訳で、これまでの純粋でか弱い姿でなく、より軽い感じの日常的な雰囲気を見せた。
しかし、「ウェディングキャンペーン」での彼女はおめでたい田舎の男性たちの中で1人だけ輝く魅力的な女性を、「海神」(KBS)では男性主人公たちにとって救いの女神のような存在であるが悲しい恋をしている女性主人公を演じるなど、それほど大きくイメージを変えることはなかった。
「9回裏2アウト」から30代女性の日常を自然に演じるようになったが、作品自体にあまり人気がなく、スエのイメージもそれほど変わらなかった。そのため、女優スエの演技は安定的で、彼女独自のイメージも持っていたが、作品の中でイメージチェンジをしたり、個性を見せたりする瞬間を作ることは容易ではなかった。既に十分うまく演じているのに、もう少しうまくできそうな気がする俳優のジレンマだ。


イ・ジュニク

「あなたは遠いところに」の監督。
スエはこの作品を通して「以前のスエが思い出せないくらい」に変わって、「人生の中で最も面白かった経験」と言うほど演技が好きになった。イ・ジュニクは「君が座って役の感情に入ろうとしている時、150人以上のスタッフの中で座ってる人が1人でもいるかよく見て」と、スエにスタッフと一緒に映画を撮る意味について語った。また、「台本を読まずに現場に来て」と言ったりお酒を飲んで歌を歌わせたりしながら、スエが演技に対して新しく目覚めるように手伝った。
イ・ジュニクはスエが演じた役を「すべての男を救う女」と説明し、「現実にそんな女性がいるはずと信じること自体が希望」と言った。また、スエの女優として魅力を、女らしくて、母性愛を持っているように見えるところだと話した。「あなたは遠いところに」でも彼女は不運な運命を持つ男性たちを救う女性の役だった。だけど、イ・ジュニク監督は「あなたは遠いところに」で「最初から最後まで感情を変えずに維持」できるスエを主人公にして、踊ったこともない1人の女性がベトナムまで行って軍人の前で歌うようになるまでの変化をも描き、男性たちを救う存在だと思われた1人の女性の内面的な変化も見せることができた。
映画の中でスエのイメージは変わらなかったが、そのイメージを築いていく方法がこの映画をきっかけに変わり始めた。「あなたは遠いところに」の撮影が終わった後、スエは1人で海外旅行に出た。


ドレスエ

スエのあだ名。映画祭のレッドカーペットなど、様々なイベントで毎回、彼女ならではのファッションセンスが注目されてできた。でもスエは「衣装に関するすべてのことはスタイリストに任すタイプ」と話して、「なぜ私は毎回違う雰囲気の衣装を着ているのに、ただ『優雅だ』みたいな同じ感想しか言ってくれないのかな」という悩みを明かした。“ドレスエ”や“リトル・チョン・ユニ”などのニックネームからも分かるように、スエが持つ優雅で古風なイメージで、彼女は何をやってもスター性を維持できたが、様々な役を演じるには邪魔になることもあった。すでに「ファミリー」や「あなたは遠いところに」でこれまでと違うイメージを見せているのに、「ATHENA-アテナ-」でアクションを見せると、世間ではものすごいチャレンジとして改めて思われた。さらに「ATHENA-アテナ-」でもスエのキャラクターは、アクションの部分を除けば、運命的な恋に落ちる女性主人公でこれまでとあまり変わらなかった。そして、スエは「千日の約束」(SBS)を選ぶ。


キム・スヒョン

「千日の約束」の脚本家。
スエをアルツハイマーにかかった女性に変身させた。前作までのスエは、男性脚本家の目線で描かれた、すべての苦労に耐える女性を演じていた。しかし、「千日の約束」でスエは、誰にも頼らずに人生を強く生きると同時に、キャラクターの傷ついた内面をそのまま見せてくれる。アルツハイマーにかかった事実を知った後、絶えず単語を口に出して思い出そうとする彼女の姿は、彼女がこれまで演じたどの作品よりも切実であった。また、そんな状況でも生活のために仕事をする姿は、女神のようだった女優を日常のど真ん中にいる普通の女性に変身させた。周りにいる男性たちも彼女から救いを求める代わりに、彼女を裏切ったり哀れんだりした。
「千日の約束」ではスエが前作までに見せてきた強い内面をさらに生かし、非現実に思えるほど全てのことを落ち着いた姿で黙々と受け入れる姿はなくした。

デビュー当時には「ある程度の家賃だけ貯めればやめる」と考え、自分自身を「運命通りに生きる人」だと信じて、「与えられた条件の下では最善を尽くすけど、目標のためにみっともなくしがみついたりはしない」と言っていた女優。だからなのか、いつもそれなりに良い結果を得ているが、最高の瞬間にはまだ出会っていない。そんなスエが「千日の約束」でようやく本気でぶつからなければならない対象に出会ったのかもしれない。

記者 : カン・ミョンソク