ソン・ヒョンジュが考える「ありふれた悪事」とは?

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写真=OPUS PICTURES
“スリラー専門俳優”と呼ばれたソン・ヒョンジュが、今回は濃厚な味噌汁のような味わいを醸して帰ってきた。映画「ありふれた悪事」は観客に熱い感動と、現在の情勢を考えさせる作品だ。

ソン・ヒョンジュは最近、ソウル市三清洞(サムチョンドン) のとあるカフェにて記者に会い、映画「ありふれた悪事」(監督:キム・ボンハン、配給:OPUS PICTURES) に対するトークを交わした。多くの俳優が映画を撮影するときは、仕事の一環としてインタビューを含んだPRを進めるが、ソン・ヒョンジュは形式ではなく真心を尽くして記者に会う俳優のうちの一人だ。

記者を見るや否やソン・ヒョンジュは「この頃映画のスケジュールで本当にお忙しいのに、こうやって私たちの映画まであって大変でしょう?」と言って、心から心配をした。映画の話をしようとしたが、続けて3月に公開された映画をしばらく羅列し、「ありふれた悪事」に対して予定された時間を押されながらもたくさん話した。

ソン・ヒョンジュは先立って、ドラマ「追跡者 THE CHASER」(2012) 以後、映画「かくれんぼ」(2013)、「悪の年代記」(2015)、「THE PHONE(ザ・フォン)」(2015) などのスリラージャンルで熱演を繰り広げて“スリラー専門俳優”と呼ばれた。これに対して昨年ソン・ヒョンジュは「これから当分スリラーをしない」と、記者の前で冗談混ざった宣言をすると明らかにしたが、「ありふれた悪事」では数年間のスリラー専門イメージを確実に払拭し、1987年時代を生きていくその時代の父親であり、刑事役に扮した。

「服で言うと、以前に私が着ていたような服をまた着た感じで気楽です。ランニングシャツのようなのが本当に自然でしょう。トレーニング服やランニングシャツをたくさん着ましたが、本当にどれだけ楽だったことか(笑) スリラーはスリラーという長所があって、ヒューマンはヒューマンという長所があるようです」

「ありふれた悪事」の企画初期のタイトルは「工作 黒金星と呼ばれた男」だった。だが、シナリオが1970年代の世相から、さまざまな会議を経て1987年に決定し、タイトルもまた「ありふれた悪事」に変わることになった。タイトルが変わるとすぐに、映画のトーンも少しは変わったが、家族の雰囲気がより一層濃くなった。劇中、ソンジン(ソン・ヒョンジュ) の妻役にラ・ミランが扮して、夫婦として呼吸を合わせた。

「今回も家族が出てきます。少し悲しい家族が出てくるのが違う点でしょう。妻は体が不自由で、息子も足が不自由で、極限の状況で生きているようでした。スリラーではありませんが家族を守ろうとする家長ですから」

ソン・ヒョンジュに「ありふれた悪事」の定義を尋ねた。果たしてどんな人が普通の人であろうか。「ありふれた悪事」に登場するさまざまなキャラクターは私でも、私の周辺にいる人でもある。映画は観客に「それで君は普通の人か?」と尋ねる。

「平凡になるのが非常に難しいようです。平凡ではないので、平凡さを追い求めます。あの時代の平凡さと言えば中流家庭ですが、最近はその言葉が多くなくなって残念です。中流家庭が多い社会が望ましい社会なのに。普通の人なら平凡な人なのに、平凡に生きるのが大変です。そういうこともあって、中流家庭だと話す人もあまりいません。普通の人というのは本当に難しい言葉のようです。それでも映画『ありふれた悪事』は、絶対に難しい映画ではありません(笑) この映画のように繰り広げられている映画は他にないと思います。観客の方が面白く見てくださると嬉しいです」

記者 : シン・ソウォン