「対決」シン・ドンヨプ監督、華麗なる復活を夢見る“韓国映画界の不死鳥”

10asia |

酔拳を扱う映画を作ると言った時、全員に反対され、正気かと言われた。だが、シン・ドンヨプ監督は最後までねばって推し進め、映画「対決」を誕生させた。ヒットに恵まれない中でも7本目の作品を世に出したシン・ドンヨプ監督は、“忠武路(チュンムロ:韓国映画界)の不死鳥”と呼ばれてもおかしくない。彼は再び復活を夢見る。

―完成した映画を見た感想はどうか?

シン・ドンヨプ:満足している。これまでは自分の映画なのに物足りなさが少しずつあったが、今回の映画は僕も観客の立場で楽しんで見ることができる映画のようだ。

―酔拳を映画の題材として選択した理由は何か?

シン・ドンヨプ:小さい頃からジャッキー・チェンと酔拳が好きだった。そして漠然と、いつか酔拳を扱った映画を作らなきゃという想像をしていた。実際に作ってみようという考えることは一度もなかったが、幾度も失敗を体験してからは、果敢に挑戦することができた。

―酔拳を題材にした映画を作ると言った時、周りにたくさん止められたにもかかわらず、最後まで推し進めるほど確信があったか?

シン・ドンヨプ:それまではこういう映画を準備するというと「一度やってごらん。良さそうだね」と皆このような反応だった。だが、そうやって全員が賛成した時は結果が良くなかった。それで今回は他の人が反対しようが賛成しようが、僕がしたいことをやってみようと決心した。そして反対が多かったので、更に確信が生まれた。反対されるほど、もっとやりたくなるように(笑) 賛成する人が多かったらやらなかったかもしれない。全員が良いねと言えば、不安だったかもしれない。

―主演俳優にイ・ジュスンをキャスティングした。普段から注目していた俳優か?

シン・ドンヨプ:映画「ソーシャルフォビア」を見て注目するようになった。ジュスンを主人公として使うのも冒険だった。だがジュスンはテコンドー4段で、最小限の武術ができ、若い頃の姿がジャッキー・チェンとも似ていていたので、果敢に“僕たちの映画にぴったりだ”と推し進めることができた。

―悪役にオ・ジホをキャスティングした理由は?

シン・ドンヨプ:オ・ジホさんのキャスティングもまた周りから止められた。これまで見せていた優しくて善良なイメージのせいで。だが実際に見てみると体格もものすごくて、筋肉が与える感覚は他の俳優にも劣らなかった。そしてコミカルなイメージもあるが、「チュノ」や「幽霊を見る刑事チョヨン」を見れば、アクション俳優としても十分にキャリアがあった。だから悪役をすれば新鮮かもしれないと思った。

―映画には酔拳の他にも“現実PK”(Player Killer、ゲーム内でプレーヤーを攻撃するように、現実でそれを行うこと)が登場する。現実PKというテーマはどどういう経緯で選択したのか?

シン・ドンヨプ:現実PKの内容は後で加えた。以前のシナリオにはなかった。酔拳という題材が若干現実的でないため、酔拳を現実の世界に引き込む必要があって考えた。それで一般の人々が酔拳ができる背景には何があるかを考え、現実PKを思いついた。現実PKの世界観を持ってきたら、映画が現実的に見えるのではないかと思ったのだ。

―ジャッキー・チェンの映画「酔拳」をたくさん参考にしたか?

シン・ドンヨプ:ジャッキー・チェンの「酔拳」は森で決闘を行ったので、持ってこれるものが殆どなかった。酔拳のほかは参考にすることがなく、その映画の魂と情緒を参考にした。映画「酔拳」を見れば武術のシーンが驚異的だ。だから僕があれを見た時に感じたことを観客に伝えたいと考えた。

―イ・ジュスンが「友達のような監督」と表現していた。現場で俳優と気楽に接するようだが?

シン・ドンヨプ:現場では俳優を信じて任せるほうだ。だから俳優にはひどく負担になったりもする。監督が要求しないから。だがそうして置くと自ら作っていくことになる。

―映画の中のコミカルな場面が印象的だった。すべて計算して入れた場面か?

シン・ドンヨプ:すでに7本目の作品だが、コメディ映画は本当に難しい。そして以前の作品がヒットに成功していたならば、どこで笑わせるかとそんな計算もできたはずだが、今回の作品ではそれは考えないようにした。無理に笑わせようとしないで、気楽に演出した。なのにそれがウケるとは本当に想像もしなかった(笑) だからこのような反応はかえって新鮮だ。

―ヒットに対する負担を多く感じるか?

シン・ドンヨプ:商業映画監督には常にヒットに対する負担がついてくる。ないと言ってもそれは嘘だ。商業映画の監督は絶対的に観客数で語る。

―マスコミ試写会後の映画評がとても良い。レビューの記事はたくさん見たか?

シン・ドンヨプ:記者の方々が結構良い風に書こうとしているのもあって、今回は良かったんだなと思った。初めは記事を1、2本読んで、期待以上に反応が良くて、どんどん読むようになった。ある瞬間「僕は今、夢見ているのか」と思ったりもした。映画を6本撮ってから、このような正式なインタビューは初めてだ。ドラマの主人公になったような感じだ(笑)

―映画「対決」をどんな人々にお勧めしたいか?

シン・ドンヨプ:僕のような時代を悩んだ40代、50代には、映画を見ながら自分の変化の激しい時代を思い出して、もう一度情熱を感じてほしい。そして10代、20代は酔拳に対する思い出はないので、酔拳が与える妙な面白みを感じてほしい。最後にこの映画が観客の慰めになると嬉しい。

記者 : イ・ウンジン、写真 : ソ・イェジン、翻訳 : 前田康代