イ・シヨン「ボクシングは私の運命で縁だった」

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エレガントなドレスにボクシンググローブを着けても美しくいられる女優がどれほどいるだろうか。“女優初のボクサー”の肩書きを持つイ・シヨンに会い、ボクシングと運命について尋ねた。奥深い質問にも淀みなく心を込めて答えを出したイ・シヨン。彼女は自身の挑戦についてこのように話した。「ボクシングですか? 私の人生のターニングポイントです。私が持っているすべてのことに感謝することになりました」そして付け加えた。「運命は雄大で大きなものではありません。その瞬間に最善を尽くせば、あなたも運命を変えることができます」

―ドレスにグローブなんて。妙な組み合わせのグラビア撮影でした。

イ・シヨン:すごく良かったです。実はグローブを着けたグラビアは、少し避けている方だったんですが、今日は本当に良かった。今までに撮ったこのようなコンセプトのグラビアの中で一番気に入っているほどです。グローブが入ると、いつも強くて怖い雰囲気だったのですが、今日は何と言うか、女性性のある状態でグローブまで着けて、キレイに表現できたみたいで気に入っています。

―ボクシングの話は欠かせません。

イ・シヨン:どうぞ、気楽に話しても大丈夫ですよ(笑)

―ボクシングを始めたきっかけと、正式に選手になることにしたきっかけは何ですか?

イ・シヨン:実は生涯スポーツというものをしたことがなかったんですが、新人の時にドラマの役作りのためにスポーツを始めました。実は強制的に始めさせられたのです。でも、私もこんなに長く続くとは思いませんでした。不思議です。

―それ以前はスポーツに対する関心もなかったんですか?

イ・シヨン:全くありませんでした。あのドラマがなければ、たぶん一生することはなかったと思います。ダイエットも食事管理だけでしていましたから。私の人生初めてのスポーツがボクシングです。学びながら徐々に好きになって、おかげで今は他のスポーツにも興味を持つようになりました。

―最初は大変だったでしょうね。

イ・シヨン:本当に大変でした。しかも、他のスポーツは全然やったことがないので、スポーツは全部これくらい大変なんだと思っていました。運動経験がなかったので、比較の対象がありませんでした。ただスポーツってこんなものなんだと思っていました。

―筋肉も全然なかったでしょうね。

イ・シヨン:もしダイエットを目的で始めたのなら、1ヶ月も持たなかったと思います(笑) ボクシング選手役である上、姿勢もちゃんとしなければならないと言われて、根気強く通いました。4~5ヶ月ほど経ったらボクシングが好きになりました。これは裏話なんですが、そのドラマは撮影できませんでした(笑) 白紙になったのです。監督がジムまで来てくれました。撮影できなくなって本当に申し訳ないと。私に教えてくれたコーチの二人とお酒を飲みながら、すごく謝りました(笑)

―それは恨めしかったでしょう。

イ・シヨン:でも不思議なことに、全然残念だと思いませでした。頭だけで考えると、すごく残念そうじゃないですか。でも、自分でも不思議なくらい、全然残念だとは思いませんでした。ボクシングするのが辛かったらたぶん怒ったと思いますが、既にボクシングが好きになってから言われたので、大丈夫だったんだと思います。

―それでも監督としては言いにくかったと思いますが。

イ・シヨン:そうなんです。本当に申し訳なさそうな顔でジムに来ました(笑) 最初に始めた時、監督からシューズも買ってもらいました。頑張れという意味で買ってくれたのでしょう。でも、本当の私はどうとも思わなかったので、翌日も行きました。

―女優がボクシングをするには、リスクが多かったのではないでしょうか。

イ・シヨン:怪我しやすいスポーツであることは知っていましたが、あまり気にしませんでした。もしボクシングが大変じゃなかったら、こんなに長くは続けられなかったと思います。むしろ大変過ぎて根性ができたというか。人に言われる言葉の中で面白かったのが、女優だからさすがに顔は殴らないんじゃないかということでした。でも本当に顔だけ殴られます。本当です。ボクシングというスポーツが顔を殴るスポーツなので当然のことです。経験のある方なら分かります。リングの上では、相手が誰であれ、手加減したりはしません。そんな余裕もありませんし。

―周りの視線や負傷など、大変だった瞬間に諦めたい気持ちはどうやって克服しましたか?

イ・シヨン:実はそのような視線を認識する余裕もありませんでした。スポーツしながらあれこれ全部考えていると、そのスポーツはできなかったと思います。当時は1日3回トレーニングをしましたが、それだけでもとても大変で、テレビを観る時間や寝る時間もないほど、1日を過ごしました。1日3回なのに、私だけ楽に適当にやることはできないじゃないですか。見ている視線も多いし、他の選手たちの士気も下がると思いますし。自分でもそういうのが嫌だったので、同じようにやりました。だから他人の視線は念頭にありません。一生懸命に頑張ったから。そんな覚悟がなかったら、最初から実業団にも入らなかったと思います。

―SNSを見たら、痣ができた顔に胸が痛みました。

イ・シヨン:あの時は仁川(インチョン)所属でやっていた頃でした。女性はトレーニングする時に主に男性とします。実は試合の時はあまり怪我することはありません。アマチュア試合はヘッドギアをかぶるので、私もまだ大きな怪我をしたことはありません。でも練習する時は負傷する確率が高くなります。男性たちとスパーリングしていると、よくあることですから。

―ボクシングをした経験が運命を変えるほど大きなきっかけになったと思います。これからの女優としてのキャリアとご本人にとって、どんな意味を持つでしょうか?

イ・シヨン:結論的にボクシングが私には人生のターニングポイントになりました。心配していた部分もありましたが、幸い温かい目で見ていただく方も多くて感謝しています。自分でも始めて大きく変わったと思います。仕事をする時もいろんな部分であらゆることに真面目になったというか。同僚の選手たちもとても勉強になります。そして頑張った分だけ結果があるじゃないですか。そういうものに対して深く考えてみて、自分が持っているものに対して感謝しました。

―本当にスポーツをしてみたら、努力は結果を裏切ることはないですか?

イ・シヨン:だからもっと好きになったんだと思います。実は運も良かったと思います。しかし、運動は私たちが経験するどんなことより絶対的な努力がはるかに大きく影響します。だから私ももっと好きになったんです。

―いわゆるチェンジ・デスティニーのストーリーをもとにした映像が公開される予定だと聞きました。映像の撮影中のエピソードは?

イ・シヨン:スタッフが全員外国の方でした。言葉が通じなくて少しもどかしく思いました。私は英語ができないので、スタッフの方にも全然声をかけてもらえず、私も一言も言わずに徹夜で撮影しました。マネージャーと私2人でいたんですけど、2人とも英語ができなくて無言でいました(笑) だから最近英語の勉強をしています。学ばなきゃと思いました。これも一つの挑戦になりましたね。チェンジ・デスティニーの撮影のおかげで(笑)

―これから挑戦したい新しい目標はありますか?

イ・シヨン:今、具体的な目標はありません。ボクシングをしたから、他のことをやってみよう、などという大げさな考えよりは、思ってもいなかったことに対する期待感があります。ボクシングも全然予告なしに出会ったスポーツです。その瞬間に最善を尽くして、悔いが残らないほど努力しました。今は他にどんなことをしようかと考えるよりは、私がボクシングに注ぎ込んだ情熱ほど、演技に情熱を燃やそうと考えています。人々から「もうボクシングはしないよね?」とたまに聞かれます。負傷もますます酷くなっていますし、また若いほうではないので、演技と運動の両方を並行するのが大変です。でも、今も運動は着実にやっています。ただ、試合に出ないだけです。選手生活していた時ほどではありませんが、今もスポーツは頑張ってやっています。スポーツに注ぎ込んでいた情熱をこれからは演技に注ぎ込もうという心構えが違うだけです。

―最後にイ・シヨンさんのように新しい挑戦のために自身の運命を変えていく人々に、応援のメッセージをお願いします。

イ・シヨン:周りの人々からボクシングは私にとって運命だったとよく言われます。今は私のその言葉に同意しますが、以前は全然知りませんでした。それは知るはずがないですね。ドラマの役のため偶然出会ったスポーツであって、ただ好きでやり続けただけです。初めて接した瞬間、ジムに入った瞬間、「ああ、これが運命なんだなあ」と感じるのは難しいことじゃないですか。でも過ぎてみたらボクシングは私の運命で縁でした。運命はものすごく大きいものではありません。その言葉はなんだか雄大ですごいもののように見えるじゃないですか。だから自分の人生には訪れてこないもので、人の話だと思っていたんですけど……。経験してみたら違いました。「ああ、これ面白い。もっとやりたい」という思い。そういうふうに思って、また着実にやっているうちに、それが新たな自身の運命になります。難しいと考えずに、努力していけば、いつの間にか与えられた運命も十分に変えられると言ってあげたいと思います。



進行:キム・ドゥリ、インタビュー:キム・ドゥリ、スタイリング:イ・ジオン、フォトグラファー:チェ・ムンヒョク、ヘア:スヨン(パク・スンチョルヘアスタジオ)、メイク:パン・ソナ(キム・チョンギョンヘアフェース)

記者 : キム・ドゥリ