「Love Letter」「花とアリス」岩井俊二監督、訪韓インタビュー“ときめく瞬間、大人になるにつれて減ってくる”

OhmyStar |

「Love Letter」「花とアリス」など、叙情的な作品で韓国でもよく知られている岩井俊二監督が韓国を訪問した。2月26日開幕の「第4回 marie claireフィルム&ミュージックフェスティバル」で行われた自身の特別展に出席し、新作アニメ「花とアリス殺人事件」の紹介などをするためだ。

岩井俊二監督は2月27日、ソウル中(チュン)区の某ホテルで開かれた記者会見でこれまでの作業過程や自身の映画の世界についての率直な考えを聞かせてくれた。特に2011年に起きた福島原発事故で変わった自身の価値観についても言及した。

現場で記者たちは彼の新作と特別展で紹介される作品に関心を示した。今年で「Love Letter」誕生20周年となるだけに、その感想を聞く質問もあった。

岩井俊二監督は「『四月物語』を持って釜山(プサン)映画祭に来たのが初めての韓国訪問だったが、『Love Letter』を愛してくださっていることはすでに知っていた。この時期にmarie claire映画祭で特別展を開催することになり、幸せだ。韓国でこのような経験をする日本人はおそらくいないだろう」と答えた。特別展では彼の代表作のうち「ヴァンパイア」(2011)と「花とアリス」(2004)、「リリイ・シュシュのすべて」(2001)の3本が紹介された。

以下は岩井俊二監督との一問一答である。

―「花とアリス殺人事件」は初の長編アニメーション演出作だ。作品について紹介してほしい。

岩井俊二:少し前、アニメーション界の巨匠、高畑勲監督からもお褒めの言葉を頂いた。新海誠監督など、日本のアニメーション監督たちが僕の初のアニメ作品について良い言葉をくださっている。この作品は花とアリスの出会いと冒険を描く。ある種のプリクエルだ。実写で作るには(「花とアリス」に出演した)蒼井優もそうだし、時間が経っているので無理だった。アニメで作れば彼女たちの声を入れることもできるし、以前からアニメを作ってみたいと思っていた。

―先日、韓国のテレビで「Love Letter」が放送された。韓国では恋愛ジャンルに特化した監督として知られている。

岩井俊二:映画を作るたびにいつも考えることがある。僕が見つめる一番多彩な瞬間を探すことだ。華やかなものではなく、些細なものだ。ただ路地を眺めているだけでも胸に迫る瞬間を映画で作るということだ。幼い頃からそんなときめく瞬間を探してきたが、大人になっていくにつれて、それがなくなっていく。『Love Letter』のような愛の物語は若者のための映画で、『ヴァンパイア』のような作品は大人を対象にしたものだと思われがちだが、いずれも同じ眼鏡をかけて作った。子供たちの言語が出てくるか、大人の言語が出てくるかという差があるだけだ。これまでに見たことのない新しいものを見つめようとしているところは同じだ。

―「花とアリス」から「ヴァンパイア」まで、7年のブランクがある。もちろん、その間に脚本も書き、監督の名前を冠した映画祭も作るなど、様々な活動をしていたが、そのブランクはどのような意味で作用したのか。

岩井俊二:脚本を書けば、だいたい三本中一本くらいが映画化できる。前からそうだった。時間が多少かかる方だ。7年の間、テレビドラマも作った。ドラマは書きながら撮ることもできるが、映画は制作費の問題もあるので少し難しい。映画が途中で駄目になったこともある。人々は僕が寡作だと感じるだろうが、毎日執筆する生活をしている。

「岩井俊二映画祭」のウェブサイトは僕の息抜きのためにしているものだ。相変らず僕は僕の時間の8割を映画構想に使っている。幸いなことに最近は新作を準備している。撮影に入ることになりそうでほっとしている。僕も作品が駄目になったり、できなくなる場合がたくさんある。僕が自分で書いた作品をやろうとするためだと思う。「宇宙戦艦ヤマト」というシナリオを書いたことがあるが、人々が期待した部分が出なくて制作中止に終わったこともある。


「技術の発展と共に地球も生きられる方向にいかなくてはならない」

―今、日本は全ての制作者と投資家が少女漫画のようなラブストーリーを望んでいると聞いた。岩井監督は知名度もあるので、望めば中国など外国の資本で作品を思う存分作ることもできるだろう。

岩井俊二:ひとまず今、日本ではラブストーリーも投資を受けるのは難しい。テレビドラマはアメリカの影響を受けた刑事物がたくさん作られている。僕は場所を問わず、たった5分だけの作品でも作りたい。色々な作業を色々なところでやりたい。海外からオファーがあるというよりは、僕の友人たちが一緒に映画を作ろうと提案してくれる。

―2011年に発表された「friends after 3.11」というドキュメンタリーは原子力発電所の話だった。先日、韓国でも老朽原発の再稼働が問題になった。このような作品は岩井監督が環境や原発問題について関心を持ち続けていることを証明するものか?

岩井俊二:この世の中をどんな目でどのように見るかの問題だ。僕にもそれなりに原発への考えがある。賛否両論が存在し、人々の姿を観察しながら気付くことがある。結論的に何が正しくて、何が間違っているかというのはない。原発をたくさん反対したとしても、なくなることはないと思う。ただ、技術はずっと発展するはずだから、環境を害することなく安全を守る方向に行かなければならないと思う。

全ての技術を捨て、過去に戻ることは不可能だろう。コンピュータができて産業も大きく変わった。地球のためにはもちろん人間がいなくなるのが一番良いだろう。だが、僕たちは人間だから共存しなければならない。発展こそ利益だという考えを捨て、より環境に優しい科学を追求しなければならない。しかし、こうした話を先にするのは僕の表現の仕方ではない。作品で見せる。

―愛された作品がまた韓国で紹介される。

岩井俊二:久しぶりに以前の映画を上映してもらえて嬉しく思う。この作品を見ていない若い方々をはじめ、様々な人に見て頂きたい。5月に「花とアリス殺人事件」が韓国で公開されるが、機会があればその時にまた韓国に来たい。「花とアリス」を見ていない方にも十分楽しんで頂ける作品だ。

記者 : イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン