「怪しい彼女」は本来はこうだった…ファン・ドンヒョク監督が語る映画の裏話

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※この記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。

「社会的な話ばかり?これからは面白い作品を撮りたい」

おばあさんが偶然20代の姿に戻り、自分の夢を叶えていくというファンタジーが観客の共感を得た。映画「怪しい彼女」のことだ。累計観客動員数700万人を超え、根強い人気を集めている映画を見つめるファン・ドンヒョク監督は、映画の成功を予測したかという質問に対し「本当に正直に言えば、できると思った」と本音を語った。

おそらく彼の演出について、意外な選択だと思う人もいるだろう。前作が障がい者へのセクハラを告発した「トガニ 幼き瞳の告発」で、長編デビュー作やいくつかの短編映画もまた、養子縁組問題を直視した、社会告発的な性格が強い作品だったためだ。短編「ミラクルマイル」でファン監督は、2004年にカンヌ国際映画祭に招待されたこともある。

「『ミラクルマイル』や『マイファーザー』などをご覧になった方はそう思われるかもしれません。社会的な問題を必ず映画で作るべきだとは思いませんが、実は2つの作品は自分の意思が半分、周囲の意思が半分で撮ったものです。厳密に言うと『トガニ』もまた、社会の正義感を語る作品ではありません。『トガニ』は商業的に通用しないかもしれないとも思いましたが、社会的な意味はさておき、映画で表現したいシーンがたくさんありました。

社会的な問題を取り上げましたが、創作者として私を刺激する要素が多かったためスタートしたのです。『怪しい彼女』は本当に面白いコメディを撮りたいと思って始めました。一種のコミカルファンタジーと言えますが、誰もが共感できるテーマだと思いました。私自身も楽しく映画の撮影をしたいと強く思っていたこともあります」

何年も転々としていたシナリオ、ファン・ドンヒョク監督に出会って活かされた。

「怪しい彼女」は映画として制作されるまで、約7年もの間、転々としていたシナリオだった。制作過程で一度頓挫した話を、今の制作会社が版権を購入し、ファン・ドンヒョク監督と脚色した。物語の設定とキャラクターが面白かったため、ファン・ドンヒョク監督には自信があった。色々な部分を変えたとはいえ、原作が元々面白かったため、その骨格はそのまま維持した。今の「怪しい彼女」とは違い、原作はどのような流れだったのだろうか。

「オ・ドゥリ(シン・ウンギョン)のキャラクターが違いました。草稿では、おばあさんが若返りし、20代半ばのセクシーでグラマラスな、ストレートの髪をなびかせる女性になるという設定でしたが、少しありきたりだと思いました。『カンナさん大成功です!』などで使われた人物設定とも同じでした。私のスタイルのコメディを入れようとすると、邪魔になるんですよ。猟奇的でユニークなキャラクターを作ったほうが良いという思いで直してみるとシム・ウンギョンが思い浮かび、それに合わせてキャスティングを行いました。

歌もまた、元のままキム・チュジャ先生の『あなたは遠いところに』にしようと思っていました。ですが、キム・チュジャ先生の歌い方が独特で、歌うことも難しく、編曲も簡単ではないという音楽監督の判断もありました。そうして出てきたのがキム・ジョンホの『白い蝶々』で、楽しい歌を歌わせたかったので『ナソンへ行けば』を入れたのです」

今はかなり知られているが、映画の後半にキム・スヒョンがサプライズ登場することは、切り札となるどんでん返しのようなものだった。原作のシナリオに老人のパク氏(パク・インファン)も若くなるという設定があり、ファン・ドンヒョク監督は本来ウォンビンやヒョンビン、コン・ユを念頭に置いていた。しかし、シム・ウンギョンが主演を務めることになって年齢が下がったため、それに合わせて若いパク氏も更に若い俳優を探すしかなかったのだ。

「キム・スヒョンさん、ソン・ジュンギさん、ユ・アインさんが若手スターじゃないですか。その中でキム・スヒョンが“ホット”だと思いました。ちょうど制作会社の代表がマネジメントをした方で、キム・スヒョンと知り合いだったのでオファーを入れました。ちょうどキム・スヒョンが『トガニ』で感動していたそうで、簡単にオッケーしてくれました。我々の切り札でした(笑)」

「怪しい彼女」は大手企業が企画した映画?“むしろ良い投資かもしれない”

「怪しい彼女」に対する映画界の一部のネガティブな見方も無視するわけにはいかなかった。CJ E&Mが投資し、企画部門に名前を載せたため、実は大手企業の作った企画映画だと考える人もいる。そこで監督が力量を発揮することが比較的難しいのではないかという外部からの懸念の声もあった。

「CJ E&Mが共同企画で名前が入ってはいますが、実は制作会社が企画したんですよ。CJが制作会社と私を繋いでくれたのは事実ですが、干渉したり、統制したりする立場ではありませんでした。シナリオやキャスティングにおいても、ほぼ100%私が担当しました。

『トガニ』の時もCJと一緒だったので、それなりに相性は良かったです。その時、どこも投資を避けていましたが、こちらから投資を決定したのです。『怪しい彼女』も女優1人でリードする作品なので投資が難しかったと思いますが、CJが決定しました。『怪しい彼女』の制作費は35億ウォン(約3億3540万円)ほどですが、そのお金をポンと出すのは難しかったと思いますよ」

チャンスがあってCJ E&Mと2作連続で一緒にしたものの、ファン・ドンヒョク監督は短編映画に対する意欲もあった。「素材やストーリーを決めて俳優たちに特別出演を頼んで、映画祭で観客に会いたい」としながら、「SF映画やクリーチャー映画(奇怪な生命体が題材の映画)も好きなので、チャンスがあれば撮ってみたいです」と願望を語った。

ファン監督の大学生の頃の夢は文化部の記者だった。専攻も新聞学科で、それなりに文章や文化への関心が高い学生だった。そのような彼がカメラを見つめ、映画を演出する監督になった。いつかは彼が書いたものも読めるのではないだろうか。これに対してはファン・ドンヒョク監督はかなりきっぱりとしていた。

「またペンで何かをすることはないでしょう。いつからか書くことが嫌いで大変でした。負担と表現するのが正しいと思います。一度書き出すと何度も直すことになり、完成できませんでした。文の借金を作る感じというか。詩が好きでファン・ジウやキ・ヒョンドの詩をよく読んでいましたが、自分でもそっちのほうの才能はないと思います。今はカメラを見て笑いながら、人々と一緒に映画を作ることが好きです。『怪しい彼女』を終えたので、ひとまず休んでから、もっと良い作品でまた観客とお会いするつもりです」

記者 : イ・ソンピル