「俳優は俳優だ」シン・ヨンシク監督“キム・ギドク監督は弟子でない私になぜシナリオをくれたのか?”

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写真=ムン・スジ
映画「俳優は俳優だ」(監督:シン・ヨンシク、制作:キム・ギドクフィルム)は初めてワントップ主演を務めたアイドルMBLAQイ・ジュンのキャスティングが断然話題であった。さらにアイドルでは想像すらできなかった大胆な露出に衝撃的なベッドシーンまで。イ・ジュンにとって「俳優は俳優だ」は冒険であり、挑戦だった。

しかし、プレッシャーを感じたのはイ・ジュンだけではなかった。初めて商業映画に飛び込んだシン・ヨンシク監督(37)も緊張したのは同じだ。映画を作りながら一度も恐れを感じたことがなかったというシン・ヨンシク監督は「俳優は俳優だ」について「心臓が締め付けられています」と表現した。映画を1本や2本しか作っていないわけでもないが、前作に比べて予算回収についてかなり心配していると率直な心境を打ち明けた。

2001年、独立長編映画「ピアノレッスン」でデビューしたシン・ヨンシク監督は2005年「いい俳優」でもう一度ウォーミングアップをし、2009年にアン・ソンギ、イ・ハナを主演にした「フェア・ラブ」を通して名前を知らせた。今年公開した「ロシアン小説」は第17回釜山(プサン)国際映画祭の韓国映画監督組合賞で監督賞を受賞し、評壇から好評された。そうしてしっかりとベースを作ったシン・ヨンシク監督はキム・ギドク監督と手を組んで「俳優は俳優だ」を作った。

2013年、キム・ギドク監督制作3部作と呼ばれる「俳優は俳優だ」「神の贈り物」(監督:ムン・シヒョン)「レッド・ファミリー」(監督:イ・ジュヒョン)。その中でもっとも商業的な色を持っている「俳優は俳優だ」はキム・ギドク監督が自身の弟子ではなく既存の監督に提案した作品として視線を引き付けた。映画界は怪訝そうな視線を送った。

「キム・ギドク監督と出会ったのは配給会社NEWのキム・ウテク代表が大きな役割を果たしました。架け橋の役割をしてくれた人ですから。それがなかったら、どうやって会えるでしょうか?キム・ギドク監督と作業を続けてきたキム・ウテク監督が独立映画だけを撮る僕を思い出したようです。『あなたもそろそろ商業映画に挑戦してみるべきじゃないか?』と言われ、『俳優は俳優だ』を提案してくれました。そのとき僕は『僕はいいですが、弟子ではない僕にシナリオをくれるでしょうか?』と疑いました(笑) 僕はキム・ウテク代表が言ってみただけだと思いました。それまではキム・ギドク監督と一度も会ったことがありませんでしたから」


意外な提案が信じられなかったというシン・ヨンシク監督は、本当に成立するとは思わなかったと話した。キム・ウテク代表を間において二人の会合が始まり、まったく異なるシン・ヨンシク監督とキム・ギドク監督は意外なところで通じる部分を見つけたそうだ。それは予算に対する冷静な目だった。

「キム・ギドク監督も僕も映画を作るとき、必要以上のお金を使おうとしません。シナリオだけを見ても『これはこれぐらいかかるだろう』という判断がたちますが、時々制作費をありえないほどに高くしようとする監督がいます。しかし、僕たち二人は『これは何千万ウォン程度だね』と本当に素朴に予算を立てます。そんな部分でキム・ギドク監督と考えが合いました。ハハ」

そしてキム・ギドク監督が書いた「俳優は俳優だ」はシン・ヨンシク監督の手に入った。しかし、彼は映画を作り終えて、公開が迫ったときまで解けなかった疑問があったそうだ。私たち皆が気にしていた論点だ。キム・ギドク監督はなぜシン・ヨンシク監督にシナリオを渡したのだろうか?


「本当に面白かったのは、僕が映画を撮りながらもずっと気になっていた部分でした。最近までも解決できなかった問題でしたが、少し前に分かりました。本当に面白かったです。僕は僕で『なぜキム・ギドク監督は僕にこの映画をくれたんだろう?』と思い、キム・ギドク監督も『僕の作品を気軽にすると言う人がいなかったのに、なぜやると言ったのだろう?』と、お互い『意外だな?』と思っていました。結局、特別な意味はありませんでした(笑)」

キム・ギドク監督との笑えない出会いはこれぐらいだったというシン・ヨンシク監督。多くの人が自分についてキム・ギドク監督の弟子出身だと誤解していると、心配ではない心配をしていた。弟子のみなさんに恥をかかせるのではないかと、申し訳なく思うという言葉も一緒に伝えた。

巨匠との出会いを思ったよりスムーズに成立したシン・ヨンシク監督にイ・ジュンの第一印象について聞いた。彼は顔を明るくし、「オ・ヨン役のためにたくさんの俳優たちとオーディションを行ったが、イ・ジュンほどの俳優がいなかった」と親指を立てた。イ・ジュンを見た瞬間、悩む必要がなかったそうだ。燃え上がる眼差しはオ・ヨンそのものだったそうだ。

「正直、簡単な役ではないため、キャスティングに多く悩みました。韓国にある所属事務所の新人のエースたちは皆オーディションを受けました。これと言った人がいませんでしたが、イ・ジュンは違いました。何事にも積極的で、演技に対する渇きが大きかったです。演技を始めたばかりの新人にソン・ガンホのような演技を期待するわけではないじゃないですか?演技が上手であるより、まず見えるのがその俳優が持っている情熱と精神ですが、イ・ジュンは違いました。演技は教えればいつかは上手になりますが、そんな情熱は教えて学べるものではありません。ほかの新人に比べて本当に物事が分かっている人です。今になって考えてみれば、僕は本当に幸せな人だと思います。こんなにいい俳優に出会えたということだけでも監督としては大きな幸せです。ハハ」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : ムン・スジ