「ソニはご機嫌ななめ」チョン・ユミ“否定的な意見には心の中で「よく知りもしないくせに」と思う”

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写真=hohohobeach

ホン・サンス映画へ7度目の出演

いくら魅力的できれいな女優でも、結局役者とは作品で評価される運命の存在だ。“あの作品に出ていたあの役者”という認識が業界関係者や人々の脳裏に刻まれることは役者にとっては大きな勲章である。それはスターであれ新人であれ、その作品が代表作として残るためだ。チョン・ユミにとってホン・サンス監督の映画がそういったものではないだろうか。

ホン・サンス監督は、自身の15番目の長編映画「ソニはご機嫌ななめ」でもチョン・ユミをキャスティングし、チョン・ユミはホン・サンス監督の長編と短編を含む7本の作品に出演した。俳優キム・サンギョン、キム・テウ、ユ・ジュンサン、コ・ヒョンジョン、イ・ソンギュンなど、様々な俳優たちがすでに“ホン・サンスファミリー”に名を挙げており、チョン・ユミもそのファミリーの一人となっている。

彼女なら堂々とホン・サンス監督の“ペルソナ”(仮面や人格を意味するギリシャ語。映画業界では監督が自身の作品観を投影するために特定の俳優と何度も出演させた時、その俳優を差す単語としても使われる)と呼べるだろう。特に、今回の作品「ソニはご機嫌ななめ」の中のチョン・ユミは多少反抗的で、わがままだ。これまで初恋のときめきを抱いた少女から、真面目で重い雰囲気の女性まで様々なキャラクターを演じてきたチョン・ユミをキーワード別にチェックしてみた。

チョン・ユミの遅き思春期?

「ホン・サンス監督とは初めてですけど?」彼の映画に何度も出演した感想を尋ねるとチョン・ユミはこう言ってはぐらかした。実は、今回の作品への出演は、プレッシャーがないくらい登場シーンが少ないという監督からの説得によって決定した。映画「教授とわたし、そして映画」で主演を演じ、「3人のアンヌ」や「よく知りもしないくせに」では文字通りサプライズ登場といえるほど登場シーンが少なかった。「ソニはご機嫌ななめ」を見てチョン・ユミは後者の役割をしたかった。

「『ソニはご機嫌ななめ』の撮影を始める頃、私はとても作品をリードしながら演技できるような状態ではありませんでした。映画をあまりやりたくなかったし、映画のタイトルが決まってもいない状態で女優は私一人だと言われると、大体予想が付くじゃないですか。無理だとも言いましたが、あの時は演技をもっと上手くなりたいという変な気持ちがありました。普段作品をする時は雑念がないほうですが、これまでとは違って集中できないままスタートしました」

ホン・サンスという鏡

ホン・サンス監督は数人の俳優を自身のペルソナとしたが、チョン・ユミ自身はある特定の関係で結ばれたくないと話した。ただ、監督が呼んでくれるから作品をやるだけで、複数の作品を同時に撮っている時は「あら?呼んでくれる人が多いのね」と単純に思う程度だという。作品に出会うとその時の感情に忠実な方だった。

「ホン・サンス監督と作業をする時は、毎瞬間を覚えているわけではありません。(毎日その日の台本が出来上がるため)朝来てからは台本を覚えることで精一杯なので。監督の作品を全部理解することはできませんが、毎回心に刺さる言葉があります。私の台詞ではなくてもその言葉が心に残り、考えさせられる時があります。他の映画では決して経験できないことです。短い撮影期間ですが、それが積み重なります。普段悩んでいたことが、監督と作業をして一気に解決される場合もあります。

監督の映画に出演すると瞬発力がよくなり、台本に対する恐怖心が明らかになくなります。今日はどんな言葉をもらえるのだろうかと好奇心が湧きます。実は、監督の作品をたくさん見たわけではありませんが、一緒に作品を作っていく時間を経験できることが好きです。役者としても楽しいです。まだタイトルがない状態で出演して、魔法のように作品が出来上がりますが、それが一種のプレゼントのように感じます(笑)」

チョン・ユミと4人の男性

イ・ソンギュンを除いて「ソニはご機嫌ななめ」を通じてチョン・ユミはチョン・ジェヨン、キム・サンジュン、イ・ミヌと初めて共演した。普通、長編映画を撮ると俳優同士で仲良くなるものだが、今回は違った。一週間ちょっとの撮影期間だったために半日、長くて2日間程度だけ、それぞれの俳優に会った。映画の中でソニのことが好きで評価する4人の男性。果たして、ソニの気持ちはどこにあったのだろうか。

「うーん。考えたことありません(笑) ソニは自ら生きていくし、私はソニの台詞を早く覚えなきゃとしか思いませんでした。出演シーンも多く、シーンが長いじゃないですか。自らソニはどんな子だろうと考える暇がありませんでした」



たまにチョン・ユミは作品の中で実際に酒を飲んだ。「ソニはご機嫌ななめ」でもかなり多くのシーンで焼酎やビールを飲んでいる。記憶をなくすほどに飲んで演技をして、後になって思い出せなかった時もあった。どのくらい飲むのかと尋ねると「状況によって違います」と答えた。気分が良い時、落ち込んでいる時など、気分によっても変わるという。それでも一人で酒を飲むことはほとんどないらしい。

他人の評価

「ソニはご機嫌ななめ」は、3人の男性がソニを見る視線とその二重性について語る作品だ。それぞれ異なる見方をしているようだが、ソニを表現する言葉は誰が先に言ったか分からないほど、みんなが口を揃えて同じことを言う。「見る目があって、優しく純粋で、たまに変人のような子」これがソニの正体だった。

日常の中で他人がチョン・ユミを評価する言葉があるはずだが、チョン・ユミは「特に覚えているものはありません」と話しながら笑った。良い言葉は心に刻み、良くない評価は聞き流す方だという。「私について否定的に断定する人には心の中でこう言います。「よく知りもしないくせに!」

「ポラロイド作動法」と「親知らず」

今のチョン・ユミを作った作品だ。時期的にキム・ジョングァン監督の短編映画「ポラロイド作動法」の方が先だが、チョン・ユミ本人はチョン・ジウ監督の「親知らず」をデビュー作品だと考えていた。ソウル芸術大学の先輩だったキム・ジョングァン監督の勧誘で「ポラロイド作動法」に出演し、それがきっかけになり本格的な商業映画へのデビューにつながった。当初チョン・ユミは、何か目的があったわけではなかった。単純に映画が好きで学校を選び、大学時代に複数の短編映画に出演しながら俳優としての夢を育てるようになったという。

「大学でみんなと色んな作品をやったおかげで、焦らずにちゃんと学ぶことができました。誰にでも大学時代は楽しい記憶として残るじゃないですか。私もそうでした。特に芸術大学だったので、一般の大学よりも人々にエネルギーが溢れていて、それを見て不思議に思いました。もちろん刺激も受けましたし」

自然体のチョン・ユミ

作品の中のチョン・ユミと日常のチョン・ユミは徹底的に別れている。もちろん、作品の中の姿がチョン・ユミではないという意味ではない。役者として参加する作品と個人としての人生をきちんと区別するという意味だ。「ソニはご機嫌ななめ」の中での苛立ちや、何かの不満そうなソニの姿も作品から自然と出てきた姿として受け止めよう。

「実は、映画の中のあの表情はホン・サンス監督のために出てきたものなんです(笑) 次の台詞は何だっけ?どうすればいいだろう。こんなことを思っていました。ソニのある瞬間の時間を私が生きていたのです。映画を見て「私はあの時のあの瞬間、こんな顔で生きていたんだ」と思いました。

「趣味は私がやりたいことをやるタイプです。その都度変わりますが、『オフィスの女王』が終わってからはお餅を作ったり、最近ではバドミントンでも改めてやってみようかと思っています。最近までは料理をしていて、20代の頃は作品をやっていない時は寝ているばかりでしたが、最近は色々と学びたくて(笑)」

女優チョン・ユミ

無理をせずに行く。これがチョン・ユミのポリシーだ。最近まで大手事務所に所属していたチョン・ユミは、スターとしての位置づけを確固たるものにすることもできたが、そのような道を選ばなかった。つまり、作品中心の女優の道を選んだのだ。

「私の選んだ道が厳しそうに見えますか?深く考えなかったので(笑) 私の性格なのかもしれませんが、それぞれみんな考えていることは違いますから。主人公でも枠役でも色んな姿をお見せしたいです。CMなども自分に合うものがあればやってみます!」

記者 : イ・ソンピル