Vol.1 ― 「サウスバウンド/南へ走れ」ハン・イェリ“イム・スルレ監督の不在がとても大きかった”

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「サウスバウンド/南へ走れ」…とても大切な縁に感謝します

真面目でいい人そうに見える。いや、実際に会ったハン・イェリは柔らかく落ち着いていて、尚且つ真剣だった。昨年、映画「ハナ~奇跡の46日間~」で受けた印象は、今年の「サウスバウンド/南へ走れ」でも変わらなかった。

だが本人は、いい人という表現に疑問を抱いていた。「いい人という言葉は、平凡だという言葉と同義語のようで、たまにはわがままに生きた方がいいのではないかと思います」という彼女の答えに共感した。実際、最近では“いい人”という表現は“魅力がない”という意味としても使われているためだ。

「映画中で私の演じるミンジュという人物の19歳と、私自身の19歳が違っていたので、その後も全く違う人物に成長すると思いました。30歳になった今の私の姿とミンジュの30歳もまた違うでしょう。実際に学生時代の時は、大人から言われたことには、必ず従わなければなりませんでした。強迫観念もすごかったし。それで、学生の本分は全うしましたが、疑問もよく抱いていました」

ファッションデザイナーを夢見て、思いのままクールに生きていくミンジュ役に対する答えだったが、ハン・イェリが現在持っている人生観を感じることができた。ハン・イェリは、すでに先日行われたメディア試写会の記者会見で“3放世代”(お金がなく恋愛、結婚、出産の3つを放棄した世代)に対する悩みを打ち明けた。自身の年齢に合った悩みを持つミンジュのように、ハン・イェリ自身も今についてそれだけ悩む女優だった。


ハン・イェリが語る「サウスバウンド/南へ走れ」とは?

「サウスバウンド/南へ走れ」は、「ベルリンファイル」や「7番房の奇跡」など、そうそうたるライバル作品に押される形になっているが、ハン・イェリは「商業映画だからヒットしてほしいと願う気持ちは当然あるが、私はこの映画に出会えただけでも大切な縁を持てた」と落ち着いて話した。

「本当にシンプルに言うなら愉快、爽快、痛快という言葉を使いたいです。だが、それと同時に絶対笑ってばかりいられないです。今の現実と似たところや逆にもっと悪い部分もあるので、ひたすら笑ってばかりではいられません。私も映画を見ながらそう感じました」

原作になった奥田英朗の同名の小説に比べ映画「サウスバウンド/南へ走れ」では、韓国社会への問題意識がそのままストレートに反映されている。プロモーションを行う過程で、その部分が少し薄くなった点はあるが、むしろハン・イェリはその部分を見つめていた。

「でも、最初から最後まで深刻な感じはありません。現実にはありえない行動を主人公たちがしていますし。映画に登場する国家情報員の職員さえ可愛いじゃないですか(笑)」


大切な因縁、キム・ユンソク&オ・ヨンス、そしてイム・スルレ監督

映画の人気より、ハン・イェリが個人的に「サウスバウンド/南へ走れ」を通じて得たのは、俳優キム・ユンソク、オ・ヨンスと共演したという事実だった。ここにプライベートでも交流があり、ずっと憧れてきたイム・スルレ監督と作業できたという点も大きな経験になった。

「二人の先輩に会えることだけでもワクワクしました。台本をいただき、何も考えずやらなきゃと思いました。一緒に撮影しましたが、一つ一つのシーンが惜しかったです。もっと緊密な関係を演じたいと思いました。機会があれば次回は映画の中で息を合わせる相手役になりたいです。

キム・ユンソク先輩とオ・ヨンス先輩は正反対でした。実は、キム・ユンソク先輩はタフで男の中の男だと思っていましたが、繊細で几帳面で優しい人でした。やはり近くで見てみないと分からないものです。オ・ヨンス先輩は容貌とは違って率直でクールな性格がまた意外でした。オ・ヨンス先輩が(映画のステージになった)島での撮影で苦労されてましたが、実は移動すること自体大変でした。ソウルから島まで10時間もかかるので体力の消耗も大きかったです。

イム・スルレ監督とは一緒に作業する機会が来るのだろうかと思っていましたが、思ったより早くその機会が訪れました。一緒に撮影できてとても楽しかったです! 監督は、現場でむしろ私にいろいろと質問をしてくれました。『イェリはどう? 何が好き? どう思う?』このように聞かれました。本当に良い経験でした。互いにたくさん話をしながらいっぱい笑って撮影できたと思います」

先輩俳優と監督についての話をしたが、ハン・イェリ自身、今回の撮影は容易なだけではなかった。「サウスバウンド/南へ走れ」撮影当時、映画「同窓生」と「ザ・スパイ シークレット・ライズ」の撮影も同時に行っていたためだ。また、撮影終盤になって内部の問題でイム・スルレ監督が現場を離れた時も厳しい状況だったはずだ。

「その時は、私自身もそんなにいい状況ではありませんでした。イム・スルレ監督については、みんな残念がりましたが、きっと戻ってくると信じていたようです。私もその問題が解決されると信じていました。イム・スルレ監督の不在がとても大きいということはみんな知っていました。実はその時、私は自分のことを心配し、映画の中で私はしっかりやっているのかと自問してみました。しかし、その時は私がどのように演技したのかよく覚えていませんでした。しっかりしなきゃと思いました。後輩(ペク・スンファン、パク・サラン)の面倒も見ながら」

慌ただしく2012年を過ごしたお陰だろうか。今年ハン・イェリは、より活発な活動を予告している。現在上映中の「サウスバウンド/南へ走れ」をはじめ、映画「同窓生」と「ザ・スパイ シークレット・ライズ」、そして独立映画(配給会社を通さず、制作者が直接映画館に売り込む映画)「幻想の中の君」が公開を控えている。独立映画だが、恋人たちが愛を失った後、どうやってそれを克服して生きていくのかを描いた作品だという。ハン・イェリのまた違う姿に出会える作品として、期待してみてもいいだろう。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル