チョン・リョウォン「『ドラマの帝王』で癒されました」

OSEN |

今月の頭に放送終了したSBS月火ドラマ「ドラマの帝王」(脚本:チャン・ハンジュン、イ・ジヒョ、演出:ホン・ソンチャン)で、新人のドラマ脚本家イ・ゴウンは、明るい顔でドラマ業界のベテランたちを次々と自分の側に引き込んだ。あらゆる苦難を経て利益の追求に徹底するようになったドラマ制作者アンソニー・キムの凍った心を溶かし、韓流スターであるカン・ヒョンミンを説得し、自身の意志を貫いたドラマ「京成の朝」を執筆した。そしてその結果は、好調な視聴率と共に、作品に関わった全員が一段と飛躍する大成功に繋がった。善良な意志で作品の中身のみに集中したイ・ゴウンの勝利だった。

このキャラクターを演じたチョン・リョウォンは、心からキャラクターを応援し、そのような人物を愛する、本当にイ・ゴウンのような女優だった。彼女の演技が「ドラマの帝王」で好評を受けたとすれば、それはキャラクターの特徴を貫いているもっとも大きな流れに共感し、同じ気持ちを抱いたためであろう。

写真=チ・ヒョンジュン記者

台本修正?一度も要求したことがありません

「ドラマの帝王」はドラマ制作の過程をリアルに描き視聴者の注目を浴びた作品だ。ドラマ1本が制作される過程で、トップスターをキャスティングしないとテレビ局から編成に組み入れてもらえず、そのため1話あたり1億ウォン(約834万円)あまりの出演料がやり取りされ、それにもかかわらずあらゆる理由から撮影が中断される状況がエピソード毎にぎっしりと詰まっていた。

女優ならば、このような過程をよく知っていそうだが、チョン・リョウォンはむしろ「ドラマの帝王」を通じてドラマの制作過程について新しく学んだことが多いという。

「私も気になる部分があったんですが、あえて聞いたり、調べたりはしませんでした。例えば『京成の朝』の演出者のク監督(チョン・インギ)とアンソニーがエンディングシーンを巡り、金銭的な問題で揉めるシーンですが、今までは知らなかった部分です。ドラマを撮りながら初めて知った内容で、予想していただけで『そうではないかな』と思っていた部分を、今回確認できました」

「ドラマの帝王」では頻繁に起こっても、チョン・リョウォンにとってはまったく見慣れない部分もあった。ドラマでトップスターのソン・ミナ(オ・ジウン)とカン・ヒョンミンが、脚本家のもとを訪れ要求した台本修正のことだ。自分の好みに合うようにドラマが展開されなければならないという傲慢な考えから、CMのように金銭的な問題が絡んでおり、たびたびこのような要求が行われたりした。

「私は台本の修正を今まで一度も要求したことはありません。脚本家の意図があるはずですし、ストーリーが狂わないようにするためには、そのまま行ったほうが良いと思うので、修正をしなければならない理由がありません。周りでそのような状況を見たときは、いっそ他の作品を選択すべきではないかと思うときもありましたが、良し悪しはともかく、考えは人それぞれですので。しかし私が実際に経験して見た俳優たちの中にはそこまで極端な方はいませんでした。もちろん、そのような人もいるという話は結構聞いたことがあります(笑)」

劇中ドラマの脚本家役を演じただけに、俳優ではない脚本家の立場を理解するきっかけにもなった。特に今までドラマを撮影しながら、到底納得がいかなかった部分については、今回の作品でその原因と理由を把握できた。

「台詞を見ていると、話とまったく関連のない、何かを宣伝するような言葉を口にするときがあります。実はそのような部分は、実際に俳優と脚本家をとても苦しめる部分ですが、『ドラマの帝王』でその部分を指摘してくれてスッキリしました。更に、その原因を提供する人たちのことが気になり始めました。一体ドラマの制作環境をこのようにしたのは誰なのか。何が我々をここまで苦しめるのかについて、自分にたくさん問い掛けました」

彼女が話したように「ドラマの帝王」では、ドラマの流れとはまったく関係なく突然登場するPPL(Product Placement:テレビ番組や映画に特定会社の商品を小道具として登場させること)や、テレビ局の視聴率至上主義などドラマの制作課程の弊害として指摘されてきた諸問題が、そのまま直接的な表現と共に、集中的に叩かれた。特にテレビ局が広告販売を理由に、視聴率が低迷な作品をばっさりと廃止し、その枠を刺激的な設定でいっぱいのドラマで埋める現実を批判しながら、「編成はテレビ局固有の権限である前に、視聴者との約束だ」と一喝するなど、痛快な直球が次々と続いた。

「ドラマ局長が劇中『上なら上らしい姿を見せるべきだ』と語る場面がありますが、私はその台詞でストレスが吹き飛びました。そのように思う人がいるというのが幸いだと思いました。今すぐは大変かもしれませんが、一つの味に統一するのではなく、バイキングを用意することが、結局はドラマを作る側の発展に繋がると思います。そのようなドラマにして行くにあたって力になりたいですし、私もまたそれを助ける実質的な何かが出来そうな気がしました」

そしてこのように考えるようになるまで「ドラマの帝王」と、その中で最後まで自身の考えを貫いた信念のある脚本家イ・ゴウンというキャラクターは、チョン・リョウォンにとって大きな力となった。

「ゴウンが人間愛を訴え、結局は成功するという結論が、私にとって癒しとなりました。ゴウンのような信念を持つ人が、絶対妥協せず、結局『京成の朝』という作品を通じて実力を認められ、補償される部分は、そのような心を持っている人の成功例を見せてくれたものだからです」

このような信念を同じ心で支えたくれたのは、最終的に「ドラマの帝王」を執筆した脚本家のチャン・ハンジュンとイ・ジヒョだった。チョン・リョウォンにイ・ゴウンのキャラクターをオファーした時に紹介したキャラクターの説明を最後まで貫いたことをはじめ、低迷な視聴率にもかかわらず、ドラマの企画意図を最後まで維持したからだ。

「チャン脚本家からイ・ゴウンのキャラクターのオファーを受けたとき、万が一結末が悲しいエンディングだと私は出来なさそうと話しました。なぜならば、劣悪な韓国ドラマ制作記を見せた後『世の中って、こんなもんだよ』と結論付けてしまうと、その中からはいかなる希望も癒しも見い出せないからです。しかしチャン脚本家が、過程は険しいけれど、イ・ゴウンのような人生を生きたとき、必ずその中で成長し、得るものがあると話してくださって、その言葉に同意し『ドラマの帝王』への出演を決めました。私はドラマの脚本家をはじめ、すべての創作者たちにとってもっとも重要なのは、創作をする意図だと思います」

このような考えになるまで、チョン・リョウォンにとっても試練はあった。初期の意図とは違って、視聴者の反応によって修正が繰り返され、そこで最初の姿は跡形も無くなった、魂の無いキャラクターを演じるしかなかった苦い経験だ。

「バナナケーキだと思って出演したのに、時間や経済的条件で結局はキャロットケーキを作る作品に出演したことがあります。その時、お客様に最高においしいバナナケーキのように語る自分を見ながら、虚しさを感じました。当時『私は女優ではなく、嘘つきになったみたい』と思ったりしました」

創作者にだけ厳しい要求を突きつけるわけではない。チョン・リョウォンは今回「ドラマの帝王」という作品を通じて、今まで考えてきた夢を更にはっきりするきっかけができた。

「今の時代は過去のように親や教師が未来世代に影響力を及ぼす時代ではないと思います。代わりにその役割をするのがメディアです。しかし、それを作る人が腐敗していると、そこから生み出される結果は目に見えています。多くの人に影響を与えるメディアが、健やかであることを祈りますし、それを作る環境も改善されて欲しいです。それが私が演技をする究極の目標になりました」


キム・ミョンミンとシウォン

共演した俳優キム・ミョンミンとSUPER JUNIOR シウォンは、チョン・リョウォンが「ドラマの帝王」を撮影するにおいて、最後まで集中できるように元気付けてくれた大事な同僚たちだ。彼女は「2人は明らかに違いますが、見ているだけで学べることがありました」と親指を立てた。

「キム・ミョンミン先輩を通じて、作品に接する礼儀とは何かを学びました。先輩は現場で優等生のようにいつも台本を脇に挟んでいました。その姿に『ただでさえ上手いのに、あそこまで努力されてしまうと、私はどうしろと言うの』と思うほどでした。あまりにも徹底して準備されるので、NGを出す人が恥ずかしくなり、そうすると皆が更に努力するようになりました。もっと良いことは、このような努力によって撮影時間が縮まり、その時間を集めると週に1回は休める余裕が出来たことです。先輩は一回も『良い人になるべきだ』と口にすることなく、行動で私のモチベーションを上げてくれた方です。何故多くの俳優たちが先輩をロールモデルにしているか思い知りました」

「シウォンは以前、一緒に聖書の勉強会をしながら親しくなったのですが、シウォンが来ると雰囲気が明るくなります。エネルギーが底を突きそうな瞬間でも、シウォンの登場で皆が盛り上がります。シウォンのドラマでの役割は、登場するたび爆笑させるキャラクターで、それはそう簡単なことではありません。じっとしていて、一瞬でスナイパーのように完璧に命中させなければならないので、相当なエネルギーが必要です。SUPER JUNIORの大変なスケジュールの中で、それを黙々とやり遂げる姿を見ながら、すごいと思いました」

ファッショニスタの秘訣

チョン・リョウォンは芸能界で服のセンスが良いスターとして有名だ。授賞式をはじめ、あらゆるイベントでナチュラルに自らを輝かすスタイルを披露し、ファッションブロガーをはじめとする世間の人々からファッショニスタとして認識されている。

「何かを好きになると、上手くならないほうがむしろ難しいと思います。私は服がとても好きです。小さい頃から母の服に興味がありました。だから関心を持つようになり、研究するようになり、そうしながら私にもっとも似合うスタイルは何かが分かったと思います。続けてトライするうちに研究するようになり、結論に至る過程で私に似合わない服は捨てます。ファッショニスタの秘訣というよりは、服を好きになることが重要だと思います」

記者 : チョン・ソンハ