Vol.2 ― シン・ヒョンジュン、なぜ迷わずバカな役を演じるようになったのだろうか?:SPECIAL INTERVIEW

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カリスマ性あふれるエキゾチックな顔をして冷静に見えた俳優が、いつからかルーズなところをひとつ、ふたつ見せ始めた。バラエティ番組に出演し、知人らとさりげなく冗談を交わし、映画やドラマでもカッコつける役よりは、窮地に追い込まれる役をよく演じることになったと思ったら、いつの間にかバカな役専門俳優になっていた。なぜ彼は迷わずバカな役を選ぶようになったのだろうか。なぜ神秘主義を大胆に捨てたのだろうか。今年だけでも何回もバカな役を演じた俳優、シン・ヒョンジュンに直接聞いてみた。

「ピ・チョンドゥク先生の影響が大きいです」

―最近ではバカな役ばかりでしたが、「将軍の息子」や「銀杏のベッド」を思い出せば残念なところはありませんか?

シン・ヒョンジュン:カッコつける役を演じる人はたくさんいるでしょう? たとえば「IRIS -アイリス-」の撮影の時、友達のチョン・ジュノはかなりつらい思いをしていました。イ・ビョンホンさんばかり目に入るので。だから言いました。「お前は悪役なのに良いイメージに未練があるからよく見えないわけだ」と。「ウララ・カップル」では、ヒョヌ(ハン・ジェソク)を目立たせるために、僕、コ・スナムが最大限情けなく見えなければなりませんでした。監督はそこまでする必要があるのかと言いましたが、僕はそれが正しいと思いました。全体的によくできてこそ良いドラマで、良い俳優です。映画は完成したシナリオでずっと撮影しますが、ドラマはそうではないでしょう? その時その時の状況によって柔軟に対応しなければなりません。

―チョン・ジュノさんの話が出たので、お聞きしたいのですが、二人は公的な席でもよく笑い話をしますよね。役者としては役に立たないと見られていますが、それをどう思いますか?

シン・ヒョンジュン:そういう話をたまに聞きます。でも、僕の性格なんです。もしかしたら自信があるかも知れないのですが、役者は演技で見せればそれで良いという考えです。僕が一番面白く読んだ本がピ・チョンドゥク(皮千得)先生の「因縁」です。前一度お会いしたことがありますが、謙虚でユーモアがあって、本当に感心しました。そんなに立派な方が先に近づいて来て下さって、ご自身より年の若い人を笑わせたりして。外国の映画祭で会ったメル・ギブソンさんもそうでした。別にカッコつけなくても自然と素敵に見えますね。あ、イム・グォンテク監督もとても素敵な方です。はっきりとした発音でおっしゃるわけではありませんが、面白いです。それで僕もその方向に向かい始めたわけです。

「立派な方々と出会いながら、肩の力が抜けました」

―「銀杏のベッド」までは、カリスマ性あふれる方だと思っていました。

シン・ヒョンジュン:その当時は、インタビューもあまり受けませんでした。若かったですね。授賞式でキャスターから「一言お願いします」と言われても何も言わなかったし(笑) でも、立派な方々にたくさん会って、一緒に仕事をしながら肩の力が抜けました。良かったです。その後かなり自然になりましたし。

―SBS「天国の階段」でもサポート役でしたね。その時もいい俳優だと思いました。

シン・ヒョンジュン:最初に台本が来た時、選択肢がありました。ソンジュ役とテファ役のどちらかを選びなさいと言われました。僕は映画「将軍の息子」でも林役が気に入ったし、「愛の贈り物」もそうですし、いつも僕を動かす役を選ぶようになります。新しい演技がしたいと思いましたが、その時来たのがテファでした。現実ではああいう人生を生きたくないけれど、その役を演じてテファを理解することができました。シン・ヒョンジュンの愛とテファの愛は、規模が違うと思いました。だからさらに良かったです。僕にはできないものが彼にはできたのだから。

―たまにドキュメンタリーを見ると、一般的には理解し難い恋をする人々がいます。私たちが見ると本当に太っていて美しくない女性なのに、旦那さんは心から愛していたり、亡くなった妻を思いながら山の中で生活される方もおられましたし。

シン・ヒョンジュン:学生たちにもドキュメンタリーをたくさん見なさいと言います。以前、山の中で妻の痕跡を探しながら廃人のように一人で生活される方の話を見たことがありますが、そのような愛もあるんだと思ってジーンときました。「天国の階段」でテファを演技しながらテファが一番大変だと思いましたが、「愛の贈り物」をしながらはこのような愛もあるんだと思いました。実は、最後にソニョンが死ぬ時は脚本家がどのように書いたとしても、僕も一緒に死ぬつもりでした。でも、娘を頼むという手紙を読んで、ついて行けなかったわけです。どうして離れていきながらも僕をこんな目にあわせるんだと思いました。笑いながら終わったけれど、生きていることが幸せではなかったです。

―愛する時もそんなに夢中になりますか?

シン・ヒョンジュン:一生懸命に愛したいと思います。でも、実際に愛したことはかなり前のことで。恋は努力だと思います。努力しないから一人なんです。頻繁に会って電話もしてあげて面倒も見なければならなくて、ずっとそうしないといけませんが、まだそこまで心を動かす人に出会えていないと思います。

―そうですね。まだ出会えていないわけですね。ところで、恋をしない代わりにたくさん仕事をされていると聞いていますが、制作会社もお持ちですよね?

シン・ヒョンジュン:23歳の時に作った映画会社です。若い時からメッセージのある映画を作りたかったんです。でも、宗教色の濃い映画を作るというわけではありません。実は、「裸足のギボン」もアンデルセンのメッセージから始まります。“親孝行”というメッセージが盛り込まれた温かい映画ですね。そのような映画を作るためには、自分の映画会社を持つべきだと思って、かなり若い頃から準備しました。30歳の頃からチョン・テウォン先生に教えていただきました。初めに映画「アウトライブ」の企画をしてみて、その次は、映画「SSU」に投資しました。「裸足のギボン」は、完全に僕のものですね。原案からでしたから。「裸足のギボン」を成功させ、45歳になったので、これからは僕の名前でも抵抗感がないのではないかと思って別の映画を企画しています。

「温かいメッセージが入った映画を作りたいです」

―どんな映画が作りたいですか?

シン・ヒョンジュン:家族皆で一緒に見られる映画が作りたいです。

―でも、映画「家門の栄光」は、ちょっと違う感じですね。シリーズ第1作目はまずまず大丈夫でしたが、シリーズ第4作まではひどかったです。

シン・ヒョンジュン:僕のイメージにマイナスになることは知っています。その方にとても大変な時期がありました。作品に出演しなければその映画会社が危なくなる状況でした。賢い俳優はそれを避けて行きますが、僕はその方面では賢くありませんので(笑) 僕はスマートではありません。僕が俳優としての色をきちんと見せるためには、「芸能街中継」も止めるべきです。人々と適当な距離を置くこと、神秘感も必要ですから。でも、僕はそれがやりたいんです。学生にも集中して真剣に望むと、何でも道が開かれるということを見せたいです。

―映画とドラマ、両方で成功した俳優はほとんどいないですね。そして、このように多様なキャラクターを演じる俳優もめったにいないし。でも、知らない人が多いです。シン・ヒョンジュンさんが立派な俳優だということを。

シン・ヒョンジュン:かなりラッキーだと思います。僕は認めてもらうことに対しては、あまり焦ったりしません(笑) 僕は、今がいいです。いつもインタビューを受けると、10年前にも今がいいと言いましたし、15年前にも今がいいと言いました。ずっと演技ができて、僕が考えたことを一つ一つ挑戦していくのがいいです。実は、生放送のMCも挑戦ですね。良くできない時は色々と言われますが、ドラマもこれまで悪くなかったでしょう? そして、人々は僕が次に何を選択するのか気になるみたいです。そして僕は次にSBSのトークショーを選びました。

「これからSBSのトークショーに挑戦します」

―決まりましたか? 講義も続けていると思いますが、マネージャーさんが大変じゃないでしょうか(笑)

シン・ヒョンジュン:はい、決まりました。僕は、一度も学校に行く時マネージャーが運転する車に乗ったことがありません。学校での仕事は別ですね。反応が良くなければなくなるかもしれませんし。テレビってそういうものでしょう?

―「GO Show」は、後半になっていい感じになりましたが、放送終了になって残念です。しかし、親しい人をゲストとして招くことは止めてもらいたいですね。KBS「パク・チュンフンショー」の敗因も同じだと思います。人々はそれが嫌なんです。「俺はこういうもんだ」と誇示するようで。バラエティ番組に出演したことのないチャン・ドンゴンさんのような方をゲストにするから、彼らだけのリーグのような感じになりました。カン・ホドンさんが「黄金漁場-ヒザ打ち導師」に一回出てほしいとお願いすることとは違いますね。それで人々から敬遠されたのだと思います。

シン・ヒョンジュン:バラエティ番組は、反応が良くなかったり視聴率が低迷したりするとすぐになくなることもあります。今MBCを見てもそうですし。あらかじめ覚悟をしなければなりません。僕は、幼い頃から冒険がとても好きでした。僕の映画を見てもそうですね。「銀杏のベッド」を見ると、ファンタジーに50%以上がCGです。その時は、まだ観客がCGが何かよく分かりませんでした。「サイレン」という映画は初のパニック映画でしたし、「SSU」という映画は初の海洋映画でした。また、「アウトライブ」は初のワイヤーアクションで中国ですべて撮影しました。

―冒険を楽しんでいますね。

シン・ヒョンジュン:それで周りからは、なぜそんなに不安定な方へ行くのかと言われます。それでも僕は試行錯誤も多かったですが、挑戦することが本当に面白いんです。そして“初めて”ということに対し、自負もあります。誰かが最初に始めればまた他の誰かがそれを継承して発展させるものですから。初めは「なぜ俳優がMCになったり、なぜバラエティ番組に出るのか」と思われましたが、僕は後輩に、さらには教え子に道を開いてあげたいと思います。控えめになるわけではなく、一度挑戦してみることですね。僕が非難されても、後輩にはまた別の道を開いてあげたという点で気持ちいいです。

―いつも教え子たちのことを考えていますね。

シン・ヒョンジュン:そうです。例えば、どんなカメラ監督に出会うのかによってアシスタントも習って似ていきますね。マネージャーも同じですし。僕の教え子たちは、僕のようにマルチにならなければならないと思います。演技も時代によって変わりますから。昔の演技と今の演技はかなり違いますね。バストを撮る位置も違うし、もっと表現が繊細になりました。でも、ぼ~っとしてセンスなしにその場に止まっていると、俳優はすぐに消えます。だから、良い雑誌を地道に見なければならないし、ファッションに敏感でなければならないのが俳優です。服をカッコよく着こなすことが重要なわけではなく、ファッションを見逃せば感覚を失うことになるから、俳優としては必ずぎゅっと掴んでいる必要がありますね。自分の目があってこそ時代の流れについていくことができます。大変でも常に考えなければなりません。

「いつまでもただ演技の上手い人になりたいです」

―人生において逃したくないことがあるとすれば、それは何ですか?

シン・ヒョンジュン:僕は演技です。誰でも同じでしょう。僕は演技が上手な人であればいいですね。60代でも、70代でも、その年齢の人生を一番うまく表現できる俳優になりたいです。

―ドラマ出演の予定はありませんか?

シン・ヒョンジュン:体力があってこそ仕事もできるわけですから、ドラマはしばらくしないと思います。いくら良い作品が入ってきても、今の状態だとその作品に申し訳ないですから。僕は、今白紙の状態ではありません。早く白紙に戻さなければならない過程にいますし。一応今、僕の映画会社で準備している映画は順調に進んでいます。今僕を苦しめている映画のシナリオが一つあります。良い役というよりは、温かいもので。それは娘と父の話です。どう見ても面白くない題材ですね。俳優はヒットを見逃してはいけませんが、あまりにも温かすぎて気になります。人には、時期があるようです。僕は20~30代の時はもっぱらヒーロー物が好きでしたね。だから選んだキャラクターを見ると全部ヒーローです。「アウトライブ」もそうでしたし、「SSU」もそうでした。ところが、ある瞬間温かい方向に向かうようになりました。これから父と娘が登場する映画をご覧になりましたら、「あ、これだったんだ」と思ってください。

―私は結婚について肯定的に考える方ではありませんが、とても良いパパになれると思います。良い旦那さんになれるかはよく分かりませんが(笑)

シン・ヒョンジュン:僕もそうなりたいです。もし結婚をするなら、良い夫にならなければならないですね。僕がもっと若かった時は、実は自信がありませんでした。衝突するのは嫌でしたね。この人と僕は好きで会ったのになぜ喧嘩しなければならないのか? なぜこの人の誕生日に撮影に行かなければならないのか? そのようなストレスがありましたが、今は結婚のことで悩んだりはしません。運命のような愛に出会えば、明日でもすぐに結婚すると思いますが、必ず結婚したいと思っているわけではないです。それは違いますね。若い時は誰かに会えばワクワクしましたが、今はそういう気持ちがないということはまだ誰かに出会えていないからでしょう? ところが、不思議なことにドラマではまだワクワクします。「ウララ・カップル」を撮る時、ビクトリアを見ると心が動きました。

―息子さんか娘さんと一緒に撮ったCMが見たいですね(笑) とても素敵になると思います。

シン・ヒョンジュン:そうするにはもう年が……(笑) そんな日が来るかもしれませんね。

エピローグ
俳優のシン・ヒョンジュン。彼が一番好きだと言った作家ピ・チョンドゥクの「因縁」。彼の黒い車がしんしんと降る牡丹雪を抜けて消えた後、この一節を探して繰り返し読んでみた。「いくら美しい女性でも、青春の時期を過ぎれば枯れてしまう。正直言って私は、四十を越えた女性の美しい顔はまれにしか見たことがない。“円熟する”または“きれいに老いていく”という話は切ない諦めである。気の毒な意地だ。女性の美をそのまま維持する処方箋はないようだ。ただし誠実に生きてきた過去、正直な気持ち、素朴な生活、そしてまだ持っている希望、そんなものが美の退化を相当防ぐことができると思う」どんな生き方をすればいいのかをすでに知っている彼が、どんどん素敵な人になっていくことは確かだ。良い俳優、良い先生、何をしてもどんな瞬間でもいつも良い人になるのだろう。

文:コラムニスト チョン・ソクヒ

「NAVER スペシャルインタビュー」では、注目が集まっている話題の人物にコラムニストのチョン・ソクヒさんがインタビューを実施。韓国で一番ホットな人物の本音をお届けします。

記者 : チョン・ソクヒ