「シンイ-信義-」恋愛ドラマを越えるタイムスリップドラマが欲しかった

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※この記事にはドラマ「シンイ-信義-」の結末に関する内容が含まれています。
写真=SBS

「シンイ-信義-」で見たタイムスリップドラマの限界

過去の人物が現代に来るのではなく、現代の人物が過去へ“タイムスリップ”するケースなら、ドラマの結末が決まっていると言っても過言ではない。既にMBCドラマ「Dr.JIN」でも取り扱っていたように、その人物は本意かどうかとは関係なく、歴史に介入し続けることになり、知らないうちに歴史はその人物が知っている“記録された歴史”とは違う方向に流れるからである。

結局“時間旅行者”は偶然に現在へと戻れることになっている。いくら“ファンタジー時代劇”を掲げても、視聴者は既に知っている歴史を変えるドラマ的な設定を許さない。SBS「シンイ-信義-」でも数多くの危機に面しているにもかかわらず、恭愍王(コンミンワン:リュ・ドクファン)が廃位されたり、チェ・ヨン(イ・ミンホ)が死んだりすることは想像できない。

しかし「シンイ-信義-」はユ・ウンス(キム・ヒソン)を高麗時代に残した。現代に帰った彼女が自ら再び過去に戻ったのである。そのため、制作陣が強調していた“時空を超える愛”こそが、このドラマの伝えたかった主なメッセージであることは明らかになった。

確かに設定は一つあった。チェ・ヨン将軍夫人の苗字である“ユ”をウンスの苗字にして、ユ・ウンスというキャラクターを作ったのである。この場合、ユ・ウンスが高麗に残ってチェ・ヨンの妻として生きていくことが、ある程度納得いくものになる。たとえ彼女が歴史に介入してしまったとしても、ユ・ウンスとチェ・ヨンというキャラクターに視聴者が深く感情移入をしているだけに、すべてが“純愛”の名の下に許されてしまう。


「シンイ-信義-」の無念をベースに、さらに完成度の高いタイムスリップドラマが出てほしい

しかし理由がどうであれ、現代の人が過去に残ると心を決めた瞬間、そして本当にドラマの中でそうなった瞬間、そのタイムスリップドラマは“無責任”になるわけである。歴史がどうなっても構わないと思われる余地を与えることからも危険な発想である。

「シンイ-信義-」はユ・ウンスが何回も時間旅行をした末、チェ・ヨンに再会するという結末を迎えた。ハッピーエンドのための仕掛けであり、見る視点によっては“オープンエンド”と解釈できるような余地を残したのである。ドラマのテーマが“純愛”であるから、ある程度の“想像力の自由”は許してもらいたいと言うわけである。

そういえばこれまで“タイムスリップ”を題材にしたドラマの多くは、男女主人公の恋愛ストーリーが中心だった。時代的な背景を具体的に示した点も共通点である。歴史と純愛の間の綱渡りが続き、結局中途半端な結末になった。二人が幸せならすべて良しということだろうか。

かえって、恋愛にフォーカスを当てるより、ミステリーや推理劇、政治時代劇のような分野において“タイムスリップ”を活かすのはいかがだろうか。いずれにしろタイムスリップの始まりは“もしかして”である。歴史に対する仮定からスタートした物語をあえて純愛という枠の中に閉じ込め、その表現力と想像力に制限をかける必要はない。「シンイ-信義-」が残した成果と残念な結果から、さらに完成度の高いタイムスリップドラマが誕生することを期待する。

記者 : クァク・ジンソン