「ファッションキング」ユ・アイン“欲望を隠さないヨンゴルが好きだった”

OhmyStar |

※この記事にはドラマ「ファッションキング」の結末に関する内容が含まれています。
写真=Star-K Entertainment

溢れ出すファンタジーの中、それなりに地に足をつけたドラマ

「ファッションキング」のラストシーン。威容を自慢するような大きくて白い毛皮を羽織ったカン・ヨンゴルが、ニューヨークの夜景が見下ろせるペントハウスのプールに入っている。右側の画面の端から何者かが登場し、銃を取り出した。まさか、ここで死ぬのか。「ファッションキング」になるかと思った男が、誰が撃ったのかも分からない弾丸に虚しく倒れると、SNSのタイムラインの怒りは瞬間的に上昇した。誰かが言った。「ユ・アインはどう思っているのだろうか」と。

ドラマ放送終了後の度重なるインタビューでその死について何度も説明し、ときには同意を求める過程を経たはずのユ・アインは、冷静な“メンタル崩壊(ビックリして、気を失いそうなときに使う言葉)”相談専門医のように見えた。「それぞれのシーンを頭に浮かべるうちに、自ら満足した部分とそうでない部分がもう少し明確になった」と言った。

ユ・アインが「ファッションキング」のヨンゴルという人物の大きい枠について理解して満足する部分は、作品を選択するときとさほど変わらなかった。東大門(トンデムン)でさんざん苦労した男が、金と成功に向かって走って行くが、結局抜け殻だけの成功を抱いて虚しく死ぬこと。前作「トキメキ☆成均館スキャンダル」のときのような素敵な役にこだわらず、ちょっとみっともなく見える人物を演じただけでも、彼には十分に視聴者を説得する余地があった。

だが、そのフレームを満たしていく過程において、尋ねる人も俳優も、これといった答えを探せず気まずくなった。例えば、愛という感情が分からない人物だと理解したヨンゴルに、愛に似たような話が割り込んできたこと。ユ・アインも共感する指摘だったため、「ファッションキング」がより一層“駆け引き”に終始した恋愛ドラマだという非難に対しては、残念に思うしかなかった。

写真=SBS
―「ファッションキング」と言えば、人々はどうしても「製パン王キム・タック」のようなサクセスストーリーを期待しますよね。

ユ・アイン:そのような期待を裏切った部分が大きかったようです。ユ・アインという俳優が「ファッションキング」という作品をすると言ったとき、ファッショナブルな姿と派手なファッションの世界を期待したはずなのに、最初から汚い服を着て遠洋漁船に乗ったのだから。また、確かに悪役ではないけど、立派な男性主人公がまともでない言動を見せることに対しても、反発があったと思います。「ファッションキング」はそのような先入観と戦う過程でした。

もちろん、ドラマが話を緻密に構成して、着実にエンディングに向かって行く過程についてであれば、僕は特に申し上げることはありません(笑) 僕にも物足りない部分はあると思いますが、人々の期待に反して先入観を崩す過程は面白かったです。

―ニューヨークで死ぬラストシーンを最初に撮影してから、後の話を導いていくのが難しかったと思います。

ユ・アイン:一体どうやってそのエンディングに到達するのかという疑問はありました。何より、ヨンゴルに愛は必要ないと思いました。それで、感情の実体を理解できない人物に設定しました。チェ・アンナには、派手な女への憧れとそういう女が見せる隙に惹かれたとすれば、イ・ガヨンは妹みたいな存在で、憐憫を感じたと。きちんと感情をまとめてから演じました。

一番重要なことは、チョン・ジェヒョクに対する劣等感と被害妄想でした。それがヨンゴルを動かす最も大きな力だったので。東大門(トンデムン)で毎日同じ生活を繰り返していたヨンゴルが、同級生に出会ったときの刺激で金と成功を渇望することになること。それは、第2のジェヒョクになるための過程でした。

その途中で少しガヨンとのラブストーリーが登場した時、僕は逆に当惑しました。世論への意識や、変化の過程とも思いましたが、逆にそれでヨンゴルというキャラクターがそのまま崩れた感じがしたので。もともとヨンゴルは、何も知らないまま最後まで行き、手に入れたものに対して虚しさを感じ、その心の隙間を埋めるのがガヨンだったことに気付いて告白するが、死んでしまうという悲劇的な人物だったと思います。十分に表現したつもりですが、表現し足りなかった部分もありますね。

―ラブストーリーが少しだけ登場したと表現しましたが、視聴者にとって「ファッションキング」は、愛に終始した話だと思ったのではないでしょうか。

ユ・アイン:「ファッションを前面に押し出したが実は恋愛話だった」と言われましたが、ヨンゴルはまともに恋愛をしたことがありません。ファッションよりは、ビジネスに執着していました。ファッションに対する純粋さや情熱ではなく、成功に対する執着。どんな男性主人公よりも恋愛しなかったけど、恋愛ばかりだったと言われるのは残念ですね。

間違いかもしれませんが、ミニシリーズドラマ(毎週連続2日ずつ放送されるドラマ)でラブストーリー中毒になっているようです。病院でのラブストーリー。学校でのラブストーリー……(笑) あらゆることを恋愛と関連づけて考えますよね。ジェヒョクがガヨンに興味を抱き始めたとき、ヨンゴルはガヨンを手に入れなければならないと思いますが、それは所有欲であって、愛ではありません。この感情自体が難解で馴染みの薄いものですね。なので、皆がやっていることをやらないということ自体が難しいです。

―否定的な反応に対し、脚本家と話したことはありますか。

ユ・アイン:脚本家と直接コミュニケーションを取れる作品はなかなかありません。それなりに監督を通じて僕のキャラクターに対する意見を伝えましたが、限度を超えまいと気をつけました。それが難しかったです。確かに俳優としての役割があって、それを超えるとどこまでが生意気なのか。自分が言っていることは越権ではないのか。監督に一番強く話したのは、「視聴者の意見に動揺しないようにしましょう。そうすると、もっと中途半端になると思うから、覚悟した通り押し進めましょう。どうせ愛されるために作ったキャラクターではないのだから」ということでした。

視聴者の反応は受け入れるべきものもありますが、それとは関係なく、押し進めるべきものがあります。そのバランスをとるのが難しかったと思います。もちろん、視聴率が高かったらそれは別の話だったでしょう。違った角度で視聴率の巻き返しを狙ったので、逆にチャンスを逃したと思います。失敗でも、満足するほどの水準でもない視聴率10%は、視聴者たちが与えた“チャンス”だったんですね。でも、結局10%で終わりました。


ヨンゴルが虚しさに気づき、自ら死を選ぶことを願ったが……

最初にユ・アインは、ヨンゴルが自殺することを願ったと言う。金と成功に向かって走ってきたが、それが目的地ではなかったということに気づき、自ら虚しく人生の幕を下ろすという最小限の意思を持った人物であることを願ったのは、人間としての希望であった。だが、脚本家らがヨンゴルの性格について核心を突くと話した時、彼は同意するしかなかった。

ユ・アイン:「自分は何なのか、成功とは何か、金とは何か……」ヨンゴルが自ら理解することを願ったんです。なぜかというと、僕がそこにもっと近かったからです。僕も人生について懐疑的で否定的な見方を持っています。そして、ヨンゴルが抜け殻に向かって走ってきたと懐疑を抱き、死を選ぶことを願いました。脚本家との最初のミーティングのときに、「ヨンゴルは自殺した方がいい」と言ったら、「ヨンゴルは自殺する人物ではない。なんとか生きるだろう。死ぬなら、人の手で死ななきゃ」という返事が戻ってきました。ものすごく共感しました。このキャラクターとしてではなく、人としての僕の希望でしたね。

―それでは、もともと誰かに殺されるという設定はあったんですか。

ユ・アイン:もともとありました。脇役で何の理由も持たない人に殺されること。そっちの方がもっと虚しいから。人は多いが、自分の知っている人はいない華やかなパーティー会場で争いが起こって死ぬことになるというシーンが台本にはありました。

脚本家たちはとても意地悪ですね。僕はそれが好きです。例えば、ジェヒョクの母のヒャンスクが食卓で「女に引きずられるやつも、その女を連れて行ったやつも、その子たちとビジネスの話をする夫もみんな同じだ」と男を口で攻撃するシーン。もとの台詞はもっと強かったですね。“バカな奴”のように18話まで見せてきた男の稚拙さを一番正確に表現したと思います。「ファッションキング」は、意図的に稚拙さを見せるドラマだけど、それを全部説明しないから、“素敵に描きたかったが、稚拙に終わった”ようになったわけですね。

―見る人は、主人公の稚拙さよりは、最初は勢い良く見えた人物の行動が、最後には蒸発してしまったことへの反感を持ったことではないでしょうか。

ユ・アイン:それが脚本家が言いたいことだったようです。虚しいことを描く作品もありますよね。これまで希望に満ちて啓蒙的なドラマがあまりにも多かったです。だけど、現実を覗いてみたら、虚しさにより近くないですか?王子様が訪れてきて、仕事は順調で、大成功を収めるよりは、失敗して挫折したり、同じところをぐるぐる回る場合が多いですよね。「ファッションキング」の価値は、そのような話を踏襲しないよう努力したことにあると思います。ファンタジーを量産するドラマの中で、それなりに地に足をつけていたのではないか。もちろん、希望を現実的に話すことが一番良いですけど(笑)

でも、人生ってそんなに思う通りには行かないものですね。目的が手段になったり、手段が目的になったり、何が何か分からなかったり、金、金、金!となったり。僕はそんなに世俗的な欲望を隠さないヨンゴルがとても好きでした。

「ファッションキング」も『独占中継!2012 SBS演技大賞』でチェック!
2012/12/31 (月) 21:30~26:00

今年のSBS演技大賞が見れるのは女性チャンネル♪LaLa TVだけ!
CS放送 女性チャンネル♪LaLa TVで放送決定!

【LaLa TVにてキャンペーン実施中】
女性チャンネル♪LaLa TV公式Facebookでは今年韓国SBSで放送された韓国ドラマのポストカード(本国ポスターデザイン)を抽選で100名様にプレゼント!
詳しくはこちらまで ⇒ LaLa TV公式Facebook

記者 : イ・ヒョンジン