映画「蜜の味」ガラスケースの中での人形劇

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金庫の扉を開けると札束の山が目の前に広がる。その光景を前に固唾(かたず)を呑んで見ている秘書のチュ・ヨンジャク(キム・ガンウ)とは対照的に、ユン会長(ペク・ユンシク)は慣れ過ぎて飽きた顔で札束を見ている。ペク財閥のペク・グムオク(ユン・ヨジョン)と結婚して、グループのあらゆる汚い仕事をやってきたユン会長は、金のために屈辱的なこともしてきた今までの生き方を止めたい。フィリピン人のメイドのエヴァ(マウイ・テイラー)と一緒に旅立ったユン会長の代わりに、残っている汚い仕事の責任を負かされることになったヨンジャク。金と権力の味に若い肉体は少しずつ飼い慣らされていく。

【鑑賞指数】

シェイクスピアに昼ドラを組み込み、ガラスケースに入れれば…6/10点

「蜜の味 テイスト オブ マネー」(以下「蜜の味 テイスト オブ マネー」)は一般人とは大きく分離された最上流階級の人達の話だ。金の味に慣れてしまったユン会長は、自分の過去を“侮辱”の一言で定義する。妻のペク・グムオクは侮辱を与えた人で、息子のユンチョル(オン・ジュワン)は侮辱を傍観した人、娘のユン・ナミ(キム・ヒョジン)は侮辱を知らない人、チュ・ヨンジャクは侮辱を継承する人である。ヨンジャクの若くて貪欲な肉体が札束の小さな山の前でひざまずく。若さには限りがあるが誰にでも与えられたもので、官能的な肉体はある程度の努力で手に入れることができる。この若ささえ買える金とはどのようなものであるのか?「だからあなたたちは一生サラリーマンなのよ」というセリフで観客に問う。あなたたちは金の味を拒否することができるのかと。一度味わった金の甘さを拒むことができるのかと。しかしこの問いはそんなに深くも重くもない。完璧に構成された華麗なストーリーは意外にも壮大ではない。「蜜の味 テイスト オブ マネー」の登場人物達は露骨な行動を見せるが、まるで顕微鏡のレンズの中や、ガラスケースの中で演じられている人形劇のように遠く感じられる。

「蜜の味 テイスト オブ マネー」が面白く感じられる瞬間は、むしろ映画が終わってからだ。クレジットが上がる間に体を包む正体不明な気分に対して自問自答することでこの映画が平凡ではないことがわかる。イム・サンス監督の前作「ハウスメイド」との繋がり、答えが出る瞬間には納得できる一方で不愉快な気持ちになる。シェイクスピアの小説のような雰囲気から始まり、金とエロチシズムがあふれる昼のドラマのように変化するこの「蜜の味 テイスト オブ マネー」についてイム・サンス監督は「『ハウスメイド』の心の続編」と話した。しかし“「ハウスメイド」への再挑戦”がより正確な表現だろう。原作の枠にとらわれていないからこそ「蜜の味 テイスト オブ マネー」はより自由だが、それによって傲慢になった。イム・サンス監督は私たちが最上流階級の人の人生に好奇心を持っていることを知っているぐらい賢い。また観客に問い掛けるだけではなく、観客よりもその答えを先に出すぐらい気が早い。独特なドライさにユーモアが加えられて“イム・サンス映画”に距離感を感じていた人たちには多少口当たりのいい映画になるかもしれないが、もとのイム・サンス監督の歪曲した雰囲気に慣れていた人たちには少し脂っこいと感じられるかもしれない。同映画は韓国で5月17日に公開される。

記者 : キム・ヒジュ