「悪いやつら」リュ・スンワン、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミンも信じるプロデューサー

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写真=サナイピクチャーズ

「悪いやつら」ハン・ジェドクPD(プロデューサー)と交わした真面目な話

韓国スタッフに対する敬畏の気持ち、彼は確かに「敬畏」と表現していた。「いや、でも毎度ではないですよ」と人のよさそうな顔で笑う姿から、豪快な近所のお兄さんのような姿が垣間見えた。それだけ彼は、現場スタッフの苦労と実力を知っているPDだった。

「悪いやつら」(以下「悪いやつら」)のハン・ジェドクPDは、言葉通り全身でぶつかりながら映画業界で“転んだ”。映画を専攻していないにも関わらず、情熱だけで映画の世界に入った彼は、映画「オールド・ボーイ」の制作室長を経て、リュ・スンワン監督と「クライング・フィスト」「生き残るための3つの取引」で一緒に仕事をした。その間、様々な現実的問題に直面し、映画制作を休止したこともある。それでも、また戻るしかなかった場所が映画業界だった。

毎回、彼にとっては崖っぷちの挑戦だったという。映画の制作過程全般を管理するのがPDの仕事であるだけに、準備過程から編集まで、何一つ無視するわけにはいかなかった。特に最も大きな悩みは予算の問題だ。「悪いやつら」もまた“予算との戦争”だったように見えた。今回の映画の興行成績は、毎回死ぬ気でやった結果だといえる。


映画「ベルリンファイル」「新しき世界」まで…この男、ただ者ではない

今まで携わって来た映画以外にも、彼に注目しなければいけない理由は他にもある。彼が映画「ベルリンファイル」と「新しき世界」の制作までも担当していることだ。このうち、「新しき世界」はハン・ジェドクPDが直接制作総括を担当した作品だ。

いずれも超豪華キャストであった。「ベルリンファイル」はハン・ソッキュ、リュ・スンボム、ハ・ジョンウ、チョン・ジヨン、「新しき世界」は、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン、イ・ジョンジェをキャスティングしており、リュ・スンワン監督とハン・ジェドクPDが再び手を組む点にも意味がある。

映画はまだ投資部分と撮影の日程など、多くの部分で調整が必要な状況だ。普通投資や配給、撮影日程が整理されても、俳優のキャスティングが容易でない場合が一般的だが、これ見よがしに二つの作品にはトップと呼べる俳優たちが参加している。

「良いコンテンツだと思います。良いシナリオがあると、どんな難関があっても乗り越えられます。良い脚本には良い俳優が集まり、スポンサーも付きます。脚本が俳優の心を動かすということです。題材が古臭くても斬新でも、人の心を動かす脚本が一番です」

ハン・ジェドクPDは脚本の重要性をそう強調した。そしてまたひとつ、PDとしての力量が確かにあるようだった。いくら良い脚本であっても、それを作り出すスタッフも十分重要なはずだからだ。

「PDの基本は予算とスケジュールを守ることです。監督と俳優が出来るだけ効率よく撮影できるようにする必要もあります。この全てをスムーズにやることが一番です。しかし現場の環境でそれが不可能な場合もあります。監督がやりたがっていることと、環境が異なっているといけません。基本的には予算とスケジュールを守りながら、事前制作段階で合意された内容を実現するのが、PDの役割です。また、撮影しながら監督にもっと良い案を提示する役割もします。台本よりも作品が立派である必要があるからです」


拠り所がない映画界“全員が孤独”

彼の作品リストを見れば分かるように、ハン・ジェドクPDはリュ・スンワン監督と特別な縁がある。自らもリュ・スンワン監督に関しては「少なくとも計算して出会うことは無い」関係だと話した。

「『クライング・フィスト』のとき、初めて会いました。私は率直に物事を言う性格なので、制作過程で討論しながらさらに親しくなりました。その後、監督が『史上最強スパイMr.タチマワリ!~爆笑世界珍道中~』を撮り、僕は一緒に仕事をしながら友情出演もしましたが、映画はヒットしませんでした。その後、彼にはアクション映画の投資が行われなかったんです。だから『生き残るための3つの取引』のときは危機感がありました。幸い良い結果が出て、仲が悪くならずに済みました(笑)」

ハン・ジェドクPDはその後、リュ・スンワン監督と悩みを相談し合う仲になったという。そして彼は「共同体意識の無い、最近の映画界の雰囲気のせいで、みんな拠り所がない」と映画関係者の孤独さにも触れた。

そういった意味で、ハン・ジェドクPDは一緒に制作する俳優を限りなく信頼していた。逆に言えば、俳優がひとりのPDに持つ信頼感かも知れない。

「雨の日の夜、12時半でした。ファン・ジョンミンさんから、台本をありがとうと連絡がありました。そのとき、涙が出そうでした。『ついにチェ・ミンシクとファン・ジョンミンのツーショットが撮れる』と叫びました。彼らをお金では例えられません。良い作品で報いたい、それだけです。いつまた、こういう俳優たちとひとつの映画で共演できるでしょうか。『ベルリンファイル』『新しき世界』の後には、二度と出来ないことだと思います。だから中途半端には出来ません」

共に制作する俳優のことを考えると眠れなくなるらしい。韓国の映画史に残る作品を作るという覚悟を表していた彼だった。俳優チェ・ミンシクとは4度目の映画だという。これに加え、ファン・ジョンミンとハ・ジョンウの魅力を言及していた彼から、俳優とPDの関係以上の絆が感じられた。

絆であり、信頼だった。リュ・スンボムが、映画関係者に初めて贈るプレゼントだと言いながらくれたというイタリアで買ったスーツとセーターを、今でも大事に持っていると自慢していた。プレゼントではなく、信頼されたことが嬉しかったと。

ハン・ジェドクPDは「映画関係者がお金を中心に機会を待つしかない状況を変えるために悩んでいる」とインタビューの最後で話した。自ら主流じゃないと言いながらも、お金ではない作品、そして信頼で認められたいと言った。それが自分の道だとしながら。

「後ろ姿のカッコイイ人でしょうかね。お爺さんになっても、PDとして認められる人でありたいです。韓国で制作PDとして尊敬されている人が果たして何人いるでしょうか。作品で見本になる人になりたいです。作品を見ると、どういう人なのかがわかる、そういうことです。誇れる映画を作っていきたいと考えています」

「サナイピクチャーズ」。彼が代表を務める会社の名前だ。サナイ(韓国語で男という意味)という単語の意味のように、真っ直ぐな良い作品を作っていくハン・ジェドクPDの今後に期待してみよう。

記者 : イ・ソンピル