ハ・ジョンウがおすすめする「僕が愛する俳優の映画」

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ハ・ジョンウは憐憫の目を持っている。彼をカンヌ映画祭のレッドカーペットに導いた「許されざるもの」の晩年兵長テジョンが後任の人物を殴打する時にも、人間の肝を食べる「九尾狐家族」の九尾狐である時も、その憐憫の目は鮮やかだった。そのうえ夜道で会うと恐ろしい「チェイサー」のサイコパスを演じた時でさえも彼はその目を持っていた。血まみれになって恐怖に震えていた女を見つめる殺人鬼の空っぽな目には、自分がなぜ殺人を犯しているのか分からない不憫な混乱が含まれていた。ハ・ジョンウが明確な善悪を基準にし、悪の方向に向かって一足前に出た人物を演じた時も、観客は彼のために弁解する言葉を探している。図々しく女たちに金を借りる「素晴らしい一日」のビョンウンや、彼女から騙し取ったお金で免税店の靴を買う「ビースティ・ボーイズ」のホストは言うまでもない。

なぜならそれは、大学で演技を専攻し、長い時間演劇の舞台にはいたものの、学術的で定型化された演技がハ・ジョンウにはないからだ。「芝居をする時は不安に思われるようで、舞台演技には向いてないとよく指摘されました。だけどある瞬間から僕の長所、観客の反応、『あ、僕がこんな役をした時は、感情移入が上手くできたな』というふうに、自分に出来ることを悩みはじめました。そうしてみると、8年ほど演劇をしたけど良くない演技方や癖がつかなかったみたいです」こんな時はこんな目つき、こんな時は左側の目から涙が一粒ずつ落ちるという計算された演技ではない、殺人魔である時さえもハ・ジョンウにならざるを得ない憎めない俳優。そんな彼が愛する俳優たちの映画について語った。“食傷気味である映画や既に他の人が話した映画は避けて”選んだ名俳優の決定的な瞬間がここにある。

1. 「フェイク」(Donnie Brasco)
1997年/マイク・ニューウェル


「アル・パチーノは素晴らしくて、ジョニー・デップも本当に凄かったんです。ジョニー・デップは作品を選ぶ時、自分の信念が明確なようです。『チャーリーとチョコレート工場』のような映画で壊れた演技を見せたり、『フェイク』のドニー・ブラスコのようなシリアスな役にも強くて。そしてそんな彼の本来の姿は『ショコラ』にもよく現れています。自由奔放に住んでいるジプシーとして登場していて、自由で信念が明確なジョニー・デップそのものでした」

マフィア組織の中間組織員であるレフティ(アル・パチーノ)と、おとり捜査中であるFBI要員ドニー(ジョニー・デップ)は、偶然のきっかけで親子のように過ごすことになる。二人は共に車を修理して、クリスマスには夕食を食べて“自分の命を担保とする”殺伐な現場では似合わない友情という感情を抱くが、そこから全ての悲劇が始まる。街では誰よりも強いふりをするが、家の中ではジャージを着て動物のドキュメンタリーを見るレフティは、明らかに犯罪者だが哀れな気持ちにさせる。

2. 「めぐり逢い」(Love Affair)
1994年/グレン・ゴードン・キャロン


「ウォーレン・ベイティとアネット・ベニングが幻想的なアンサンブルを見せてくれました。非常によく作られた映画です。ウォーレン・ベイティが浮気者の役を節制力ある演技で品よく演じたことが印象的でした。二人のラブストーリーが始まりながら、一人の女性だけを見つめる純愛のエネルギーが発散されていました。本当に凄い!元々ラブストーリーが好きだったんですが、ウォーレン・ベイティはどんな役を演じても可愛くて、またそう思わせる力を持っています」

1939年、1957年に続き三番目のリメイクにも関わらず、エンニオ・モリコーネの甘美な音楽と二人の俳優の完璧な呼吸で「めぐり逢い」の中でも指折りの秀作として知られている。すでにパートナーがいるマイク(ウォーレン・ベイティ)とテリー(アネット・ベニング)は、飛行機の不時着という特殊な状況で運命的な愛に陥る。飛行機と旅客船、タヒチ島というロマンチックな空間で繰り広げられる二人の愛は、単純な恋愛以上の感動で最後まで目がしらを熱くする。夫婦になった二人の俳優以外にも、マイクの叔母でキャサリン・ヘプバーンとまだ少しぎこちなさが残っていた時期のピアース・ブロスナンなど有名な俳優を探してみる楽しさもある。

3. 「10日間で男を上手にフル方法」(How To Lose A Guy In 10 Days)
2003年/ドナルド・ペトリ


「マシュー・マコノヒーが本当に可愛いくカッコよく登場します。もちろんケイト・ハドソンも魅力的です。二人の化学作用が見る人までも気持ち良くさせます。結末までいく映画のテンポも軽快だったし、小さいエピソードも全部可愛くて愛らしかったです。商業映画なのに消費される感じよりも長く余韻が残りました。見たら気持ち良くなる映画です」

10日間で男にフラれる方法に対する記事を書かなければならないアンディ(ケイト・ハドソン)と10日間で女が自分のことを好きになるようにするベン(マシュー・マコノヒー)の愉快な恋の駆け引き。映画館で大声を出すこと、恋人が作った料理に目を向けないこと、恋人が友達に会うところに予告なしで登場して騒ぎ立てるなど、いくら変なことをしても愛らしいケイト・ハドソンの大笑いがカリフォルニアの日差しのように爽やかだ。

4. 「シモーヌ」(Simone、S1m0ne)
2002年/アンドリュー・ニコル


「アル・パチーノの60歳近い年齢から出る雰囲気が孤独な監督とよく一致していました。ロバート・デ・ニーロのような場合は、50~60代の時には気軽で軽快な作品をたくさん選んでいましたが、アル・パチーノは若かった時の真剣な感情や雰囲気を依然として大切に保管しています。『シモーヌ』ではそれがよく表現されていました。アル・パチーノといえば『ゴッドファーザー』『スカーフェイス』『カリートの道』のような映画を思い出しますが、あまりにもたくさん紹介されて食傷気味だと思います。かえって『シモーヌ』のような映画でも素晴らしかったことを広く知らせたいです(笑)」

名前だけ見ても監督らしい悲運の監督ヴィクター・タランスキー(アル・パチーノ)は、ひどい制作会社と自分勝手な女優のために一日も気持ちの安らぐ日がない。自分の芸術世界を実現することにおいて俳優はただの付属品であると考えているヴィクターは、ファンから受け取ったプログラムでバーチャル女優シモーヌを作る。彼女を主演にした映画でシモーヌは爆発的な人気を得ることになるが、シモーヌの人気と自身の映画に対する人々の関心が反比例することになり、ヴィクターは彷徨するようになる。

5. 「チャーリー」(Chaplin)
1992年/リチャード・アッテンボロー


「『チャーリー』は私の人生で5本の指に入る映画です。元々チャップリンがとても好きなんです。幼い頃に見たチャップリンの映画で俳優になろうと決心をしたくらいですから。特にロバート・ダウニージュニアはチャップリンのスラップスティック・コメディはもちろん、苦悩に充ちたチャップリンの人間的な姿までも完璧に演じていました。本当に彼でない他の人がその役を演じるなんて、想像もできないほどでした。チャップリンを見ると同時にロバート・ダウニージュニアという俳優も見ることができる映画です」

一時は薬物中毒で今のリンジー・ローハンに負けないくらいリハビリセンターを行き来したロバート・ダウニージュニアを演技力で再び認めることができた作品。70代老人になったチャールズ・チャップリンが自身の人生経歴を振り返りながら物語は始まる。彼の愛と第2次世界大戦、コメディ俳優であり監督としての創作活動などを、チャップリンで生まれ変わったロバート・ダウニージュニアが全て演じている。彼はこの映画で1993年アカデミー主演俳優賞にノミネートされた。

「ティファニーで朝食を」はイ・ユンギ監督の前作とは違う新たな作品

「『国家代表!?』のホンテは養子なので、みんなが知らないトラウマと壁があります。特に韓国に来ても、アメリカ人でもなく韓国人でもない中途半端な立場でもっと酷くなります。傷つかないようにかえって自分で壁を作っていましたが、他のスキージャンプの選手たちに出会いながらその壁が崩れることになります。自分が韓国人で、ついに韓国を代表する国家代表になったことも悟るようになります」

10ヶ月間スキージャンプの練習に取り組んだハ・ジョンウは最近「国家代表!?」の出演者として観客に会った。しかし勤勉な“多作俳優”らしく、現在は今年の冬に公開予定の「ティファニーで朝食を」の撮影真っ最中でもある。在日韓国人をモデルとしたハウォンのために「この人物は銀行員として働いたことがあるので、モデルになった時の変わった感じと日本特有のスタイルを生かすために研究中」だというハ・ジョンウは「まだ撮影序盤ではあるけど、イ・ユンギ監督の前作とは一味違う新たな作品で、人物が描かれると思います」という期待を表わした。いつも休むことなく次の作品、その次作品と前へ進むハ・ジョンウの冬はすでに始まっていた。

記者 : イ・ジヘ、翻訳 : チェ・ユンジョン