ナ・ヒギョン、ブラジルと「アリラン」を結びつけた“韓国音楽をブラジルに広めたい”

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ナ・ヒギョンは5年間、ボサノバの国ブラジルで現地の音楽家たちとコラボしてきた女性シンガーソングライターだ。9月中旬に韓国で発売された3rdフルアルバム「Flowing」では、ブラジル大衆音楽の巨匠イヴァン・リンス(Ivan Lins)がデュエットで参加して話題を集めている。

ボサノバを含むブラジル音楽に対する情熱と愛を自分のものにするために、人の助けを借りることなく1人でブラジルに渡り、今まで3枚のフルアルバムと1枚のEP、デジタルシングルなどを発表して貴重な結果を生み出したナ・ヒギョン。今は韓国の音楽をブラジル現地のミュージシャンや人々に知らせている彼女に会った。

―どれくらいの作業期間で3rdフルアルバムを完成させたのか?

ナ・ヒギョン:構想は2ndアルバム発売後からしていた。今回のアルバムのために集中したのは今春だったし、ブラジルに行ってからは体と心が動くままにレコーディング作業に専念して、幸い秋に発売できることになった。

―以前のアルバムと比べて、どんな音楽的変化があるのか?

ナ・ヒギョン:“ナチュラルさ”を音楽で表現したのが前作と一番違う点だ。最初にブラジルに向かう飛行機に乗った時は、「ボサノバとその音楽のルーツを知って、それらをアルバムで表現しよう」という私なりの青写真を描いていた。

そういった面で以前のアルバムは自分の音楽のナチュラルさを完成していく段階にあったと思う。1stフルアルバムではボサノバの名曲、EPでは韓国の歌謡曲をそれぞれ再解釈する作業を行った。2rdアルバムではブラジルで学んだことを自分が作った様々な雰囲気の曲と結びつけてみようとした。

今回のアルバム作業のためにブラジルに向かい、何かの目的を持つのではなく、率直で自然に音楽を作ってみようと思った。その通りになったと思う。そういう意味で「Flowing」というアルバムタイトルをつけた。

―韓国語、英語、ポルトガル語、イタリア語で歌っているが、一連のコンセプトはあるのか?

ナ・ヒギョン:韓国語で歌った2曲の創作曲と「アリラン」など計10曲が収録されたが、言語的な部分は考慮していない。今の時点でナ・ヒギョンというミュージシャンが“やりたかった音楽”そして“得意な音楽”を選曲して完成させていった。そのためか、様々なスタイルの歌を収録できたと思う(笑)

―ブラジルの大衆音楽といえば思い出す大御所イヴァン・リンス(Ivan Lins)が作った曲2曲を共に歌ってアルバムに収録した。どのようにして行われたのか?

ナ・ヒギョン:最初にブラジルに行った時、“ボサノバの第1世代アーティスト”であるホベルト・メネスカル(Roberto Menescal)と作業をしたが、イヴァン・リンスともぜひ曲の作業をしたいと話したし、その方がご自分でメールで推薦してくださって縁が始まった。その後、メールで音楽を含む様々な話を交わし、直接お会いする機会も得て、ついに今回のアルバムにその方の曲をデュエットで発売することができた。本当に感謝している。

―今回のアルバムのタイトル曲「Acaso(偶然)」について紹介してほしい。

ナ・ヒギョン:イヴァン・リンスと共に歌った曲だ。元々他の曲を歌いたかったけれど、音色を聴いてみたイヴァン・リンスがこの曲を歌ったみたらどうかと意見をくださった。練習を重ねてレコーディングを続けながら「やっぱり巨匠の判断ってすごい!」と思った。愛着が持てる曲だ。

―ブラジルの巨匠音楽家との作業でどんなことを感じたか?

ナ・ヒギョン:いつもワクワクした気持ちで臨み、恍惚感がするほどだ(笑) レコーディングする過程だけではなく、音楽に対する心構え、音楽家として生きてきたその方々の話を聞いて、交流しながら多くのことを学んだ。尊敬している方々だ。

―ブラジルの音楽家たちとの曲作業と公演を準備しながら、何か特別な点はあったか?

ナ・ヒギョン:レコーディングの過程でミュージシャンたちが自身の意見を自由に話しながら作業する方法は、韓国と大きく異なる部分だ。文化的な違いだが、“みんなが同じ立場だ”という考えで曲とアルバム作業に参加するブラジル音楽家たちとの作業は、時には想像を超える作品が誕生した。音楽プロデューサーの意見が優先される韓国のそれとは大きな差がある。もちろん一長一短がある。それぞれの長所を上手く結びつけることが一番重要だ。

―「Arirang with Brazilian Sound」というタイトルで「アリラン」を再解釈して収録した。

ナ・ヒギョン:「アリラン」をブラジル本来のサウンドと結びつけて再解釈した曲を収録することについて悩んだ。正直プレッシャーも大きかった。韓国で作業していたなら、おそらく収録しなかったと思う。5年間ブラジルを行き来してブラジルの人々皆が一緒に歌える「The Girl From Ipanema」と韓国の「アリラン」を結びつけて歌ったが、どの曲よりも反応が熱かった。

最初はブラジルの聴衆たちの前で、数回の公演ステージでこの曲をお聴かせしたが、その後すべての公演で「アリラン」を欠かさず歌った。何より韓国の文化を韓国の音楽で知らせる上で少し役に立てたと思い、嬉しかった。

その後ブラジルのミュージシャンたちから「アリラン」を一緒にレコーディングしてみようという提案を受け、楽譜なしに即興で、ブラジルの伝統楽器の演奏で「Arirang with Brazilian Sound」という曲を完成させた。

―この曲を韓国でも演奏する計画はあるか?

ナ・ヒギョン:レコーディングされた原曲を再現するのは難しいと思う。様々なブラジルの民族楽器を曲から聴くことができるが、楽器を確保して演奏するミュージシャンを韓国で手配するのが現実的に容易ではない。幸い、ブラジルの伝統楽器であるビリンバウを演奏する方が韓国にいる。「アリラン」をアレンジして今月31日に開催されるコンサートステージで観客たちに聴かせることができるかについて検討している。

―「Dear」と「Floating」という自作曲も収録された。

ナ・ヒギョン:2ndフルアルバムを発売してから構想していた曲で、去年と今年、低迷している韓国の文化界の現実の中でたくさん悩みながら過ごした結果だ。収録曲の中で「You Are The Sunshine Of My Life」はアバンガードな雰囲気で自由を表現したかった。レゲエとボサノバを結びつけたアレンジで、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の原曲と小野リサのカバー曲とは全く異なる雰囲気のものになると思う。

―音楽に関連して、これから目指したいことがあるとしたら?

ナ・ヒギョン:想像するだけでも幸せだ(笑) アイデアもたくさんあるし、やりたいこともさらに増えた。ナ・ヒギョンといえば思い出すボサノバとブラジル音楽に、新しく様々な音楽ジャンルと要素をいかに結び付けてどんな方向性にするか考えながら実行しようかと思っている。

韓国語歌詞の曲を今より多く作りたい。多くのミュージシャンたちも共感することだと思うが、韓国人シンガーソングライターとして当然やるべき宿命だと思う。

最後に、今月最終日、弘大(ホンデ)の公演会場で開催されるコンサートのタイトルが“流れ”という意味を持つ「Flow」だ。心理学用語では“のめり込む”という意味があるが、観客に一番完成度の高いライブステージを披露したくて一生懸命準備している。たくさんの方に来ていただいて一緒に楽しんでもらいたい(笑)

記者 : イ・ジョンソン