「さまよう刃」上映禁止仮処分申請から見る過去の事例“映画と現実の境界とは?”

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映画と現実の境界は一体どこなのか?

チョンソル学院による映画「さまよう刃」(監督:イ・ジョンホ)の上映禁止仮処分申請がなされる中、これに先立ち、上映禁止仮処分が申請された映画について関心が集まっている。封切りを間近に控えた映画や上映中の映画に対して、予測できなかった理由で上映禁止の仮処分が申請されることは昨日今日のことではない。

予備校であるチョンソル学院は今月10日に封切りされた「さまよう刃」に対して、事前の了承もないまま無断で学院の名前を使用され、学院のイメージを失墜させたという理由で上映禁止仮処分申請を申し立てた。映画の中で仮想の学院が登場するが、その名前がチョンソル学院だったのだ。劇中でチョンソル学院は未成年者の売春を斡旋し、殺人犯を隠蔽する場所として描かれており、学院の関係者側は映画がチョンソル学院に及ぼす否定的な影響について懸念を表明した。

表現の自由?

昨年、映画「天安艦プロジェクト」に対して、天安艦沈没事件当時の海軍将校と犠牲者の遺族など5人が上映禁止仮処分申請を申し立てる訴訟を起こしているが、裁判所は「映画の製作、上映は原則的に表現の自由が憲法上保障される」とし、「映画が内包している広いテーマや背景となる社会的流れも考慮しなければならない」として棄却判決が下され、映画を計画通りに封切りすることができた。

2011年には韓国の人権団体「男性連帯」がキム・ハヌルとチャン・グンソク主演の映画「君はペット」に対して上映禁止仮処分申請を申し立てた。「男性連帯」は当時、「女性が“ご主人さま”で、男性が“犬”として登場するラブコメ映画としているが、もしペットの役割を女性が演じてもラブコメ映画になるだろうか。面白さのために誰かの人格が冒とくされてはいけない」と主張した。

盗作なのでは?

2010年、映画「依頼人」(監督:ソン・ヨンソン)は盗作の疑いで上映禁止仮処分申請の訴訟に巻き込まれた。同年9月に出版社イメージボックスは「『依頼人』が2006年に出版したアラン・ダーショウィッツ(Alan M. Dershowitz)の『THE BEST DEFENSE』を盗作し、検事と弁護士が戦う法廷シーンで本をモチーフにし、最終弁論に登場するセリフが本の中の内容と同様である」と主張した。

一方、2008年度の映画「クロッシング」では、よく似たテーマの映画を準備している他の映画製作陣が上映禁止仮処分申請をしたが、裁判所はこれに対し「映画のストーリーは著作権を保護する対象になる創作的な表現様式というより、人々に属するアイディアである」として棄却した。

名誉毀損?

“イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件”を描いた映画「あいつの声」(2007)に対しては、イ・ヒョンホ君を育て、イ・ヒョンホ君の父親と事実婚関係にあった女性が、自身の人権とプライバシーが侵害されたと主張し、映画の上映禁止仮処分申請を提出したこともある。

この他にもイム・サンス監督の「ユゴ 大統領有故」は、パク・チョンヒ元大統領の息子のパク・ジファン氏が上映禁止仮処分申請をして3つのシーンが削除される判決を受けた。韓国映画史上初めて1000万人以上の観客を動員した「シルミド/SILMIDO」は、事件の遺族が犠牲者や遺族の名誉が毀損されたという理由で上映禁止仮処分申請を行った。

記者 : チェ・ホラ、写真 : 映画ポスター