「ハナ~奇跡の46日間~」ペ・ドゥナ、北朝鮮への関心の理由“首領様を思うのは危険だと叱られた”

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思ったより易しかった北朝鮮訛り……実は!

久しぶりという言葉が似合わないほど、ペ・ドゥナはインタビューに慣れていた。語る姿にも、持ち前の大きな目にも、エネルギーが満ちていた。映画「ハナ~奇跡の46日間~」で強い北朝鮮訛りの台詞を投げていたリ・ブンヒは姿を消し、依然として好奇心いっぱいの女優ペ・ドゥナに戻っていた。

「『空気人形』から数えると2年ぶりですが、韓国の映画としては本当に久しぶりです。韓国映画が落ち着く面はあります。実家のような感じもありますし。自分の言葉で演技するわけですし。あっ!北朝鮮訛りは自分の言葉じゃありませんよね。周りからは、『この前は日本語で演技して、英語でもやったのに、今度は北朝鮮訛りか。韓国語はいつやるの?』と冷やかされてるんです(笑)」

1991年の感動、千葉で行われた第41回世界卓球選手権大会に出場した統一コリアチームの活躍をそのまま伝えるためには、韓国のハ・ジウォン(ヒョン・ジョンファ)と一緒に、ペ・ドゥナ側の一軸もしっかりしていなければならなかった。過剰せず不足しない、バランスを取るキャラクターの中心が、彼女にも求められていたのだ。

その話をきっかけに、ペ・ドゥナ自身の北朝鮮人の演技について聞いてみた。普通の北朝鮮人でもなく、1991年当時北朝鮮トップの卓球選手、リ・ブンヒなのだ。北朝鮮訛りはもちろんのこと、一切会うこともできず、情報も足りない人物を演技するペ・ドゥナはどんな気持ちだったのだろうか。この土地のどこかで一緒に暮らしてはいるが、絶対近付けない人のことだ。

「漠然じゃなかったかって?その反対でした。本当に、私の役の方が楽だったんです。言ってしまうと、これまで私が演じたキャラクターたちの方が、もっと分かりにくい役柄でした。リ・ブンヒが取り留めのない役だとしたら『空気人形』ののぞみはどうなりますか。『復讐者に憐れみを』のユンミもそうですし『子猫をお願い』のテヒもファンタジー的な役割です。リ・ブンヒになり切って、彼女が感じた通りやったら難しくありませんでした。それどころか、もっと自由でした。いつも簡単だったわけではありません。もちろん、ハマれなくて時には戸惑ったりもしました。そういう時は、本当に30分だけでもいいからリ・ブンヒ選手を連れてきて、聞いてみたかったです。『私、あなたのことうまくやっていますか。今やっているのが正解ですか』とね」


結構なレベル、それ以上の実力は卓球より北朝鮮訛り?

映画「ハナ~奇跡の46日間~」のVIP試写会に行ってきた知人たちは、ペ・ドゥナの北朝鮮人の演技を絶賛していた。最初の統一コリアチームという状況も、ヒョン・ジョンファを始めとする実存人物のことを表現することも重要なことだったが、ペ・ドゥナには明らかに、北朝鮮の卓球選手をどれほどの説得力を持って表現するかが最大のポイントなっていたはずだ。

「友達は、映画を見て自分たちが今北朝鮮にいるかと思ったそうです(笑) 演技する時、自分が自分のことを信じないと、結果があまりよく出てこないんです。自分を信じて、自分の耳を信じてハマってやりました。私、結構上手くやってませんか? 映画の中で、スンボク(ハン・イェリ)の訛りはまた違うんです。そちらは咸鏡道(ハムギョンド)なので少し強くて、私の方は平壤(ピョンヤン)なので、それなりに落ち着いているんです(笑)」

ペ・ドゥナは「ハナ~奇跡の46日間~」で、不自然さの全くない北朝鮮語の演技を披露した。言葉通り、クールな平壤の女性の役割を充実に果たしているのだ。

「日本語よりは易しかったです。言語的なトレーニングで鍛えているからでしょうね。私、釜山(プサン)訛りを使うドラマもやりましたし、日本語でも演技してますから。経験してみると、強迫観念が強すぎると上手くいかないことが分かりました。私に北朝鮮語を教えてくれた先生も、ただ闇雲に単語を覚えさせるのではなく、互いに会話を交わして聞かせてくれる方でした。先生の話では、私の口調には北朝鮮語の特徴がすでにあるそうです。練習しながらそれがどういう意味か分かるような気がしました。発音だけ少し変えれば、北朝鮮語になりました」


「“首領様”のことを思うと言ったことで、兄に叱られた」

最近ペ・ドゥナは、映画のマスコミ試写会の後、自分の発言のせいで家族から叱られたそうだ。CM監督として活動している彼女の兄に叱られたというが、その理由が「正直に言うと、首領様(キム・イルソン主席の北朝鮮での呼称)のことも思った」という言葉だった。これは16日行われたマスコミ試写会で出た、北朝鮮選手を演技することへの質問に対する答えだった。

「『ハナ~奇跡の46日間~』を撮りながら、意識的に首領様を思ったという言葉に、兄から危険極まりないと叱られました。それくらい北朝鮮の人になり切ろうとしたという象徴的な言葉であって、思想も理念も何も分からないのに…… どうしても、映画で北朝鮮の人を演じるから視線が異なってしまいますよね。個人的にはそう思います。私たちが持つ北朝鮮人への視線も、歪曲されているかもしれませんし」

2012年を生きるこの時点でも、依然として北朝鮮に対する発言が後ろ指をさされる対象になり得る現実に、本当に厳しい社会だという思いがしてもよさそうだった。しかしペ・ドゥナは、個人的には分断の現実が残念という立場だった。

「母側の祖父と祖母が開城(ケソン)の人です。幼い頃から、漠然と北朝鮮に関心がありました。どうしてかは分からないのですが、母がしばしば『あんたのばあちゃんが、開城で有名なあずき粥屋だった』と言っていました。あっ!それでなんですね。私に北朝鮮の口調があると言ったじゃないですか。ああ、あり得るな(笑) 全く不慣れというわけではありません。母がまだ北朝鮮式のおかずを作ったりしますから。キムチチゲも、うちのは赤いスープじゃなくて透明です。今になっては、韓国がこのように南北に分かれていることが、理解できません」

記者 : イ・ソンピル