ヨム・ヘラン、Netflix「マスクガール」でアン・ジェホンの母親役を演じる“会えた時はすごく嬉しかった”【ネタバレあり】

OSEN |

※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
写真=Netflix
わずか10歳年下であるアン・ジェホンの母親役を完璧にこなした。本当の年齢を計り知ることのできない仮面をかぶって、エネルギッシュな演技で圧倒する。どんな作品に出演しても強い存在感を見せる女優、ヨム・ヘランに会った。

最近、ソウル市鍾路(チョンノ)区三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで、ヨム・ヘランのインタビューを行った。彼女は韓国の取材陣と会ってNetflixオリジナルドラマ「マスクガール」について話を交わした。同作は、容姿にコンプレックスを持つ平凡な会社員のキム・モミが、毎晩マスクで顔を隠してライブ配信者(BJ)として活動しながら、思いがけない事件に巻き込まれていくストーリーを描いた。同名のウェブ漫画を原作とし、キム・モミの波乱万丈な一代記を描いたNetflixシリーズとして再誕生した。

劇中でヨム・ヘランは、マスクガールのキム・モミ(イ・ハンビョル、ナナ(AFTERSCHOOL)、コ・ヒョンジョン)に片思いする男チュ・オナム(アン・ジェホン)の母親キム・ギョンジャ役を演じた。チュ・オナムとキム・モミは劇的なストーリーで絡むだけに、キム・ギョンジャはドラマの後半で特に強い印象を残した。先立ってNetflix「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」でカン・ヒョンナム役を演じ、話題を集めたヨム・ヘランが、再びNetflixシリーズで韓国だけでなく世界中のファンに愛された。

ヨム・ヘランは「公開される前、ウェブ漫画として有名な作品だったので、既存のファンの方々はどのように見るだろうかと気になっていました。あまりにも破格的な物語なので心配もしましたが、すごく楽しんでくださったようで本当に嬉しいです」と笑った。特に彼女は“ヨム・ヘランの演技気合術ショー”という反応まで出ていることに対して、「最初はとても気分が良かったです。その後、どのような意味だろうかと思うようになりました。以前、気合術に関する演劇をしたことがありますが、気合術は気楽に見られるジャンルではないじゃないですか。見るだけでも大変なジャンルなので、絶賛だけではないと思いました」と打ち明けた。

実際に「マスクガール」の公開直後には、「キム・ギョンジャが本当の主人公だ」という反応があるほど、ヨム・ヘランの印象は強烈だった。これに対して彼女は「そのような評価には少し戸惑います。モミ役をイ・ハンビョルさん、ナナさん、コ・ヒョンジョンさんの3人が分けて演技しただけで、私が主人公ではありません。私も台本を見て、モミが心の中に大きく響いたんです。私はそういった評価が完全な褒め言葉ではないと思っています。とてもありがたい言葉ではありますが、分量のせいだと思います。一人の人物がシリーズをリードしていたからだと思います」と話した。

熱演で好評を得たヨム・ヘランは、「実は最初、『アン・ジェホンさんの母親だなんてひどいんじゃない?』と思ったんです」と冗談を言った。1976年生まれのヨム・ヘランと1986年生まれのアン・ジェホンはわずか10歳差だ。ところが彼女は「それでもずっと私の息子だと思い込んでいると、アン・ジェホンさんと会った時、とても嬉しかったんです。そして母親と息子なのに、劇中で会うシーンが2回だけしかありません。撮影では3、4回しかなかったんです。別々の場所で演技をしていましたが、会えた時はとても嬉しかったです」と笑った。

ヨム・ヘランは謙遜したが、「マスクガール」でのキム・ギョンジャは、容易ではないキャラクターだった。特殊メイクもこなさなければならず、老人の体で銃を撃つアクションもこなさなければならなかった。この過程でヨム・ヘランは、息子の死体を抱いて嗚咽するなど、急激な感情の変化を完璧に演じた。また、2時間にわたる特殊メイクに耐え、水に対する恐怖症に耐えながら約12時間にわたる水中での撮影までこなした。キックボクシングを学んで臨場感溢れるアクションを披露したのも、ヨム・ヘランがキム・ギョンジャのディテールを生かすために努力した部分だった。

特に、キム・ギョンジャは偏狭の度合いが極限に達したキャラクターだ。キム・モミからチュ・オナム、キム・ギョンジャなど様々な人物たちが、ギリギリのところで“程度の差”を見せながら、共感と批判の境界を行き来する。これと関連してヨム・ヘランは「(キム・ギョンジャが)非難されるだけの人物なら、選択は難しかっでしょう。そのため重点を置いたのが、共感されながらも同時に批判を受けなければならないというところでした。今まで生きてきた人生や息子があのように無残に死んだら十分共感されるでしょう。これと共に、当然批判も受けなければならないと思いました」と明かした。

彼女は「そのため監督と最も意見が分かれたのは3話でした。2話までは納得していたのですが、3話では罪もない魂をそのようにするのは正しいのだろうかと思いました。キム・ミモ(キム・モミの娘、シン・イェソ)と撮影するシーンで『これでいいのでしょうか』と言いました。私が泣きすぎたので、監督が切り取ってあまり泣かないシーンに編集したんです。ミモの言うことが、息子から聞きたかった言葉でした。本当に聞きたかった人からは聞けないですし、ミモに言われているじゃないですか。それで悩んだんです。もしそこで全く悩まなければ、キム・ギョンジャを見るのも嫌だろうと思いました。そういった葛藤が本当に重要でした」と打ち明けた。

続けて「終盤に向かうほど、私の復讐の銃口がモミにだけ向かっている時には、『共感するだろう』と思っていましたが、罪のない人に向かっている時は、見るのも辛かったです。ところが、それがこのジャンル物の魅力でもありました。すべての人物が共感しようとすれば、『そこまで行くの?』と思いました。キム・ギョンジャもそうでした。『お母さんが嫌いだけど、あのような部分もあるでしょう』『あそこまではひどいでしょう』と思うようになりました。それがこの作品の持つ魅力でした。この魅力をうまく生かさなければならないと考えました。そのため殺すシーンも見せるかどうかというところでしたが、最終的には偶発的な傷害を負わせて、殺すシーンまでは直接的に見せないことになりました」と説明した。

そのためヨム・ヘランは、キム・ギョンジャがミモが孫娘だという事実を知っているのはどうかと提案したりもした。採用はされなかったが、キム・ギョンジャに対する共感の幅を広げるため、ヨム・ヘランも可能性の幅を広げたわけだ。さらに彼女は「これほどに複雑な物語がどんなエンディングを迎えるのか、本当に気になりました。子供の頃のモミが『愛されたいです』と話していますし、結局『マスクガール』は愛に関する物語だと思いました。お互いをありのままに見る愛だったら、このような悲劇はなかったのに……。モミもありのままを認められればよかったのにと思いました。そのため最後のシーンが与える響きも大きかったです」と強調した。

年齢が分からないマスクの持ち主であり、ディテールを生かす女優。そんなヨム・ヘランは最近出演した作品で相次いで熱い関心を集めている。「悪霊狩猟団:カウンターズ」シーズン1、2はもちろん「ザ・グローリー」と「マスクガール」まで。全てにおいて好評を得て、“信じて見る女優”として愛されている。ヨム・ヘランの全盛期と言ってもいいのだろうか。彼女は「私は長く活動したいので、全盛期だと断言はしたくありません」と笑った後、「歳月が過ぎて考えてみれば“全盛期”の意味が変わるのではないかと思います。全盛期の意味を異なる観点から見ることもできると思います。ある時は視聴率と関係なく、本当に私にとって大きな挑戦であれば、その作品に出会ったのが全盛期かもしれませんので、意味が時代ごとに変わるのではないかと思います。今が本当にいい時期だと思います」と淡々と語った。

「作品を選ぶ目が厳しくなって心配」と冗談を言いながら、「とても良い作品に出会って、目が高くなった部分はあります。私が頑張っても、視聴率がよくない作品もあるでしょう。真心を込めてやったけれど、結果が出ない時も堂々としていたいと思っています。意味だけで十分満足できる女優になりたいと思います。そのような時期は避けられないでしょう。話題作はありがたいけれど、これからそうじゃなくても意味のある演技ができたらいいなと思います」と語った。

ヨム・ヘランは作品を選ぶ基準について、「その時その時(異なる)の決定をしたと思います。それでも私の心を動かしたものが何かと考えれば、“メッセージ”でした。どのような話をしたいのか、私たちに伝えたいことは何だろうかと考えました。そのようなメッセージがあるものを好みました」と打ち明けた。続けて「マスクガール」に対して彼女は「最初、この作品は私がすごく好きな系統の作品というわけではありませんでした。私は強靭に見えるかもしれませんが、このようなジャンル物は本当に見れないんです。血が流れて、人が死んでいく姿を見れません。私はそれが小道具であることを知っていても、距離を置かなければならないですし、見れないんです。この作品は私には強すぎました。最初から好きになる作品だとは思いませんでした。しかし、それを相殺してくれて、ジャンル的な面白さを感じさせてくれた方が監督でした。ジャンルの中で現実と距離感があってジャンル的な面白さを与えてくれました。その物語を作ったのは監督でした。それを本当にうまくやってくださいました。もちろん、すべてのスタッフが一緒に作ってくださった作品です。私にジャンル的な面白さはこういうものだと教えてくれました。そういった楽しさを知っている方々を理解できるようになりました」と話した。

さらに、「以前は見れない作品が本当に多かったのですが、そういった楽しさのために視聴者が見ているんだということを理解しました。この作品のメッセージも、私が完全なマスクを外して世の中と向き合うことを願う作品でした。私の醜さも愛されて、ありのままを認めてくれる世の中になってほしいです。それをジャンルによって伝える作品だと思いました」と強調した。

堂々としていたいという彼女は「私はそうではありません。毎日視聴率を確認します。これは仕方がないんです」と照れくさがり、「代わりにそれが目標にはならないよう努めています。今の時代のよいところですが、いつでも素敵な作品をまた見れるということはとても幸せなことです。演劇で『この素敵な作品が今しか見られません』というのがとても残念だったんです。“現場性”というのがとても大切で、初演の雰囲気はとても貴重です。時間を一緒に過ごさないと感じられないジャンルなので、好きですが残念な部分もありました。しかし、ドラマはキープできます。一番良かったシーンを集め、心血を注いで公開した作品を今は逃しても、また見る機会があります。そのため視聴率が目標にはなりません」と話した。

彼女は2021年に公開された映画「光と鉄」を一番残念だった作品に挙げた。彼女は「初めて観客動員数を残念に思った作品です。新型コロナウイルスの拡大が深刻な時だったので、国際映画祭にも参加できなかったのですが、本当に完成度においては優れた作品でした。ある方から観客動員数がとても残念だと言われた時に、私にもう少しチケットパワーがあればどんなに良いだろうかと思ったんです。私はどうしてチケットパワーがないのかと悩みました。いつも脇役をやっていましたが、この作品では大きな役を引き受けたので、よりそう感じだのだと思います。この真心を分かってほしいと思いました。同僚俳優から『そんなに観客が来る作品なの?』と言われました。けなすわけではなく、ヒットする作品ではないと言っていました。そうかもしれないとその時は思いました。視聴率や観客動員数など、人気を集めれば良いですが、そうでなくても意味のある作品であり、完成度の高い作品だと思います」と語った。

最後にヨム・ヘランは、「“信じて見る女優”という修飾語に対するプレッシャーは依然として残っています。いつでも私が失望させかねないということを十分に分かっているので、そのようなプレッシャーを感じても、忘れるようにしようと思います。本質に集中し、ただ長く活動する女優になりたいです」とつけ加えた。

記者 : ヨン・フィソン