29歳のムン・グニョンが19歳、39歳のムン・グニョンに伝えたい話

MYDAILY |

写真=NAMOO ACTORS
まもなく30歳になる。制服の姿で可愛く笑い、大きな瞳から涙を落としていた10代の少女は20代になると、より演技に意欲を示した。一歩遅れて心身の変化と浮沈の時間を経験しながら自身なりに答えも得た。当時、私たちが愛した少女、今後も愛する彼女、女優ムン・グニョンはそのように華やかな30歳を控えている。

ムン・グニョンは最近、韓国で放送終了したSBS水木ドラマ「アチアラの秘密」(脚本:ト・ヒョンジョン、演出:イ・ヨンソク)を最後に20代の作品活動を終えた。後悔のない選択であり、多くのことを得た。満足な20代の最後だった。

幼い頃から演技を始め、いつの間にかデビュー17年目になった。すでに人々にとって演技的には“信頼できる俳優”として認識されているが、ムン・グニョンは演技に対して「まだ足りない部分が多い」と告白した。単純に演技経歴だけで自身に満足するには演技人生が長いという事実を知っているからだ。

「単純に私の演技経歴が長いからではなく、もう30代になるでしょう。私にできる役割が多くなった年になりました。実は20代の女優にできる役割は限定されています。30代になると演じられる役割もより多くなるから、今の私に満足することはできないです。ただ、演技的な側面でジレンマに陥らないように気をつけています」

ムン・グニョンは慎重だった。30代を控えて演技に対してより真剣になった。ジレンマに陥らないように気を使うべきだというのを誰よりもよく知っている。

彼女は「今は撮影現場のシステムになれています。演技するのも気楽で、難しいこともなく、知らないこともないです。どのように撮影されるのかも知っていて、感情を表現する方法に対しても以前のように悩まないです。しかしこのような楽さに陥ったらいけないです」と話した。

「ジレンマに陥らないために努力しています。もう全部知っているから楽になる部分に慎重を期しています。そのような考えで作品を選択するたびに私にとって刺激になれる作品を選択します。演技的な部分や、監督、作家、作品、相手俳優などがこれに含まれます。それで私にとって引き続き刺激になれる余地がある作品やそのようなキャラクターに挑戦したくなります」

ムン・グニョンは2008年、21歳という若い年でSBS最年少演技大賞を受賞し、演技力を認められた。しかしこれに対しても彼女は「運が良かったです。賞に対してあまり意欲はありませんが、意欲を持つ前に多くの賞を受賞しました」と笑った。自身が上手だから受賞したではなく、色々な状況によって自身が受賞することができたという。相変わらず自身の演技に対しては謙虚な態度を取る。「もう一度受賞したら、その時には認めます」と可能性に重点を置いた。

29歳、いわゆる九厄だと話す。ムン・グニョンにとって20歳はどうだったのか。ムン・グニョンは「29歳になったから大変だったというより、ここ数年間『今、ジレンマに陥っているね』と感じたことがあります。当時、たくさん悩みました」と語った。

「『私が演技し続けてもいいのか?』『何のために演技し続けなければならないのか?』と考えました。実は私は若い年に成し遂げたことが多いでしょう? 若い年に認知度を得て、大きな賞もたくさん受賞しました。また演技が上手だともよく言われるようになり、ある瞬間、空しさを感じました。『今後、私は何のために演技すべきなの?』とここ数年間、たくさん悩みました。しかしその答えを29歳に探しました。それで私の30代がより楽しみです」

そうすると29歳になって探したのは何だろう。彼女が悩んだ末に探した答えは結局“よりベテラン俳優になること”だった。いつも新しい心で演技できる作品と環境に挑戦する俳優、それによって刺激を受け、積極的に臨むベテラン俳優だ。そのため、役割の重要さや割合にこだわらず、演技という本質的なことにより集中すべきだと考えている。

「30代になるのは避けるのができない事実です。私を若いと思っても変わらない事実です(笑) “国民の妹”と呼ばれた時には、その意味に対してよく分からなかったです。その後にも多数の“国民の妹”が誕生し、もう私は“国民の妹”というタイトルから脱皮しました。しかし“国民”というタイトルがつけられること自体がすごいと改めて感じました。大人々も私の名前を知っているのがとても驚くべきことでしょう」

「国民の妹」という修飾語がつけられるほど、人々から愛されてきたが、たぶん子役から始まった演技人生は順調ではなかっただろう。それにも関わらずムン・グニョンは「後悔してももう遅いでしょう」と微笑んだ。

「後悔してももう戻すことができないでしょう。しかし私は逆にそのように始まったから、今の私が作られたと思います。学んだことが多いから、私は子役から演技したのが良かったと思います。しかし実は、今子役から始まっている後輩たちには止めた方がいいと助言したいです。わざわざ子役から始め、この過程を全部経験する必要はないと思うからです。私はその時期を経験したからこのように話せるのですが…」

自身が生きてきた人生だから後悔はしない。しかしムン・グニョンはそれによって違う人生を生きてきた自身の立場に対して明確に知っている。幼い頃から演技したため自身に厳しく、それで自分自身をより責めてきた。

「人々と比べて見ると、自分に厳しい方です。いつも上手になるために努力します。周りから上手だと言われても私自身が認めることができないと、それは受け入れられないです。だから自分を認める時があまりないです。誰かが『上手だね』と言うと、逆にその人を疑います。『あの人、何か思惑でもあるのでは?違うでしょうね…』(笑)」

遅れて心身の変化も経験した。いつも決められた枠の中で暮らしていて、すでに“国民の妹”というイメージが強いから、自身も知らない内に自身を取り囲む枠ができた。その枠の中で暮らしているから、逆に重苦しいと感じたことがない。逸脱した人生は夢見たこともない。すでに枠の中に慣れているから負担やストレスもなかった。しかしムン・グニョンは少しずつその枠を破り始めた。

「枠の中で暮らすのが楽でしたが、人に欲求や欲望があって、何かを受け入れるのに限界があるでしょう。その限界点に達した時、この枠がとても重苦しいと感じるようになりました。それにも関わらず私は枠の外を経験したことがないから、このようにしてもいいと思ったことがあまりないです。しかし『1泊2日』の出演を契機にたくさん変わりました。『私もこのように人々に出会うのね』『私もこのように人々と一緒に旅行してもいいのね』その時に、初めて感じたのです。以前には『そうしてもいいのか? だめでしょう』という考えを繰り返して悩んできました。今後はより刺激的なチャンスをたくさん作りたいです。休まずに働きたいです」

枠を破ったばかりのムン・グニョンの30代はどうなるだろう。ムン・グニョンは“多様さ”を強調した。「第一に多様な演技やジャンルに挑戦したいです。第二には素晴らしい監督と俳優、台本に会いたいです。それは皆の希望だから私がより積極的に動かなければならないでしょう。第三には深い話を伝えたいです。深い感動やヒューマンドラマ、映画、演劇に挑戦したいです。チャンスがあったら勉強をして演出にも挑戦したいです。演出家ムン・グニョンを夢見ています」と説明した。

続いて20代から30代になるムン・グニョンの愛に対して質問した。「恋愛の経験が少ないです」と話したムン・グニョンは「人によって違います。たくさん学んで、一つずつ学んでいく人がいる反面、小さいことからも学ぶ人がいます。私は恋愛の経験は少ないですが、小さいことから学ぼうとします。だから30代になっても恋愛をたくさんしたいという考えはないです」と明かした。

「できるなら一回で良い男に出会って結婚したいです(笑) だからこそ人格が大事だと思います。恋愛が結婚に繋がる可能性があると思うからです。人格的に成熟し、私が尊敬できる人に会いたいです。結婚が特別だと思わないです。ただ私の残った人生を、手をつないで一緒に生きていこうと約束するのが結婚だと思います。それで残った人生、その人の人生であり、私の人生であり、それが私たちの人生になって一緒に歩ける人に会いたいです。一緒に生きていくことができる人」

ムン・グニョンの話を聞いて見ると、自身に対してたくさん考え、また多くのことを学んできた人だと感じられた。一人でいる時間が多いから、自身に対して執拗な部分もあるという。

「私自身により詳しくなるために引き続き私に質問したりします。私の考えに対して把握したいし、仕事をしながらそのような傾向が強くなった気がします。今まで見せた視線や、私に対するイメージもあるでしょう。そのような考えが強くなるほど、私が私に対してより詳しくならなければならないと思うようになり、今の自分を失ってはいけないからより努力します」

最後に29歳のムン・グニョンに、19歳のムン・グニョンと39歳のムン・グニョンに話したいことに対して聞いた。ムン・グニョンはこれまでの人生を振り返りながら率直に答えた。

「19歳のムン・グニョンに話したいのは『それほど頑張らなくてもいいよ』です。当時には本当に本当に頑張って、針さえ入る隙間がないほど最善を尽くして生きたのです。世の中がきれいで美しいと思いました。しかし迷い続けていた時期、その時の私が可哀想で腹が立ちました。悔しさまで感じた後にはそのように思わなくなりました。『なぜ私はその時に、そんなに頑張ったのか? 頑張った結果が今の私なの?』と考えたんです。今は考えが変わりましたが、19歳の私に『大変だったね』と話しながら抱きしめてあげたいです。『そこまで頑張らなくてもいいよ。努力しなくてもいい』と話してあげたいですが、もう過去ですね(笑) 39歳のムン・グニョンには『満足してるの?』と聞きたいです」

記者 : ホ・ソルヒ