コ・スの初の時代劇への挑戦が気になった

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コ・スと時代劇はよく似合う組み合わせではない。今まで時代劇でコ・スを見れなかったのは、このような理由があったからだろう。そして、映画「男子取扱説明書」で独特なコメディーを披露したイ・ウォンソク監督も、時代劇とは縁のない人のように見える。そんな意味で、「尚衣院(サンイウォン)」は多くの関心を集めた。時代劇と似合わないコ・スとイ・ウォンソク監督の2人が力を合わせたからだ。“気になる”という表現がこの映画に的確であるだろう。

「尚衣院」は朝鮮時代の王室の衣服を作る尚衣院で繰り広げられる宮廷衣装劇だ。映画でコ・スは規律や規範に縛られない自由な魂の持ち主である天才デザイナーのゴンジン役を演じた。そして、自由で突飛な姿のゴンジンとコ・スは何だかよく似合っていた。今回のインタビューの答えからも、彼の突飛さを感じることができた。

―「尚衣院」を初の時代劇として選んだ理由について聞きたい。「尚衣院」は実は正統派時代劇というよりフュージョン時代劇に近い。話し方も正統派時代劇のトーンと違う。

コ・ス:正統派時代劇じゃないから選んだ。普通、正統派時代劇は王、権力と暗闘など宮廷内の物語や重い物語を描くことが多い。でも、「尚衣院」はそうじゃないから惹かれたと思う。そして、台詞のトーンも正統派時代劇のトーンじゃない。もちろん、今回の作品を通じて正統派時代劇にも出演してみたいと思った。とにかく、時代劇を思い浮かべたら、ひげや韓服(ハンボク:韓国の伝統衣装)、時にはまげを結うこともあるが、それがよく似合うかなと思った。でも、似合った。ハハ。満足している。何よりも“達人”の番組に“ひげ達人”として出演した方がひげをつけてくれたが、あの方が本当に見事にやってくれた。ハハ。

―権力と暗闘などの物語があまり好きじゃないのか?

コ・ス:そうではないが、ゴンジンはあまり怒らなさそうな気がした。ハハ。普通、時代劇は誰がもっと怒るか競争することが多いが、ゴンジンはそんな人物じゃなくて気に入った。

―イ・ウォンソク監督の前作である「男子取扱説明書」は非常に独特な作品だ。そんな点で不安はなかったのか?

コ・ス:不安はなかった。初めてシナリオを読んだ時、シナリオの中にすべてが入っていると思った。監督の独特な性向も感じられて、これが映像に表現されたら、どんな映画が出るんだろうと好奇心が湧いてきた。

―最初の段階のその好奇心は完成された映画を見てどう変わったのか?

コ・ス:上手いと思った。撮影現場で話した意図をこんな風に表現したんだとも思った。過度でも、足りなくもなかった。前の部分に出てくる監督の独特な性向は映画に愉快さを漂わせて、後半には人物たちの物語が上手く整っていた。意図した通り、見事に完成したと思う。また、服で感情を伝えるのは簡単ではないはずで、果たして服の変化が見えるかなと気になったが、それが見えた。謁見シーンで王妃が前に歩いていく時、宝石がキラキラと輝くが、そのたびに僕の心もキラキラと輝いた。ハハ。

―王妃は服の変化によって変わる感情が感じられるが、ゴンジンはそうでもなかったと思う。

コ・ス:ゴンジンの場合、感情の変化によって服に変化を与えなかったと思う。ただ、宮廷の外では服を自由に着ていたゴンジンが宮廷に入る時、尚衣院の服装に着替えるのが僕は嫌だった。他の人と同じく着るただのユニフォームかもしれないが、それを着たらゴンジンだけの特別さが消えてしまいそうでどうすれば着なくてもいいんだろうとたくさん悩んだ。それで、色んな理由をつけて監督を説得してみたが、結局失敗した。監督から宮廷の中に入ることだから、もしそうしたら特恵になるので着るしかないと言われた。

―ゴンジンは自由で突飛な人物だ。実際のコ・スと似ているという感じを受けた。

コ・ス:今回の作品を通じて今までと違う姿を見せることができたと思う。また、映画でたくさん笑えてよかった。ゴンジンは旅行好きで、人に会うのが好きな点が僕と似ていると思う。

―何よりこれまで演じてきたキャラクターと違うと思った。コ・ス自身は今まで演じたキャラクターとゴンジンのどこが一番違うと思う?

コ・ス:ゴンジンは少し違うキャラクターだった。映画で他の人物は権力や身分などに執着するが、ゴンジンはそんなことから自由な人物だ。人と違うということは間違っていることではないのに、人々はゴンジンがまるで大きな過ちを犯しているように話す。それで、ゴンジンはその違いをより表現しようとするが、ドルソク(ハン・ソッキュ)は違いをまったく表現しない。ある意味、王や王妃などが現実的な人物なのかもしれない思った。それで、そんなことを表現する時、本当にたくさん悩んだ。例えば、以前は相手が僕に怒ったら、それに合わせて怒ったり、悪口を言うなどのリアクションをしたが、ゴンジンは従来と違うリアクションを見せた。映画を作っていく過程で、こんなリアクションでいいのかなと思ったぐらいである。

―先ほど説明したように、ゴンジンは人を憎んだり、嫉妬したりしない人物だ。彼のそんな姿に情緒的に共感できたのか?

コ・ス:共感するのが難しかった。それで、ゴンジンは理想的な人物だとも考えた。でも、実は演じながら心の中で葛藤した部分がある。映画の後半に出てくる監獄シーンだ。その監獄シーンでゴンジンとドルソクが色んな会話を交わすが、その時、ゴンジンもそんなに理想的な人物ではなかったんだと思った。ゴンジンにも彼なりの心の傷があって、大変に感じている部分もあった。

―ゴンジンに対するドルソクの感情ははっきりしているように見える。時には嫉妬するが、それでも彼のことが好きだ。それでは、ドルソクに対するゴンジンの本音は?

コ・ス:ドルソクに初めて出会った時は、服について自分と違う考えを持っていると思う。それは尊重の感情だ。そして、ドルソクを徐々に認めるようになる。それで、ドルソクを好きな兄として受け入れて、ドルソクの才能を認めて一緒に何かをやってみようとする。お互いに足りない部分を満たし合いながらやっていこうと思ったのである。

―ハン・ソッキュとの共演はどうだった?話し方が何となく彼に似ていくような感じがする。

コ・ス:みんなから影響を受ける。キャラクターの影響もたくさん受けていると思う。先輩は自分だけの演技観などがはっきりしている方だから、先輩の存在自体が心強かった。演技について深く悩んで、絶えず考え続ける姿を見ながらたくさんのことを学んだ。

―それから、王妃へのゴンジンの感情は恋だと言える?

コ・ス:その瞬間は叶えられない夢を見たと思う。そしてある意味、その夢が恋だったんだろう。王妃に一目惚れしたゴンジンは、彼女の悲しみや辛さが見えるから幸せにしたいという気持ちを抱いたと思う。それで、ゴンジンは宮廷から出ていく前、最後に挨拶しに行く時、王妃に遠まわしに告白したと思う。だからといって、賤民(朝鮮時代で一番身分の低い人)が王妃に「愛しています」と直接告白することはできないからだ。もしそうなったら、僕を殺すために誰かが追っかけてきて、映画がアクション活劇になってしまう。ハハ。サイズを測る時もばれてはいけない感情を抱いていた。その感情を正確に見せられなかったのは残念だが、その部分は観客が想像しながら見てくれると嬉しい。

―サイズを測るシーンは本当に官能的だった。お互いの呼吸が感じられるぐらい近い距離で、息を吸い込んだり、吐き出したりする姿が非常にエロティックに映った。

コ・ス:そんな気持ちをお互いにばれないように隠さなければならない状況だと思った。でも、監督は呼吸の音をより大きく出してほしいと要求してきた。その意見が監督と違った。僕はばれてはいけない感情だと思ったのに、監督は撮影現場でいたずら半分でより大きな呼吸の音を望んだ。でも、今となっては、もし監督が話した通りに演じたらどんなシーンが出たのだろうと気にはなる。

―映画の中で針仕事をするが、実際のコ・スも針仕事をするのか?

コ・ス:この映画のために練習して、今はまったくしていない。ハハ。たまに胃もたれした時はする。(―それは針仕事ではないが……)

―映画のためではあるが、針仕事をしてみた感想は?

コ・ス:針仕事をしながら色んなことを考えた。家や作品のことを考えたり、また時間がたくさんかかるからいつ終わるのかなとも考えた。ハハ。ゴンジンも針仕事をしながら、人々と色んな言葉を交わす中で、家のことを考えたり、またストレスを受けた時は針仕事を通じて解消しただろう。そんなことを感じた。

―映画で女性キャラクターの服は華やかで美しい。それに比べて、男性キャラクターの服は平凡に見えるが……。

コ・ス:王妃が着る服に視線が行くのは事実だ。でも、ドルソクが着る服も美しいと思う。ゴンジンの服も同じだ。色味が美しくて、レイヤードのような感じもする。何よりも、僕は撮影中、白いチョゴリ(上着)が一番美しかったと思う。今の服で言うと、ワイシャツのような服だ。その上にシルエットの効果がある布をレイヤードして着たり、時にはベルベット素材の服も着た。

―映画でゴンジンは嫉妬などをしない。でも、ゴンジンを演じた人間コ・スは嫉妬することがもちろんあると思う。俳優として生きながらそれによる不安を感じたことがあるのか?

コ・ス:僕は常に自ら刺激を与えている。でも、俳優は欲張るからといって上手くいく職業ではないと思う。もちろん、僕は欲張ったことはある。ある経験をする時やそれが終わった時、個人的に取り入れる学びや感じなどはそれぞれ違う。それはシナリオを見る時も同じだ。以前見た時は面白くなかったシナリオが、時間が経って再び見るとピンと来る時がある。それは自分でどうにかできることではないと思う。それで毎瞬間、内面の変化などを敏感に感じるように努力する。シナリオを見て何も浮かばない時は悲しくて辛くなる。それに関する経験を僕はまったく持っていないということだからだ。そんな時は本を見たり、外に出て人に会ったりして何かを経験しようとする。それで、僕は作品をやっていない時はいつも誰かに会って、何かをしようとする。

―コ・スだけの変わらないパターンのようなものがあるのか?

コ・ス:人はみんなそれぞれの性向やカラー、癖などを持っている。そして、毎回新しい挑戦を試みようとする。でも、だからといってその人が突然違う人に変わることはないと思う。変身することは大変だ。だから、人は自分が持っているものの中でできるだけ変化を与える作業をすると思う。僕の場合、演じながら僕だけのパターンや呼吸などに変化を与えようと常に努力する。でも、まったく違う変化を与えるのは難しいと思う。

―以前より一層明るくなったと思う。前向きに変わったように見える。

コ・ス:どっちがいいのかはよく分からない。でも、明るいとういことはいいことだろう。ただ、暗いキャラクターを演じたら、また影響を受けると思う。イ・ウォンソク監督との作業は面白かったし、ゴンジンを演じながらたくさん笑って明るくなったのは事実だ。

―「尚衣院」は色んな物語(またはメッセージ)を持っている。その中で最も注目してほしいのは?

コ・ス:映画で話す“違う”ということは間違ったことではない。最近も違うことは間違ったことだと受け入れて攻撃する人が多いと思う。だから、そのメッセージが重要だと思う。この映画は愉快に始まるが、絶対軽くない物語を描く。それから、「尚衣院」は面白い見どころも多い。また、時代劇で服について話すのはこの映画が初めてだ。そんな点で、皆が面白く見れる映画だと思う。

記者 : ファン・ソンウン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン