シン・ミナ「女神?ただの大衆が作ったイメージ」

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意図的か否かは分からないが、女優シン・ミナ(30)はこれまで現実とは少しかけ離れたキャラクターを演じることが多かった。映画「甘い人生」(監督:キム・ジウン)のヒスがそうであり、「キッチン」(監督:ホン・ジヨン)のモレもそうだ。「慶州(キョンジュ)」(監督:チャン・リュル)の喫茶店の主人ユンヒも現実と幻想の堺にいるような人物だ。

そんなシン・ミナが映画「私の愛、私の花嫁」(監督:イム・チャンサン、制作:フィルム・モメンタム)では韓国の平凡な女性に扮した。目に見えるほどむくんだ顔で恋人と喧嘩をし、服を整理できない夫に耳が裂けるほどの小言を続ける。成功している大学の同期の前では落ち込み、「おばさん」という言葉も違和感なく飛び出す。簡単に言えば、シン・ミナがついに現実の地にそっと降りてきたのだ。

試写会直後から「シン・ミナの新たな代表作」という好評が続き、只ならぬ反響が見えている「私の愛、私の花嫁」。シン・ミナは今回の映画で美術教室の講師で、小言上手なヨンミン(チョ・ジョンソク)の妻ミヨン役を演じた。1990年のイ・ミョンセ監督の同名映画では故チェ・ジンシルさんが演じた人物でもある。

「原作を見たのがすごく幼い頃だったので、撮影に入る前にもう一度見ました。故チェ・ジンシル先輩は存在だけでその価値がはっきりと見えるキャラクターでしたよね。初々しくて新鮮でした。それをあえて真似しようとは思いませんでした。私は私だけの方法で現代のミヨンをそれなりに解釈し、悩んでみようと努力しました」

映画や演技に対する好評にも淡々としていたシン・ミナだったが、「私の愛、私の花嫁」に対する愛着は人並み外れたものだった。

「敏感な問題なのかも知れませんが、女優が感情を表現できる韓国映画は多くないんです。このような映画(『私の愛、私の花嫁』)を撮りたいと思っていました。苦労して合流した映画です。女優ではなく観客としても、ラブコメディやラブストーリーの映画がたくさん出てきてほしいです。私はラブストーリーが好きなんですが、韓国映画ではあまり見られません」

「私の愛、私の花嫁」は、1990年にパク・チュンフン、故チェ・ジンシルさんが主演を務めてヒットしたイ・ミョンセ監督の同名映画をリメイクした作品で、昨今の新婚夫婦に対する物語を率直かつ才気煥発なタッチで描いた作品だ。チョ・ジョンソク、シン・ミナ、ラ・ミラン、ユン・ジョンヒ、ペ・ソンウ、ファン・ジョンミン、チョン・ムソン、イ・シオン、ソ・ガンジュン、ソ・シネらが出演し、映画「大統領の理髪師」のイム・チャンサン監督がメガホンを取った。韓国で10月8日に公開される。

以下はシン・ミナとの一問一答だ。

―キャスティングの過程で「チョ・ジョンソクとは似合わない」という反応があった。

シン・ミナ:その通りだ。だけど、ポスターや予告映像が公開されてから反応が変わった。ジョンソク兄さんと親しくなった様子がそのまま伝わったからだと思う。正直、似合わないというコメントがあった時は悲しかったけれど、今は多くの方が私たちを温かく見守ってくださっているようで幸いだ。

―チョ・ジョンソクとはどうやって親しくなったのか。二人とも人見知りのようだが。

シン・ミナ:二人とも親しくなろうと努力した。心が通じあっているからこそ、素晴らしい映画が出来上がると思っていたようだ。二人とも人見知りだけど、性格よりも性向が少し似ていた。真剣な時は真剣で、リラックスする時はリラックスして。

―原作と差別化を図ったところは?

シン・ミナ:原作もそうだし、2014年の「私の愛、私の花嫁」もそうだけど、ストーリーを進めていくのはヨンミン(チョ・ジョンソク)だ。ミヨンはある意味、受身的なキャラクターだけど、女性が共感できる人物にしたいと思った。最も大きく変わったのは、共働きの夫婦になっているところだ。そのような面で女性たちが家庭や社会で抱えるであろう悩みを表現しようと努力した。

―結婚は直接経験したことがないが、どうやって感情を作ったのか。

シン・ミナ:初めてシナリオを読んで、「私はなぜこの映画に共感しているんだろう?」と考えてみた。この映画はもし結婚をしていないとしても長年の人間関係から感じられる感情を表現した映画だった。一生続くと信じていた人間関係がギクシャクする時に感じられる困惑のようなものだ。これは恋愛や結婚でなくても感じられるものだろう。また、30代になると女性として失っていくものがある。私も30歳になって感じた感情である。そのあたりですごく共感したんだと思う。

―ジャージャー麺のシーンはすごくプレッシャーがあったと思うが。

シン・ミナ:仰る通りだ。リメイクした時に、原作よりさらにインパクトがなければ、やらないほうがマシなシーンだった。本当はスケジュール上、序盤に撮影することになっていたけれど、後半で撮ることになった。もっと悩んでみようといういことだった。ジョンソク兄さんのアイデアで面白いシーンになったと思う。NGなしで一発で撮った。

―引っ越しパーティで歌を歌うシーンもすごく笑った。少女時代のテヨンの「もしも」を選曲をしたのは誰か。

シン・ミナ:脚本家さんだ。実は私がよく歌うのは「慶州」で歌った「湯のみ」だ(笑) 賢い選曲だと思う。「私はバカだから」という歌詞もその状況にぴったりだった。「もしも」はとても難しい曲だけど、音を自然に外す演技が難しかった。緊張して、もともとは出なかった高音が出たりした。


―チョ・ジョンソクと恥ずかしいシーンを演じる時に違和感はなかったか。

シン・ミナ:全くなかった。むしろジョンソク兄さんとどうすればもっと面白く撮影できるかと欲張るほどだった。「とりあえず脱いでください」などと言いながら。兄さんのパンツシリーズも同じだった(笑)

―体を張って壊れる演技を披露してみせた。

シン・ミナ:正直もっと壊れたかったし、もっとおかしく映ったらいいと思ったけれど、それができそうなシーンが多くはなかった。私も今回の映画で従来のイメージ通りじゃいけないというのはよく分かっていた。とにかく、おばさんの役なので。

―女神のイメージや美貌が生活感のある演技の足枷になるのでは。

シン・ミナ:全くそんなことはない。ある意味、作っていただいたイメージじゃないか。「甘い人生」もそうだし、デビュー当時から幻の中の人物をよく演じてきたのでそんなイメージが生まれたんだと思う。

―ミヨンが働く女性として悩む場面が印象深かった。

シン・ミナ:大きな夢を持って働いているが、トップではない。ただお金を稼ぐために働いているんじゃないか。ヨンミンも9級公務員(日本の国家3種に当たる)として働いているけれど、その一方でポエムを書いているのは同じ理由からだ。私もただ仕事が面白いだけではない。あまりにも忙しく、プライベートな時間がない時は辛い。あまりにも幼い頃にデビューしたので、同じ年頃の子たちが経てきたものを逃しながら生きてきた。けれど、今はこれが自然だ。最近は少し楽しく、前向きに受け止めようと努力している。

―映画を撮りながら、結婚に関する考えも変わったのでは。

シン・ミナ:幼い頃にデビューしたので、結婚は10年後に起きること、遠い未来だとだけ思っていた。映画を撮影していると、結婚もしたくなるし、もしかしたら近い未来かもしれないと思った。「私の愛、私の花嫁」で間接的に経験できたからかもしれないけれど、結婚したらしっかり夫をサポートして、淫乱魔も上手くコントロールできると思う(笑)

―理想の夫像はあるか。

シン・ミナ:性格が違っていても、性向や好みが似ている人が良い。何かを一緒にすると面白い人。

―デビュー当初と比べて、かなり変わったと思うところは。

シン・ミナ:年齢? ハハハ。15歳でデビューし、仕事をしながら過ごした時間が私の人生の半分を超えた。突如急変するというよりは、少しずつ変わってきたんだと思う。本当に何も分かっていない頃にデビューしたので。その時その時で少しずつ感じ、学んできたと思う。

―今後の予定は。

シン・ミナ:まだ決まっていない。仕事をしようとしても、私の思った通りになるわけではないので。今は「私の愛、私の花嫁」に集中したいと思う。次回作は素敵な作品をできるだけ早く決めようと努力している。

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン