「マイ・ラティマ」パク・ジス、私の物語は今ようやく始まった

10asia |

映画「マイ・ラティマ」は俳優ユ・ジテが手掛けた初の長編映画演出作としてより広く知られた映画である。しかし、移民女性の厳しい現実を淡いトーンで描いたこの映画は、徹底的にパク・ジス1人の映画でもある。この映画は2012年の釜山(プサン)国際映画祭で初めて公開される前まで、主人公マイ・ラティマ役を演じた新人女優の正体は徹底的に隠された。そのため、ついに公開された映画で、観客はマイ・ラティマというキャラクターを違和感なく受け入れることができた。そして、舞台挨拶の時にパク・ジスがタイ人女性のマイ・ラティマではなく、韓国人パク・ジスだということを知った客席がざわめくこともあった。それだけ、新人パク・ジスはキャラクターと渾然一体となった演技を披露した。

そして、パク・ジスは2013年の第34回青龍映画賞で切実に望んでいた新人女優賞のトロフィーを胸に抱いて号泣した。「人々に認められるということがこんなにも嬉しいことだと初めて分かった」という受賞の感想には、本当に多くの意味が込められていた。

人々の目に映った彼女の歩みは幸運に満ちているように見えるかもしれない。客観的に見ても、それは明白な事実である。パク・ジスは大学を卒業してすぐに映画「マイ・ラティマ」にキャスティングされたからだ。それに、俳優ユ・ジテが演出する映画という点でマスコミの注目を集め、名前を知らせることに大きく役立ったのも事実である。

しかし、毎日ただ流れていく時間が惜しく感じる新人女優にとって、観客の前に「マイ・ラティマ」として出るまでの1年間という長い時間の間、息を殺していなければならなかったことは決して簡単なことではなかったはずだ。それでも、パク・ジスはその1年間を焦って過ごす代わりに、バリスタの勉強やヨガを習いながら自分を磨いた。

そして、ついに観客の前に姿を現した2012年の釜山国際映画祭の舞台に上がる直前、パク・ジスの胸はときめいていた。当時、まだ所属事務所がなかった彼女は知人が運営するウェディングショップや東大門(トンデムン)市場などを回りながら、自分でお気に入りのドレスを選ばなければならなかったが、今振り返ってみると、そんな記憶さえも幸せな思い出となった。

「釜山国際映画祭に作品を持って参加すること自体、胸がときめいて誇らしかったです。パク・ジスという女優がまだ世間に公開されていなかった状態で参加したので、私を知っている人は誰もいませんでしたが、それでもすごく幸せでした。そして、その時に一人で準備した経験があるため、今の所属事務所のスタッフたちが細かい部分まで気を遣ってくれることにとても感謝しています。それがどれほど大変なことなのかをよく知っていますから」

映画以外の苦労だけでなく、劇中のマイ・ラティマという人物も演じるのが非常に難しいキャラクターだった。

「マイ・ラティマは話したいことがとても多いけど、異国で生きているので全ての気持ちを打ち明けることができない人物じゃないですか。実は、私自身何も知らない新人なので、撮影現場でぽつんと残された時は寂しさを感じることもありましたが、それが演技において役に立ちました」

一番大変だったシーンは、やはりレイプされるシーンだった。リアルに描くために何回も撮り直し、彼女はそのたびに極限の状況に身を投じなければならなかった。

「その日は本当に大変でした。でも、そんなことを気にするよりも、学校を卒業した後、すぐに仕事ができることに感謝しました。撮影現場では私が一番年下なので、私の意見を示すよりも学ぶ立場から考えようとしました」

その苦労の後にはご褒美が待っていた。デビュー作で映画祭の新人賞を獲得する幸運なんて滅多にないのだから。

「この勢いのまま、今年は必ず良い作品と出会いたいです。有難いことに時代劇や現代劇など様々な作品の出演オファーが入っています。少なくとも映画とドラマを1本ずつ撮影したいと思っています」

まだ話したいことがたくさんあるというような眼差しを持った新人女優パク・ジス。そんな彼女が描く2014年はどんなカラーを持つだろうか?また、それは「マイ・ラティマ」の淡いトーンとはどんな違いがあるのだろうか?

記者 : ペ・ソニョン、写真 : ク・へジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン