Vol.1 ― 「ファイ」チャン・ジュンファン監督“案外淡白でシンプルな映画なんです”

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写真=キム・ジェチャン
奇才な監督チャン・ジュンファン(43)は10年前に「地球を守れ!」を持って突然現れ、映画界を騒がせた後に忽然と消えた。“液状パス”(液状の湿布薬)の匂いが無くなりそうな2013年、彼は再びとんでもない“モノ”を持って突然姿を現した。今回は液体パスを手に持ったビョング(シン・ハギュン)よりもっとひどい。怪物を飲み込んだファイ(ヨ・ジング)の手をつないだ彼が、恥ずかしそうに微笑みながらスクリーンの戸を叩いた。

「地球を守れ!」以来、10年ぶりに復帰したチャン・ジュンファン監督は、久々の映画公開で非常にわくわくしていた。一方、あごの無精ひげはおそらく公開前日まで緊張を緩めることができない彼の心理を表しているようだった。それだけ、チャン・ジュンファン監督にとって「ファイ 悪魔に育てられた少年」(以下「ファイ」、制作:ナウフィルム)は歓喜であると同時に彼を緊張させる存在だ。

10年も待たせたファンの代わりに愚痴をこぼしてみたが、彼は満面に余裕のある微笑みを浮かべて恥ずかしそうに笑うだけだった。自身なりに様々な試みをし、結婚して父親になりこの10年間忙しく生きてきたというチャン・ジュンファン監督。言われてみれば彼は休まずずっと走ってきた。

わずか1作品だが、彼が見せてくれた前作のカラーは非常に強烈で、センセーションを巻き起こすのに十分だった。しかし前作のオーラが強すぎて、「ファイ」もその延長線にある作品として考えようとする観客が多い。多くの人々が懸念する部分の一つだ。

「『地球を守れ!』はユーモアのある楽しい映画で、『ファイ』は重みがあって古典的な、真正性が際立っている映画です。自分のスタイルがどちらであるかと選ぶのは難しいです。二つとも私の作品なんです。確かに、『ファイ』は『地球を守れ!』とは異なる演出法でアプローチしました。映画ごとに文法的にも美学的にも異なるアプローチが必要じゃないですか。観客のみなさんに隠されている私の洗練された(笑) スタイルを見つけてほしいです。私は時にはティム・バートン監督のように、時にはフランシス・フォード・コッポラ監督のようになりたいです」

もしかすると我々はチャン・ジュンファン監督に「地球を守れ!」のような映画を望んでいたのではないだろうか。だから彼が異なるジャンルに挑戦するまで10年という歳月がかかったのかもしれない。ファンタジーを除いたチャン・ジュンファン監督はどこか不自然な感じがして「より商業的に変わった」と言うと、「『地球を守れ!』もとても商業的に作った映画なんですが?」という意外な答えで笑いを誘ったチャン・ジュンファン監督だ。

「『地球を守れ!』も商業的に作った映画なんですが?観客がすごく喜ぶと思いました。その時は新鮮で変わっていたので。楽しんで見ることができるジャンルとしてアプローチしましたが、思ったほどではありませんでしたね(笑) 『ファイ』は正統スタイルでアプローチしたため、たぶん商業的に見えたと思います。『地球を守れ!』を見て作家主義的だと評価されるけれども、個人的に私は芸術映画があまり好きではありません。ハハ。どんな芸術であっても観客と交感できないのは芸術じゃないと思いますので。もちろん『ファイ』が資本的に優れていて、それによる最小限の責任感もあります」

チャン・ジュンファン監督は“観客の、観客による、観客のための”映画を作るのが真のコミュニケーションだと話した。観客が目を逸らせば、映画として、監督として力を出しにくいというのだ。だからなのか。チャン・ジュンファン監督は1年間「ファイ」を脚色した。もっと観客の目で映画を見ようと努力し、ファイの心を伝えようと努力した。

「非常に魅力的で、強烈だった『ファイ』のシナリオをもらって、とても嬉しかったです。観客が好む要素がいっぱいだったからです。ところが、一方ではあまりにも洗練されているのではないかと疑ったりもしました。人間の深い内面に触る映画なのに、このような部分で真正性を損なう気がしました。観客がもっと楽に見られる映画にするために、脚色にすべての力を注ぎました。最初は簡単だと思いました。まずジャンル的にかっこいい映画ですから。ところがストーリーがあまりにも深いものでした。脚色が大変で諦めようかとも思いました。でも無事に終え、今の『ファイ』が生まれましたね。私たちの映画、思ったより難しくありません。案外淡白でシンプルなんです(笑)」

記者 : チョ・ジヨン