Vol.1 ―放送終了「モンスター」が残した音楽的な成果(選曲編)

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「モンスター~私だけのラブスター~」の撮影終了から約2週間が過ぎた7月のある日、キム・ウォンソク監督から面白い話を聞いた。「韓国人は音楽(歌)もドラマも大好きなのに、不思議にも音楽ドラマはあまり好きじゃない」という非常に面白い分析だった。その話を聞いて改めて考えてみると、本当にそうだった。韓国で人気ドラマは視聴率が40%を超えるほど、多くの視聴者に愛される。それに、韓国人はどの国よりも“飲酒歌舞”を楽しむ民族である。それなのに、不思議にもミュージックドラマは韓国人にとって異質的な存在だ。どうしてだろう?その疑問を解けずにしばらく考えていた時、キム・ウォンソク監督がもう一つの分析を聞かせてくれた。「今のところは、ドラマの前面に音楽を立たせるには韓国人はドラマが大好きだ。また、音楽にドラマを詰め込むには韓国人は音楽が大好きだ。それで、ドラマを作る人間として、どちらも満足させてシナジー効果を出すためには、より悩んで努力するしかないという事実を改めて感じた」と「モンスター~私だけのラブスター~」を作った感想を述べた。

また彼は、「音楽は熱唱する歌手の占有物ではない。また、歌手たちの競争手段である前に、人々に勇気を与えたり心を慰めてくれるものである。だから、歌を上手く歌えない人でも音楽を楽しむ資格が十分あり、さらには歌で人を感動させることもできるということを見せたかった。この素朴だが雄大な夢が、今回良い脚本家やスタッフ、俳優たちと出会って可能性を伺うことができた」と評価した。

キム・ウォンソク監督は「いい音楽の価値は永遠に続き、様々なジャンルの音楽が新たに注目され、再び愛されることができるということで、音楽ドラマの存在意義がある」とし、2日午後に放送終了となった「モンスター~私だけのラブスター~」との、すっきりとしながらも寂しい別れを告げた。

10asiaは「モンスター~私だけのラブスター~」の放送終了を控え、「モンスター~私だけのラブスター~」が新たにスポットライトを当てた音楽を再び取り出してみた。一世代を風靡した曲、1980~90年代の若者たちの心を慰めたり、彼らの若さを応援した数々の名曲の中で、キム・ウォンソク監督を始めとする制作陣が2013年にプクチョン高校に再び鳴り広がるようにした曲の意味は一体何だろうか?

1.選曲

「モンスター~私だけのラブスター~」には胸を打つという表現がぴったりな、過去の名曲が多く登場した。もちろん、中には現在愛されているアイドルの音楽もあった。「モンスター~私だけのラブスター~」を通じてプクチョン高校の「カラーバー」が歌った曲は、選ばれた特別な理由がきっとあるはずだ。キム・ウォンソク監督の他、2人の音楽プロデューサーに選曲の理由を聞いた。

キム・ウォンソク監督

ドラマを企画した当時、Busker Buskerのアルバムが空前のヒットを記録した。Busker Buskerの音楽が同時期にリリースされたアイドル音楽よりもっと愛された理由は何だろう。韓国大衆音楽の主流がアイドル音楽になり、アイドルのレベルや彼らの音楽レベルが飛躍的に高くなったのは事実だが、人々がそのアイドル音楽に少しずつ物足りなさを感じていたからだと思う。韓国人が好きな音楽が世界に広まったのがいわゆるK-POPであるが、現在は全世界の人々の好みに曲を合わせようとしており、むしろ韓国人が好きな要素は減ったと感じた。僕たちの感性を満たすメロディーや歌詞の曲がだんだん減っている。だから、「セシボン」や「私は歌手だ」「不朽の名曲」などの番組が人気を博すことができた。

ただ、サバイバル形式のショーが持つ特性上、熱唱する歌手の曲が再び評価されることが多いので、もしドラマならこんな曲だけではなく、ささやくように歌う曲や吟じるように歌う曲、さらには上手く歌えない曲でも視聴者に感動や響きを与えることができると思った。

ユ・ジェハの「過ぎた日」、キム・ヒョンシクの「悲しまないでね」、サンウルリム(山びこ)の「君の意味」、紫雨林(ジャウリム)の「夜想曲」、動物園の「君を愛してる」、オトンナル(ある日)の「出発」、イ・ジヨンの「風よ、止まってくれ」、カン・スジの「散らばった日々」がまさにその例だ。

また、最近の曲でも歌詞とメロディがいい曲は積極的に使おうとした。それには、Lucid Fallの「風」「どこから吹くのか」、Busker Buskerの「初恋」、コーヒー少年の「これが恋なのか」、月光妖精逆転満塁ホームランの「私の歌」、MOTの「私の絶望を望むあなたに」がある。

他にも「アトランティスの少女」「I'm Your Girl」「Ma Boy」「I AM THE BEST」「Trouble Maker」「誘惑のソナタ」など、いわゆるK-POPを新しく再解釈した音楽、「馬を走らせよう」のような軽快なロック音楽、「If I leave」「Amazing Grace」のようにクラシカルな歌い方の曲、アストル・ピアソラの「Libertango」、モーツァルトの交響曲第25番、フェリックス・メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲などのオーケストラの演奏曲まで、様々な音楽をドラマに入れるために努力した。

初めて企画した時から、ユ・ジェハ、ドゥルグクファ(野菊)、チョー・ヨンピル、サンウルリム、キム・ヒョンシク、イ・ビョンウ、チョ・ドンイク、ユン・サン、イ・スンチョル、動物園、シン・スンフン、イ・ムンセ、イ・ジョクなど、韓国大衆音楽の歴史において重要なミュージシャンの曲は必ず使おうと思った。著作権関連の問題で使えなかったソテジワアイドゥル(ソ・テジと子どもたち)の曲や、まだ使っていない他の韓国代表ミュージシャンの音楽は、今後に作られる音楽ドラマが扱ってくれるだろう。

イ・ドンヒョンプロデューサー(J Rabbitの制作者、“モンスター音楽軍団”TFチームの1人で、音楽の選曲と編曲はもちろん、ボーカルと楽器に関するガイドなど、音楽シーンを作るために力を合わせた)

全曲が素晴らしい曲なので、再評価しようと思うよりは新しい視線で曲に近づいてみようと思った。昔の音楽を全く違うジャンルに解釈するより、もし2013年に活動している若いミュージシャンがこの曲を演奏するとしたら、どんな風に披露するだろうといったアプローチで作業した。でも、80~90年代の曲はドラマのバージョンが原曲よりはるかにアコースティックな編曲だったと思う。正直に言うと、選曲はドラマのストーリーに似合う雰囲気と歌詞の曲を中心に選んだため、本当に望んだ曲は使えなかった部分もある。

POSTINO(有名作曲家兼編曲家、「モンスター音楽軍団」TFチームの1人。TFチームは台本が出ると、全員集まって音楽シーンの構成に関するミーティングを行い、心血を傾けて全般的な作業に力を注いだ)

「幼い頃に大好きだった曲だから作業してみよう!」と思うより、ドラマのコンセプトや内容に合う曲を探すのが急務だった。幸いにも、80年代前後の歌謡の大半が詩的な歌詞と美しいメロディを持っており、音楽の選曲に対して大きなプレッシャーを感じなかった。ただ、ドラマ(演技)で短時間に表現するには無理があるシーンが、“歌”が持つ力により解決できることが多く、ドラマの状況に合う歌詞の曲を探すことを最優先にした。でも、選曲過程で個人的な好みがそれとなく溶け込んでいると思う。個人的にはカン・スジの「散らばった日々」とシン・スンフンの「私を泣かさないで」が記憶に残っている。「私を泣かさないで」の場合、すでに何度もリメイクされた曲だが、劇中の「カラーバー」のメンバー一人一人の状況や、ナナの歌唱力によるドラマティックな効果を十分与えられる曲だという確信ができ、かなり速く推進した曲でもある。

記者 : : ペ・ソニョン、写真提供 : Mnet、翻訳 : ナ・ウンジョン