Vol.3 ― 「シークレット・ミッション」キム・スヒョン、成長痛を乗り越えスターから俳優に

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人生とは何が起こるか分からないものだ。わずか6年前までは、この少年の眼差しや笑顔によってこんなにも心をときめかされるなんて誰にも想像できなかったはずだ。当時はまだ、くるくるした髪の毛の純粋な新人だったからだ。

その少年は6年後、ワイルドな香りを放つ男性へと変わった。それだけではない、観客の心を握ったまま放さない図々しさまで備えている。私たちが知らない俳優キム・スヒョン(25歳)は、恐ろしい人間だ。従順な仮面の下には鋭い爪を隠していた。

確かその辺りの出来事だ。少年から男へと変身を始めたその瞬間から、徐々に本性を現わし始めた。一つずつ鋭い爪を表わし、その度に人々の心を見事に引き裂いた。

これまで誰かの子ども時代を演じることが多く、“誰かの子役”と呼ばれたキム・スヒョンは、2011年KBS 2TV「ドリームハイ」のソン・サムドン役を通じて自分の声を出し始めた。また、昨年にはMBCドラマ「太陽を抱く月」と映画「10人の泥棒たち」で本格的な変身を世間に知らしめた。新鋭キム・スヒョンは、4年間の苦難の時間を耐え抜き、一気にスターへと浮上した。

しかし、急いで食べる食事は体に変調をもたらし、人々の関心と応援は時に負担にさえ感じることもある。大ヒットが報じられる一方で、キム・スヒョンに対して初心を失ったのではという声も聞こえ始めた。キム・スヒョンの関知しないところでの噂だったが、人間なので傷付かないはずがない。初めて本音を打ち明けだしたキム・スヒョンは、これまでの悲しみを目一杯詰め込んで吐き出した。そんな彼の思いに胸が締めつけられた。

「運が良かったんです。どの作品も思いがけず多くの愛を受けて来ました。しかし、その分責任もたくさん増えて、負担から来るプレッシャーもありました。恐怖がずっと続き、“変わった”という言葉を聞くたびに不安な気持ちに襲われました。そのせいで慎重にならざるを得ず、家の外をあまり出歩かなくなり、ますます神経質になっていきました。分かりますか? 人にはそれぞれが持っている独自の魅力というものがあるでしょう。しかし、そのようなものが消滅するんですよ。“僕は本当に魅力のない人間だな”という気がしてきて憂鬱になりました。人気が出たから良かったかって? いいえ。とても大変でした…」

疲れたキム・スヒョンにはきっかけが必要だった。突破口を探していた矢先に、人気ウェブ漫画を原作にした映画「シークレット・ミッション」が目に入った。心配する必要はなかった。今は息抜きに入るタイミングだった。躊躇せず、「シークレット・ミッション」に静かに力を注いだ。

「実は、『太陽を抱く月』では、僕自身に失望もたくさんしたし未熟な部分も多かったです。壁にぶつかったような感じでした。朝鮮の若き王として叫ぶシーンがあったのですが情けないことに上手くできませんでした。人々の心を掴むほどのオーラが必要なのですが、僕が演じてみても一切カリスマ性が感じられませんでした。物語を掌握する力が足りないということを切実に感じていました。そういった部分が、とてもストレスになっていました。今回の作品で近所のバカの役を引き受けて、自身を解放してみました。一度肩の力を抜いて、もう一度演技の方法を探してみたかったんです。どのようにするかは、僕の課題でした。どこまで力を抜くことができるか…今はどうなのかって? 以前よりもずっと心が軽くなりました。バカを演じるうちに自然と体が軽くなりました。朝鮮を号令したイ・フォンはどこに行ったのでしょうか(笑)」

肩の荷を下ろしたキム・スヒョンは現在、中央大学演劇映画科に復学して学業に専念している。久しぶりに学生に戻ってこれたことがひたすら嬉しいという彼は、「シークレット・ミッション」の封切ではなく来るべき期末試験を心配していた。チームを組んで演技をするという試験なのに一人だけ練習をしないでいると心配が並大抵ではない。冗談で、こうやっていると普通の大学生のようだと伝えると、「人気のない復学した兄さんだ」と見事に切り返した。俳優としての成長痛を味わったキム・スヒョンはそうやってまた一回り成長していた。

「『太陽を抱く月』が終わって学校に行った時は、ちょうどみんなが忙しい時期で、友人もすでにどこかのチームに属していました。しかし、これはもう仕方のないことですから(笑) 学校という空間の中で存分に走り回れることが、すごく楽しくて気持ち良いです。僕だけがまだ期末試験の準備ができていないので大変です。こんな僕に先生がC評価でもつけてくださるのなら感謝します(笑)」

記者 : チョ・ジヨン