「優しい男」ソン・ジュンギ…相手のために自分を捨てた男

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写真=KBS

「優しい男」カン・マル、本当に優しい人物なのか

タイトルは「優しい男」だが、主人公のカン・マル(ソン・ジュンギ)が果たして優しい男かどうかに対しては疑問が残る部分がある。2010年に放送された「赤と黒(韓国題:悪い男)」は、タイトルは「優しい男」と正反対だ。しかし、二つのドラマの男性主人公は相当似ている。致命的な魅力の持ち主で、能力まで兼ね備えているのだ。

「赤と黒」でシム・ゴヌク(キム・ナムギル)は、やむを得ず復讐という運命的なテーマに巻き込まれる。ここでの“悪さ”は、この運命に絡んだ復讐を働く過程で彼が多くの人、特に女性たちに、目的だけでなく手段として近づくことを意味している。カン・マルもやはり、ハン・ジェヒ(パク・シヨン)への純情が徹底的に利用され裏切られると、その復讐のためにソ・ウンギ(ムン・チェウォン)に近づくのだ。

しかし、カン・マルが「優しい男」である理由は他にある。自分を取り巻く二つの世界を行き来しながら、白紙のように純粋な姿を表しているためだ。カン・マルは“悪”に描かれているハン・ジェヒの世界と“善”を代表する妹チョコ(イ・ユビ)、友人パク・ジェギル(イ・グァンス)の世界を行き来している。

写真=KBS
自分を顧みず、ただひたすら誰かのために、また誰かを愛する心で、または誰かに復讐するために突っ走ってきた彼は、いつの間にか医師という自分の夢と普通の人生、本来の人格を全て忘れ、闇に逆らい終わりに向かって走っている。カン・マルが世話すべき対象は、病気の妹チョコから記憶を失ったソ・ウンギに変わり、ハン・ジェヒは愛の対象から復讐の対象になった。そしてその愛は、利用する対象として近づいたソ・ウンギのものになった。

結果的に「優しい男」の“優しさ”は、変化の可能性を持たない平面的な人物でない、誰かのためには優しくなれる人、それにより優しくも悪くもなれる、またその反対にもなれる人間の特性を指している。

加えてカン・マルの“優しさ”は、ひたすら愛する人へのみ向かっている。ハン・ジェヒには絶対的に優しい男だった彼の愛は、ソ・ウンギに移っていった。ハン・ジェヒにより頓挫し凍りついた本来の心は、またソ・ウンギに出会い再び白紙に戻る。

ソ・ウンギが自分の欲望や愛のために突進できるのに比べ、他人のための人生を暮らしていたカン・マルは、ソ・ウンギのための犠牲の道と、ソ・ウンギと一緒に愛し合いながら暮らす幸せな道の間で葛藤しているようだ。実際は似て非なるものではないのである。最後に、到底想定できない彼の本音が、何の色も帯びないもう一つの“白紙”としてのカン・マルを表している。

記者 : キム・ミングァン