「シンイ-信義-」「Dr.JIN」「王になった男」フュージョン時代劇の共通点とは?

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“もしも歴史が変わったら”という心理の反映

「大王の夢」のような正統派の時代劇もあるが、最近、ドラマにおける時代劇のトレンドは正統派ではなく、フュージョンである。いや、ドラマだけではない。映画も同様である。映画「私は王である!」や「王になった男」もそれぞれ世宗(セジョン)大王と光海君(クァンヘグン)を描いてはいるものの、正統派の時代劇からはほど遠い。

月火ドラマ「シンイ-信義-」もフュージョン時代劇である。「シンイ-信義-」は、同じくフュージョン時代劇でつい最近終了した「Dr.JIN」のように、タイムスリップを題材にしている。両方とも現代の医師が過去の世界にタイムスリップして活躍する内容である。「シンイ-信義-」のユ・ウンス(キム・ヒソン)は第10話で、虫垂炎に苦しむ一人の少年を救った。

だが、彼女は救うべきではない人物を救ったのだろうか。虫垂炎で苦しんでいた少年は他でもないイ・ソンゲ(朝鮮の創始者)だった。私たちが歴史書で習った通りなら、イ・ソンゲは恭愍王(コンミンワン:リュ・ドクファン)とチェ・ヨン(イ・ミンホ)の潜在的な“敵”である。

高麗を滅亡させるのも、チェ・ヨンを殺害するのもすべてイ・ソンゲによるものである。ユ・ウンスがイ・ソンゲを救ったということは、チェ・ヨンを殺す人物をユ・ウンスが救ったということだ。チェ・ヨンや恭愍王の未来を、歴史を通じてすでに知っているユ・ウンスはパニックを起こしてしまう。

恭愍王と対立関係にあるキチョル(ユ・オソン)からみると、ユ・ウンスはまさに“マストアイテム”と言えるキャラクターである。この先、何が起こるかを知っているユ・ウンスを味方にすれば、キチョルには千軍万馬だろう。ユ・ウンスは、高麗時代にはない現代の医術を持つ“神医”であり、未来を知っている“予言者”的な存在としても魅力的なキャラクターである。

未来を知りたがるのはキチョルだけではない。「Dr.JIN」の興宣大院君(フンソンデウォングン:イ・ボムス)もジン・ヒョク(ソン・スンホン)が知っている朝鮮の未来を知りたがる。このようにユ・ウンスとジン・ヒョクは最先端の医術を持つ医師であると同時に、未来を知る予言者としての能力も持つキャラクターであるため、キチョルや興宣大院君にとっては、決して手放せない人物である。

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ところで、タイムスリップを題材にするこれらのフュージョン時代劇「Dr.JIN」や「シンイ-信義-」の時代的な状況を詳しく見てみると、一つの共通点がある。どちらも“一時代の末期”にタイムスリップしたということである。「シンイ-信義-」のユ・ウンスがタイムスリップした時代は、高麗の前期や中期ではなく、恭愍王統治下の高麗末期である。「Dr.JIN」も朝鮮前期や中期ではなく、興宣大院君が治める朝鮮末期である。

これは偶然だろうか。一時代の末期に現代の医師がタイムスリップするというフュージョン時代劇には、“歴史を変えたい”という大衆の心理が反映されている。ユ・ウンスとジン・ヒョクが歴史を変えうるということは、統治者である恭愍王や興宣大院君が“当時、このようにしていたら、歴史はこう変わったかもしれない”という人々の心理を表す。

このような心理は、私たちが生きる現代に人々が満足していないということを潜在的に意味している。現代社会に満足していれば、ユ・ウンスとジン・ヒョクがあえて激動の時代にタイムスリップする必要はない。

彼らが恭愍王や興宣大院君の時代にタイムスリップするということは、もしも彼らがこのように国を治めていれば、歴史は変わっただろう、そして私たちの生きる現代も今とは違っているだろうという期待が込められている。

歴史が変わって現実も変わるというドラマの中での期待感は、逆に言えば、私たちの生きている社会が満足なものではないという心理を反映している。もし今のこの社会が満足であれば、タイムスリップした医師が歴史を変えることで現代を変えたいという気持ちは最初からないだろう。

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このような心理はドラマだけのものではない。映画「王になった男」にも明確に表れている。もし、光海君のふりをするハソン(イ・ビョンホン)のように当時の光海君が明に対して、権威主義的な外交ではなく、清という新しい強国と実利を重視した外交のできる十分な時間があったなら、丙子胡乱(1637年に清が朝鮮に侵入した戦い)は起こらなかっただろうという心理が反映されている。

ドラマであれ映画であれ、“もし歴史が変わったら”という仮定は、我々の社会を変えたいという気持ちがそれほど強いということを意味するのではないだろうか。

“もし歴史が変わったら”という心理がフュージョン時代劇に反映されていなければ、ユ・ウンスは高麗末期ではなく高麗前期や中期へ、ジン・ヒョクは朝鮮末期ではなく前期や中期へタイムスリップしたかもしれない。これは歴史を変え、現在も変えたいという、今の社会に満足できない心理を反映している現象なのである。

記者 : パク・ジョンファン