「10人の泥棒たち」キム・ユンソク、アクション俳優としての潜在能力がすごい!

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初対面から、只者ではないと思った。もじゃもじゃのヒゲに、長髪、メガネ越しの眼差しは、見る者を頭の天辺から足の爪先まで緊張させる。右顔からは「チェイサー」のオム・ジュンホが、左顔からは「タチャ イカサマ師」のアグィが見える。勇気を出して正面の顔を見てみた。やっと「10人の泥棒たち」のマカオ・パクに会えた。

俳優キム・ユンソク(44)の眼差しは以前よりも揺るぎのないものとなり、心臓の鼓動は一層大きくなっていた。映画「10人の泥棒たち」(監督:チェ・ドンフン、制作:株式会社Caper Film)で、カジノに隠されているダイヤモンド“太陽の涙”を盗むための作戦を練り、指揮を執る泥棒、マカオ・パクを演じたキム・ユンソクは、今回でチェ・ドンフン監督の作品に4度目の出演となる。幸い、チェ・ドンフン監督との映画は毎回ヒットし、大きな成果を上げ、チェ・ドンフン監督との息ぴったりのコンビプレイを証明してきた。「10人の泥棒たち」も“最高だ”という好評を得ており、興行成績への期待も高まっている。だからだろうか、“野獣”ことキム・ユンソクの顔からは、笑顔が消えない。

「今はまだ、共演者たちもインタビューや他のスケジュールで忙しく、実感はできていません。だけど、いい評価が出ているようで、とりあえず安心しています。まあ、たまに予想を裏切る方もいるんですけどね(笑)」

「ダークナイト ライジング、真剣勝負だ!」

名前だけで観客に信頼を与える俳優がいる。“国民の俳優”アン・ソンギをはじめ、チェ・ミンシク、パク・チュンフン、ハン・ソッキュなど、演技力はもちろん、興行成績をも手にしているそんな俳優たちだ。キム・ユンソクも“国民の俳優”として名を連ねるに十分な資格のある俳優だ。彼に「135分の上映時間が、あっという間でした」と声をかけると「それをぜひ記事にしてください」と笑ってくれた。キム・ユンソクのこの図々しさは、自信があるから出てくるものだろう。

まずは「10人の泥棒たち」のシナリオについて聞いた。彼も他の共演者たちと同じく「10人のキャラクターが全部気に入った」と即答してくれた。自分のキャラクターにハマることだけでも十分な時間はなかったはずなのに、彼は10人の泥棒たち全員にハマっていた。

欲張りな俳優、キム・ユンソクは「シナリオを見る時、僕は僕の役だけを見るタイプではありません。全体的な絵を描いてみます。10人のキャラクターがとても個性があって、年齢別にそれぞれの魅力がありました。男性キャラクターにも好感を持てましたが、女性キャラクターが非常に魅力的でした。『ペプシ(キム・ヘス)、イェニコール(チョン・ジヒョン)、ガム(キム・ヘスク)がどんな風に描かれるのだろう』と気になりました。また、中国の俳優との共演で英語ではなく中国語の台詞を使うというところが簡単ではないだろうと思い、好奇心に火がつきましたね」と伝えた。

犯罪映画の帝王、イム・ダルファと共演できるということが光栄であったというキム・ユンソクは、チェ・ドンフン監督のキャスティング能力を絶賛した。

「代案がないと思うくらいに、完璧なキャスティングで驚きました。これこそチェ・ドンフン監督の素晴らしい能力ですね。このようなシナリオ、キャラクターを作り上げるということは、まさに最高だとしか言えません。10人の役者を一糸乱れず動かすというのは、容易くないことですが、本当にすごいです」

「10人の泥棒たち」の公開日が決まった当時、一部の映画関係者は「トップ俳優揃いの作品が、ハリウッドの大作映画に埋もれてしまうのではないか」と心配していた。「10人の泥棒たち」と「ダークナイト ライジング」(監督:クリストファー・ノーラン)の真剣勝負が注目を集めたが、映画の試写会後「やってみる価値のある面白いゲームになるだろう」という評価が続いた。

これについてキム・ユンソクは「例えば、韓国でサッカーのワールドカップが開かれているのに、韓国代表がベスト16で終わってしまったら面白くないでしょう。『10人の泥棒たち』は映画の韓国代表です。『真剣勝負でやってみよう』という気持ちで、決勝戦に臨みたいです」と自信を見せた。まるでアームバンドをつけたキャプテンのようだった。

「電線一本でステージをものにすること。これが韓国型のアクション」

「10人の泥棒たち」は、詰め合わせギフトセットから一つずつ袋を開けてみるような快感がする映画だ。特に、映画の序盤では大人しかったキム・ユンソクが、後半にはものすごい迫力を見せる。何よりも口があんぐりと開くほどのワイヤーアクションシーンは、キム・ユンソクの強烈な存在感をアピールするに十分であった。

本当のアクション俳優として生まれ変わったキム・ユンソクは「寂しかった」という言葉でまとめた。視線を独占する圧倒的なアクションシーンに、「寂しい」とは。予想外の感想だった。

「ワイヤーアクションシーンだけ、1人で1ヶ月間も撮りました。すごく寂しかったです。役者たちと台詞のやりとりをすることができず、ただ僕のアクションと数十のカメラとの戦いでした。『もう二度とやるか』と、チェ・ドンフン監督を恨んだりもしましたよ」

キム・ユンソクは「最後のアクションシーンは、本当に大事なシーンです。この映画は犯罪ムービーですが、その泥棒たちのストーリーは5割ぐらいで、残りの5割はアクションです。最初は賢く緻密に、たまには優しい嘘で作戦を展開し、最後はリアルな生身のアクションを見せます。くもの糸も、マントも、最先端の装備もありません。電線一本でステージをものにすること。これこそが韓国型のアクションです」

マカオ・パクというキャラクターは、知れば知るほど不思議な人物だ。映画の中盤まで消極的だったマカオ・パクは、後半になってどんでん返しを試み、その存在感を放つ。キム・ユンソク本人とも似ているようだ。キム・ユンソクは「ペプシとのラブストーリーも描かれますが、マカオ・パクは主に水面下で働く人物です。主に指示を与え、伝達をする役ですが、イェニコールやザンパノ(キム・スヒョン)、ポパイ(イ・ジョンジェ)らが表を飾るとしたら、僕は彼らのサポート役だと言えるでしょう」とマカオ・パクへの説明も忘れなかった。

キム・ユンソクはマカオから釜山(プサン)に渡る時がマカオ・パクのターニングポイントであると話した。また、ものすごい泥棒たちを率いるリーダーとしてのプレッシャーについて聞くと、重い責任感を感じたと打ち明けた。

「マカオ・パクは劇の中盤までは解説者としての性格が強いです。自分を絶対に表に出さず、他のキャラクターが思いっきり活躍できるように、ステージを設けてあげなければなりませんでした。大変でした。プレッシャーも相当なものでしたね。チェ・ドンフン監督は、いつも僕に映画の最後を飾れる役を与えてくれます。『タチャ イカサマ師』の時もそうでしたし、僕は切り札の役なんですね。仲間がせっかく上手くドリブルをしてきたのに、僕がゴールを決められなかったらいけないじゃないですか。僕にとって、最後のゴールとはワイヤーアクションでしたが、上手く決められたような気がします。アクション俳優としての僕キム・ユンソクの潜在能力が炸裂した感じですね(笑)」

「美しいキム・ヘスとの共演、ドキドキしちゃいました」

「10人の泥棒たち」はアクションだけの映画ではない。恋愛も大きな軸だ。マカオ・パクとペプシの緊張感溢れる心理戦や恋愛も、観客を虜にするには十分な要素だった。

しかし、思ったよりセクシーなシーンは少ない。キム・ユンソクに物足りなさを訴えると「チェ・ドンフン監督が第2弾のために温存しといたみたいだ。もし続編が出るとしたら今回はR-19で、肌色がきちんと見え、セクシーになるかも」と冗談で答えてくれた。

元々仲良しであるとキム・ヘスとの友情をアピールした彼は、キム・ヘスを女性として、仲間として、そして人として大事に思うと絶賛した。

「1%の嘘もなく、本当にキム・ヘスは年をとるほどもっと綺麗になって、もっとカッコよくなるんですよ。本当にコツが知りたいぐらいです。キム・ヘスは内面と外見がどんどん磨かれているような感じがします。魔性の女性、チョンマダム役(『タチャ イカサマ師』)も似合いますが、心に深い傷を負う成熟した女性、ペプシ役も似合います。ペプシを演じる時、ユニークな自分だけの感情を注ぎ込み、キム・ヘスのものにしていることには感嘆しました。年をとったおかげで、内面の美しさが外に出るようになって、その美しさが今は溢れ出ているんです。僕も共演しながらドキドキしちゃいました」

今後がもっと楽しみであるというキム・ヘスを語り「こんなボディラインはどうやって作ったんだろう」と感嘆するキム・ユンソク。10年後のチョン・ジヒョンからは想像できないボディラインであると、ジョークも飛ばしてくれた。

キム・ユンソクの思うキム・ヘスが、年をとるほど美しくなる女性であるとしたら、イェニコール役のチョン・ジヒョンはどのような感じなのだろうか。このインタビューに先立って行われたTVレポートとのインタビューで、チョン・ジヒョンは先輩のキム・ユンソクと“親友”になったと打ち明けていた。

チョン・ジヒョンについてキム・ユンソクは「チョン・ジヒョンは、すごく表裏のない人です。これまで知られていた清楚なイメージ、神秘なイメージのせいで、周りの人が気を使っているようです。見せる機会がなかっただけで、本当に表裏のない人です」と評価した。本当のチョン・ジヒョンの姿が世間には知らされていなくて残念だというキム・ユンソクは、まるで男同士のように「スポーツで仲良くなった」とチョン・ジヒョンとの友情を語った。

「チェ・ドンフン監督がシャープなイメージのマカオ・パクを望んでおり、ダイエットをするしかありませんでした。チョン・ジヒョンはすごい運動好きで、一緒に運動をしながらとても仲良くなりました。チョン・ジヒョンから見たら、僕って気楽に話せる、お腹の出たおじさんだったのでしょう。僕は結婚しているし、スキャンダルになるはずもないので、チョン・ジヒョンにとって遠慮なく仲良くなれる人だったと思います。キム・ヘスも一役買ってくれました。僕がチョン・ジヒョンの母代わりで、キム・ヘスが父代わりでしたよ(笑)」

「マカオ・パクの台詞の中で『追われたらどんな感じだと思う?すごく寂しいんだよ』という言葉があります。彼は仲間に裏切られ、すべてを失い、寂しがっていた人物です。その経験で慎重になり、冷静になりました。ポーカーフェイスで泥棒たちの展開する楽しいステージを見守り、最後は大きく一発やって見せます。ものすごい潜在能力が炸裂するんですが、それがまた、僕に似ているんです」

記者 : チョ・ジヨン、写真 : キム・ヨンドク