「Dr.JIN」ジンヒョク先生はなぜ朝鮮時代に送られたんでしょうか? ― コラムニスト チョン・ソクヒからの手紙

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MBC「Dr.JIN」のジン・ヒョク先生へ

世の中にはきっと弟子を心から愛する立派な先生が多いと思いますが、どうして私の学生時代を振り返ると、先生らしくない方々の思い出がこんなに多いのか不思議です。それは師匠として信じて従えるのは、人間的にどこが欠けている人が多かったからです。本人の気分で気まぐれを起こしながら生徒たちを苦しめた人もいたし、お金や権力に非常に弱かった人、さらには女子高生の時に、今なら法律で処罰を受けるほどのセクハラをした人もいました。

そんな意味で、痛みに苦しむ患者たちと一生向かい合わなければならない医者も同じだと思います。なぜなら、ヒポクラテスの誓い(医師の倫理・任務などについてのギリシャ神への宣誓文)を守りながらベストを尽くす医者たちがはるかに多いはずですが、医者といえば、冷た過ぎてときには患者を面倒くさがるように見る医療関係者たちが頭の中に浮かぶからです。それはまさにMBCドラマ「Dr.JIN」のジン・ヒョク(ソン・スンホン)先生のような人のことです。

ミナさんが、変わったジン・ヒョクさんの姿を見たら、どれほど喜んだでしょう

医療支援のためボランティア活動に行ったユ・ミナ(パク・ミニョン)さんが、倒れた患者を発見し救急センターに運んできて、「奇跡が起きるかもしれないから、とりあえず手術してみましょう」とジン・ヒョクさんに頼む。しかし、もう助けられないと判断したジン・ヒョクさんはいつも通りにきっぱり答えます。「もう遅い。僕の診断は間違いないから。手術しても結果は変わらないよ。1%も可能性はない」

しかも、父親と2人きりで住んでいる患者の幼い息子が全部聞いているのに、ジン・ヒョクさんは子供が受けるショックなど全然気にしていないみたいです。いや、むしろ、どうせ知ることになるのなら、あえて隠すより早く知らせた方がいいと思ったのかもしれません。「可能性が0.1%でもあれば、助けるべきです。患者が死にかけているのに医者が助けられないという一言で終わりにするんですか?あなたは私があの患者だったとしてもそうするつもりなの?」と、恋人である自分が死にかけるときでも、今のように簡単に諦められるのかとミナさんが追い詰めたが、ジン・ヒョクさんはやはりいつも通りの冷静な口調で「悪いけど、ダメなものはダメだ」と答えます。そう原則は原則ということ!

しかし、その原則はわずか10分もしないうちに破れてしまいます。ミナさんが突然、交通事故に遭い、そんなミナさんをどうにか助けようとジン・ヒョクさんが手術台の前に立ったからです。たぶん、そのときの彼はほんの小さな希望でも掴みたい気持ちだったでしょうね。

ところが、本当に不思議です。そんなジン・ヒョクさんがタイムスリップした朝鮮時代では、同じような状況に陥るたびにどうにか患者を助けようと最善を尽くすからです。ミナさんにそっくりなヨンレお嬢様の兄ヨンフィ(ジン・イハン)と、権力を持つ左議政キム・ビョンヒ(キム・ウンス)を助けたのは何となく分かりますが、小屋に住む貧しくみすぼらしい人のためにも危険な脳手術をしました。医療設備は全く足りないし、手伝ってくれる人手も足りなかったのに、母親を助けたい子供の切なる願いを断らなかったんです。まるで別人になったように、彼が変わったんです。

そんな中、疫病が蔓延し、ジン・ヒョクさんは活人署(ファリンソ、朝鮮時代にソウルで貧しい民の医療を行った官庁)にすぐに行って庶民たちを治療するようにと侍医の命令を授かることになりました。もし2012年だったら、韓国最高の神経外科の医師にくだらない伝染病の治療を任すなんてありえないと怒ったはずですが、ヨンレお嬢様が引き止めてもジン・ヒョクさんはためらいなく現場に行って、コレラの治療に専念します。それだけではなく、疫病は化け物のいたずらであるから、もし華陀(中国の後漢末期の名医)が蘇ったとしても疫病を治すことはできないと信じる無知蒙昧な医者たちと喧嘩までしたんです。そして、そうするうちに、息を引きとったコレラ患者を見て涙を流します。意外でした。ジン・ヒョクさんのわがままな姿に失望したミナさんが、そんな彼を見たらどれほど喜んだでしょうか。

ジン・ヒョクさんが目覚めたことによる変化を期待しています

しかし、朝鮮時代にろくな治療薬もなしで蔓延しているコレラ菌を根絶するということは決して簡単ではありません。挫折して諦めようとしたとき、ヨンレお嬢様が訪ねてきて「どんなことでも手伝いたい」と言い彼の力になってくれます。ヨンレお嬢様の生まれ変わった人がミナさんのはずですが、顔だけがそっくりなのではなく、性格も全く同じでした。ヨンレお嬢様は将来、興宣大院君(フンソンデウォングン)になるイ・ハウン(イ・ボムス)と力を合わせ、またヨンフィとの協力で、今後たくさんの庶民たちの命を救えると思います。

それならば、どうしてジン・ヒョクさんは朝鮮時代に送られたんでしょう。将来、高宗(コジョン)になるミョンボクの命を救うため?それは違うと思います。むしろ、2012年を生きるジン・ヒョクさんにあることを悟らせるために朝鮮時代にタイムスリップさせたのだと思います。すでに、ジン・ヒョクさんは変わりましたから。2012年に戻ってきた彼が何かやるべきことがあるのではないでしょうか。とにかく、朝鮮時代にタイムスリップしたジン・ヒョクさんの力により韓国の開化期に変化が起きるとしたら、腐敗や堕落が少しでも減少すれば良いと思います。

コラムニスト チョン・ソクヒより

記者 : チョン・ソクヒ(コラムニスト)、編集 : イ・ジヘ、翻訳 : ナ・ウンジョン