「屋根部屋のプリンス」ストーリーを繋げる“縁”…それ以上の感動

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第19話、悲しい縁に恨みを晴らして大詰め…最終回はもしかすると“ロマンチックサービス”?

先日、インターネットでの“マンチッナム(漫画から抜け出た男)”アンケートで、SBS「屋根部屋のプリンス」でイ・ガクを演じるJYJ ユチョンが1位になった。「屋根部屋のプリンス」は、カッコいい男が平凡な女に出会い恋に落ちる、少女漫画の典型的なストーリー性を持っている。しかし、大詰めの最終回だけを残している「屋根部屋のプリンス」は少女漫画以上の感動を与えた。

第19話の最後の部分で、朝鮮時代からタイムスリップしてきた皇太子らはト・チサンから順に一人ずつ消え始めた。パク・ハとの誓いのキスを最後に、イ・ガクも薄くなり消えてしまった。これは、皇太子らが300年という時間を超えて現代に飛ばされたミッションをクリアしたという意味になるが、それでは彼らのミッションとは、果たして何だったのだろうか。

写真=SBS
イ・ヒミョン脚本家は、他のドラマに見られるマクチャンドラマ(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国特有のドラマ)の典型的な最後や、悪行に対する復讐の代わりに、縁の大切さを掲げている。パク・ハとイ・ガクの結ばれなかった縁を取り持ち、“結者解之(結んだ者がそれを解くべき=自分の過ちは自分で解決すべき)”という面から、セナがパク・ハに肝臓を移植してあげることで、悪縁を断ち切った。よく、幽霊映画で幽霊たちがその恨みを晴らせず、この世とあの世を往き来しているように、無念に死んでいったパク・ハの冤魂を、そしてその無念さにより、300年後にまた繰り返される転生の関係を皇太子が断ち切ったのだ。これはまるで、この世に生まれることを輪廻を脱することが出来なかった結果とみなし、解脱して初めて輪廻を断ち切ることが出来る仏教式の輪廻観を見ているようだ。

また、イ・ガクがパク・ハに「現世に渡ってきてやったことは、君を愛したことしかない」と打ち明けるが、これはどこへ跳ねるか知らないストーリー的な興味にハマった人には、少し虚しい結論かも知れない。しかし、イ・ガクの現世へのタイムスリップの理由は、結局パク・ハとの結ばれなかった縁、それ以上でも以下でもなかったという、少女漫画的なラブコメディの典型となっている。また、その縁の大切さを強調するところで、本源的な感動を与える叙事でもある。そのため、結局縁を見つけることが出来たが、そのせいでミッションをクリアして消えていく皇太子の姿、そして彼に向かってただ涙を流すしかないパク・ハの姿は、純粋な愛の結晶として感じられる。

まだ最終話が残っており、その話で「屋根部屋のプリンス」が典型的なラブコメディらしい転覆を見せるかもしれない。しかし、すでに第19話でイ・ヒミョン脚本家は「屋根部屋のプリンス」を通じて伝えたいメッセージを十分伝えたと思われる。逆に、残った最終回は、二人の愛を懇切に願う視聴者へのサービスカットとしての意義が濃くなると予想される。

このように、人生の節目に出くわした予期せぬ事件を通じて、現代のもつれた縁を正す展開は、1年前のドラマ「私の期限は49日」で試みられた方式だ。「私の期限は49日」は、ヒロインが死の前に迎えた49日という猶予期間を通じて身のまわりの縁を振り返るという内容だった。「屋根部屋のプリンス」はこれよりスケールが大きく、過去の縁のもつれが転生しても繰り返され、それを正すという展開になっている。

ただ、「私の期限は49日」は死を前にして振り返る人生というテーマにヒロインのキャラクターが押され、ハン・ガンとシン・ジヒョンの恋が十分発揮されなかったが、初めからラブコメディを標榜した「屋根部屋のプリンス」は、愛で結ばれなければならない二人のすれ違った運命を掲げ、テーマをさらに感性的に伝えている面で一層感動を与えている。

写真=SBS
もちろん、韓国のドラマは後半へ向かうほど撮影に追われ、ドラマの完成度を十分に保てない傾向があり、「屋根部屋のプリンス」も苦笑いが出る設定が多くなっていたが、第19話に示した切ない主題意識だけでも、ラブコメディの進化として評価に値する。

また、このような「屋根部屋のプリンス」の成果は、良いストーリーだけでなく登場人物一人一人が、まるでその人物になったかのような素晴らしい演技との組み合わせに支えたれたものだった。

“マンチッナム”にまで選ばれたイ・ガク役のユチョンは、3つ目のドラマ主演とは信じがたいほど泣きわめき、怒り狂い、弄ばれ、みっともない姿を見せながら、依然として上品で愛らしい朝鮮の皇太子の役柄を、柔軟で素晴らしく演じ抜いた。また、彼がそのように様々な演技を思う存分披露できたのは、演技の先輩であるパク・ハ役のハン・ジミンの熱演のおかげだというところも無視出来ない。

それだけではない。一時は恋物語の主人公だけに留まっていたイ・テソンの、役を楽しむかのような悪役演技、「千日の約束」のあの優しい姿の欠片もないセナ役のチョン・ユミの悪役に、画面に写らないとどこか物足りない腹心3人組のイ・ミノ、チェ・ウシク、チョン・ソグォンの個性豊かな演技などが、「屋根部屋のプリンス」を忘れられぬ魅力で満たしたことは、言うまでもないだろう。

記者 : イ・ジョンヒ