「ネバーエンディングストーリー」チョン・リョウォン“映画の中の分身たちから家賃もらっています”

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日曜日の午前10時。インタビューする人も、受ける人もあまりうれしくはない時間。
SBSドラマ「サラリーマン楚漢志」のタイトな撮影スケジュールの合間をぬって現れたチョン・リョウォンと、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで会った。明け方まで撮影し、車で少し寝ただけだという彼女は元気だった。5分で眠気が吹っ飛ぶほど口が達者で、例えるのが上手かった。オーストラリアに留学した彼女の口から「奥さんが可愛ければ、妻の実家の杭にもおじぎするのでは(妻の実家に良くする、何でもよく見える)」という言葉も出てきた。


「『この美貌で、嫁にいけないことはないでしょ!』なんて恥ずかしくて耐えられない」

席に着き、すぐに手帳を開いた彼女は「すみませんが、お名前は」と聞いてきた。「こんな早い時間に、私のために時間を割いていただいた方の名前は全部メモしておきたいです」と話した。「二つの顔の猟奇的な彼女」「彼とわたしの漂流日記」「敵と共に眠る」「痛み」「ネバーエンディングストーリー」まで、現場のスタッフ一人ひとりに、カードを書いて渡すという彼女に、その理由を聞いた。

彼女は「『敵と共に眠る』を撮るとき、皆、草にかぶれるほど苦労しました。でもスタッフは俳優の10倍以上苦労していました。労働に対する正当な対価がないのが、最も大きな罪だと思います。私の小さな心をこんな風に表現したかったのです」と答えた。

従業員がコーヒーとワッフルを持ってくると、「Yo-ho!」と感嘆詞を連発した彼女は「粉物もいいですが、昼はご飯いただいてもいいですか」と聞いてきた。
「ネバーエンディングストーリー」に250万人の観客が入ったら、結婚するというオム・テウンの突発的な発言について聞かずにはいられなかった。「なんだ、またその話?」と、飽きたような表情をしたが、すぐ答えてくれた。

「テウンさんが、映画をPRするために言ったことですが、それだけ私と息が合ったという話じゃないですか。人の結婚を邪魔する気かと、怒ることもできますが、テウンさんが何を考えているか、よく分かっているので、気にしていません。テウンさんは私の演技のために、カメラに写らないのに、目を見つめてくれました。それって、なかなかできないことです。MBTI(性格診断)の結果は、私と同じく、感性的で人の些細な言葉に傷つきやすい、眼球のようなタイプでした」

「全ての映画は、大切なことを一つずつ気づかせてくれる」と言う彼女は、「一度、小道具を担当していたスタッフが失明する事故に遭いました。私よりも年下の彼女の元へお見舞いで訪れたら、大丈夫だと、私を慰めました。慰めに行ったのに、慰められる気持ちが分かりますか」と話すとき、目元をしっとり濡らしていた。「世の中や他人が自分と同じだとは限らないじゃないですか」と言っても、動じなかった。

「もし、善意を悪意として受け止めるとしても、結局、そう受け止める人が損をするだけです。私の気持ちがもっと大きければ、人の心が私の心の中に入ってくるようになるんですよ(笑) 私は作品でも、愛でも、決めるまでが難しいんです。しかし、一度決めたら、全てを注ぎます。なので、今まで出演した作品に後悔したことは一度もありません」

「ネバーエンディングストーリー」で演じたオ・ソンギョンについて、最初は「憎たらしくて!」と笑った。「この美貌で、嫁にいけないわけがない、という台詞があるのですが、私も引いちゃって(笑) 監督に『ソンギョンが憎たらしすぎます』と駄々をこねたりもしました。私はB型ですが、性格はテウンさんが演じたドンジュの方が似てます。もめる場面ではこっそり逃げるタイプです。ですが、ソンギョンは機関銃のように、自分が言いたいことは全部言い切るキャラクターでした」


「泣き顔がキレイじゃなくて、不満」

そんなオ・ソンギョンがいきなりこのカフェに入ってきたら、どうするかという質問には「まず、引っ越したところはどうかと、聞きます」と話した。「私は自分が演じた役にいつも、心の部屋を貸します。家賃が多少遅れても、出て行けと言わないですが、だからといっていつまでも住ませているわけではありません。会者定離、去者必返(出会った人とはいつか別れることが決まっていて、別れた人とはまた必ず出会う)。いつかは別れなければならないのを知っていますから。ソンギョンは家賃もちゃんと払って、大家を悩ませることなく、出て行った子です」

劇中でチョン・リョウォンはドンジュと同じ余命3か月の宣告を受けたが、ドンジュの状態が好転し、手術を受けると、何も言わずに地元へと姿を消す。一瞬にして恋人をなくしたドンジュとソンギョンの姿が、観客の涙腺を刺激する。

「病院でもう、希望がないという話を聞き、これ以上ドンジュと一緒にいてはいけない。もう付きまとうのは止めようと決心したのです。キレイさっぱりのソンギョンなのに、愛する人に自分が果たして役に立つのか?と深く考えて決めた、愛する人への思いやりなのです」

新人監督との仕事がほとんどだと言うと、「クァク・キョンテク監督もいました。とてもアメイジングな経験でした」と言いながら、笑った。「麺をすするように、するっと撮影が終わりました。何かに取りつかれたかのように、4ヵ月が過ぎていったのです。『痛み』を撮影しながら、やはり経験に勝るものはないと、実感しました」

自分が考える自分の短所と長所を聞くと「クリエイティブなところは長所ですが、女優なのに、キレイに泣けないのがいつも不満です」と話した。「顔をゆがませば、額に川の字のようなシワができて、鼻も赤くなります。自然な演技のようですが、キレイではないですね。それから、感情は豊富だけど、理性が働かなければならないとき、きちんと働かないところも直したいです」

「痛み」で演じたドンヒョンのように家でミシンを使うことが好きで、東大門(トンデムン)アクセサリーの副材料市場に行けば、手が震えるほど興奮すると、普段の姿を話した。「東大門は熱気がすごくて、2時間歩き回っただけでも頭がくらくらすると言いますが、私はご飯食べる時間ももったいないと思って、サンドイッチを食べながら、歩き回ります。どんなにがんばっても、楽しむ人には勝てないという言葉があるじゃないですか。いつか、演技も楽しめるようになりたいです」

記者 : キム・ボムソク、写真:ソン・ヒョジン