【PEOPLE】シン・ハギュンを構成する5つのキーワード

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「あきれた男たち」「SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男」「JSA」「ガン&トークス」「ムッチマ・ファミリー」「復讐者に憐れみを」「サプライズ」「地球を守れ!」「天国からの手紙」「マイ・ブラザー」「トンマッコルへようこそ」「拍手する時に去れ」「礼儀なきものたち」「ザ・ゲーム」「渇き」「カフェノワール」「フェスティバル」「高地戦」―俳優シン・ハギュンがここ10年間に出演した映画。そして演じて、演じて、演じ続ける、ある俳優の物語。


ジェームズ・ディーン

短い生涯を終えた、青春を代表する伝説的な俳優。
シン・ハギュンは10代の頃、学校前のトッポッキ屋に貼ってあったポスターでジェームズ・ディーンのタバコを吸う姿を見て、一気に心を奪われた。その後、シン・ハギュンはジェームズ・ディーンを「ジミー」と呼んで、彼の作品はもちろん、様々な映画を見た。
「表現することが下手で、考えや感情を自分の中に溜めておく子」だった彼は、映画というものに出会い、彼を「興奮させ楽しくさせるもの」を見つけた。そして、映画を勉強しようと決めソウル芸術大学の入試を受ける。当時、シン・ハギュンは演技の授業などまったく受けたことがなかったにも関わらず、見事に合格。自分でも「僕、向いてるかも?」と思ったという。


チャン・ジン

シン・ハギュンがソウル芸術大学で出会ったサークルの先輩。
チャン・ジン監督は当時、学校内の有名人で、シン・ハギュンは彼が復学して学校に戻ってきた日に、彼を見に校門の前まで行ったという。
チャン・ジン監督は学校に戻ってすぐに舞台をやろうと提案し、シン・ハギュンは一緒に舞台を始めた。そこで俳優のファン・ジョンミンやチョン・ジェヨンなどの先輩とも仲良くなった。

当時の縁をきっかけに、シン・ハギュンはチャン・ジン監督と一緒に舞台を続け、シン・ハギュンのデビュー作もチャン・シン監督の映画デビュー作「あきれた男たち」だった。毎回、自殺に失敗するシン・ハギュンのキャラクターは印象的だったが、映画は人気が出ず、シン・ハギュンは舞台に戻って演技力を鍛えた。そのため、シン・ハギュンは舞台俳優としての明確なアイデンティティも持っている。シン・ハギュンは舞台と映画について「舞台は失敗しても次回にうまくやればそれで自分を慰めることができる。でも、映画は1回やった演技を2度と直せない」と話した。


パク・チャヌク

チャン・ジン監督と共に、シン・ハギュンの数多くの代表作を演出した監督。
チャン・ジン監督が「あきれた男たち」、「SPY リー・チョルジン 北朝鮮から来た男」、「ガン&トークス」などでシン・ハギュンにコミカルだけど個性のあるキャラクターを与え、パク・チャヌク監督は「JSA」で彼の知名度を上げて、「復讐者に憐れみを」と「渇き」で彼の中にある狂気や恐怖の姿を引き出した。にっこりと笑っていた青年が残酷な方法で復讐する。馬鹿と狂人の間にいるようなシン・ハギュンの姿は彼を映画の中で何をやらかすか予測できない人に思わせた。彼の純粋で穏やかな姿がかえって残酷さを倍増させ、馬鹿っぽい姿が彼を異常に見せる。
しかし、このように裏表がありそうなイメージだけでなく、「ガン&トークス」の天然キラーや、ドラマ「ナイスガイ」(MBC)では自分の出生の秘密を知ってどんどん暗い内面を持つようになる警察を演じるなど、彼のイメージをより一般受けしやすくするような作品にも出演した。

善と悪、純粋さと残酷さが共存する俳優。そして、「サプライズ」のように商業的でロマンチックな映画にも出演するが、「復讐者に憐れみを」のような酷い殺人を犯す役も断らない俳優。チャン・ジン監督はそんなシン・ハギュンについて「全宇宙の中で最も穏やかに見えるけど、時には近づけないほどの冷酷さが見える」と表現した。韓国映画界にどんな役でもうまく演じることができる若い俳優が登場した。


ペク・ユンシク

「地球を守れ!」で共演した俳優。
エイリアンを探して殺そうとする男とエイリアンに誤解された男の話という設定からも予想できるように、「地球を守れ!」は最初から最後まで非凡な想像力をもって作られた。最も高い制作費をかけて作られたカルトムービーの1つと言っても過言ではない映画だ。
「復讐者に憐れみを」までは現実の世界でとんでもない状況を作り出す人物を演じることが多かったが、「地球を守れ!」では、平凡な家庭で育った彼とはまったく違うキャラクターを演じた。社会に対する怒りや恨みを内面に潜めているという部分は現実だったが、「エイリアン狩り」に出る行動は非現実の領域だった。シン・ハギュンは映画に登場する類人猿まで自分で演じるほどの情熱を見せて、カットの合図が出ると動きは止まっても目つきがすぐに元に戻らないくらいキャラクターに没頭した。

ペク・ユンシクはシン・ハギュンについて「様々なキャラクターが身体の中にいるから、それを調節する能力さえあれば本当にすごい俳優になると思う」と話したこともある。「地球を守れ!」で少し大げさに思えるほどすべてを演技に捧げる若い俳優が、最高の人気作とロマンチックな映画の後に出演した奇妙な作品だった。ちなみに、シン・ハギュンは映画の設定のために、ペク・ユンシクの身体を実際に血が出るほどこすり、その上に本当に液体薬を塗っていた。


チョン・ジェヨン

シン・ハギュンの大学の先輩。
一緒に舞台をやり「トンマッコルへようこそ」など様々な作品で共演した俳優。「トンマッコルへようこそ」は最初チャン・ジン監督が舞台のために脚本と演出を担当した作品で、シン・ハギュンとチョン・ジェヨンはその舞台の時から一緒に出演した。その後、チャン・ジン監督が演出の代わりに制作を担当して映画化した。同じ時期に公開した「拍手する時に去れ」もチャン・ジン監督とシン・ハギュンが舞台の原作を元にして作った作品だ。

チャン・ジン監督はシン・ハギュンについて「『サプライズ』や『天国からの手紙』では彼の俳優の力量を疑うほど演技がイマイチだったと思う。でも、『地球を守れ!』と『復讐者に憐れみを』ではものすごい賛辞を受けるほど素晴らしい演技だった」と話し、シン・ハギュンは長所や短所がはっきりしている俳優であることを説明した。そして、チャン・ジン監督はシン・ハギュンと話し合ってキャラクターをより具体的に作りながら彼の長所が最大限に生かせるよう努力した。そして、「トンマッコルへようこそ」では純粋な心を持った軍人を演じ、「拍手する時に去れ」では本心の分からない殺人容疑者を演じて狂気があふれる目つきを見せた。以前のシン・ハギュンが作品の選択もキャラクターにおいても両極端を行き来していたが、この時期の彼は信頼の置ける監督や俳優と一緒に仕事をし、観客の共感を得ながら自分のスタイルも築くことができた。


ウォンビン

映画「マイ・ブラザー」、「ガン&トークス」で共演した美男子。
「マイ・ブラザー」では、シン・ハギュンが優等生をウォンビンが問題児を演じた。シン・ハギュンのキャラクターはお酒が飲めずサイダーを飲む設定だったが、実際にお酒を飲めないのはウォンビン、酒好きなのはシン・ハギュンだった。そのため、2人は酒を飲むシーンではお互いの飲み物を入れ替えて飲んだという。また、チョン・ジェヨンが「2時間一緒にいてお互いに二言くらいだけ話していた」と言うほど、2人とも無口な性格だ。

シン・ハギュンは「1年の半分くらい、家で1人酒を飲み、音楽を聞いて、映画はDVDで見て、プラモデルを作る」性格。そのため普段は誰とも話さず、「普段から神経質だけど、作品に入るとさらに敏感」になるくらい仕事に没頭する。インタビューの時もプライベートの話はなかなかせず、「僕は誰だろうか」というタイトルのホームページを運営していた時以外、インターネット上にも何も残していない。シン・ハギュンが数多くの作品で一匹狼や本心のわからない危ない考えを持つ人物を自然に演じられるのは、プライベートの姿をなかなか見せない彼の性格とも繋がりがありそうだ。映画でも実生活でも、彼には不思議なオーラがある。


チョン・ソンイル

映画の評論家兼、監督。
シン・ハギュンは彼の初演出作である「カフェノワール」に出演した。「カフェノワール」はジン・ハギュン自身も「理解しにくい」と話すほど難しい内容の映画だ。シン・ハギュンは去年の「カフェノワール」をはじめ、ここ3年間で映画「フェスティバル」、ドラマ「危機一髪!プンニョンマンション」(tvN)、映画「クイズ王」、映画「高地戦」、ドラマ「ブレイン 愛と野望」(KBS)などに出演している。

「人生の中で最もエネルギーがあふれる時は仕事をしている時」と言うこの俳優は、ジャンルやキャラクターを選ばず出演し、自分の演技に対して1度も満足したことがない。さらに自分の出演作は2度以上見ることができず、「死ぬまで俳優として生きること」を目標にしている。そのため、彼の出演作を見れば、ジャンルが統一されておらず、演技力も作品によってばらつきがある。

しかし、危険な事件に巻き込まれしまう無職の男を演じた「危機一髪!プンニョンマンション」で以前演じたキャラクターを使ったり、「フェスティバル」のように様々なエピソードの中で図々しいコメディ演技を見せたり、「高地戦」では話を観察する立場を演じるなど、彼は様々な姿を見せようとしている。更に時間が経てば、この様々な演技が1つに完成される日が来るのではないだろうか。


イ・ガンフン

「ブレイン 愛と野望」でシン・ハギュンが演じる医者の名前。
野心に満ちたキャラクター。しかし出世のために病院の実権を持つ人に取り入る程度しか描写されておらず、彼の野心の全貌はまだわかっていない。イ・ガンフンの内面もまだ、貧しさに対するコンプレックスやライバルへの嫉妬くらいに表現されているが、時折見せる、爆発寸前の感情を込めたシン・ハギュンの目つきからは、イ・ガンフンがこれから見せてくれる何かがまだあるのだと信じてしまう。

「ブレイン 愛と野望」はシン・ハギュンの数少ないドラマの出演作であると共に、彼が最近演じた作品の中で一番典型的な要素がある作品だ。これまでのシン・ハギュンは独特な雰囲気とスタイルで注目されていたが、ここ数年の作品は彼により広い範囲の様々な演技を求めている。「高地戦」でも自ら「観察する者であると同時に映画のストーリーを引っ張っていく話し手」と言う、他のどんな作品よりもリアクションを求められるキャラクターを演じた。

シン・ハギュンはデビューしてからずっと休みなく演じてきたが、今も変わらず自分なりの演技を続け、新しい領域を探していく。果たして彼はこれまでと違う演技をした「高地戦」と「ブレイン 愛と野望」で、自分の演技に対する新たな答えを出すことができるだろうか。

記者 : カン・ミョンソク