「紙の花」キム・ヘソン、演技への考えを語る“ストレスにならないように職業ではなく趣味だと思っている”

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写真=ROD PICTURES
「『紙の花』を温かい映画として覚えてください」

俳優のキム・ヘソンは最近、ソウル鍾路(チョンノ)区三清洞(サムチョンドン)にあるカフェで映画「紙の花」のインタビューを行った。

「紙の花」は事故で麻痺した息子と一緒に生きている葬儀屋ソンギル(アン・ソンギ)が、隣の家に引っ越してきた母娘と出会い、忘れていた人生への希望を抱いていく物語を描いた作品で、「第53回ヒューストン国際映画祭」で最優秀外国語長編映画賞に当たる「プラチナ賞」と、「男優主演賞(アン・ソンギ)」のトロフィーを手にした。資本主義の社会でも守るべき人間の尊厳と死の平等を繊細に描き、大きな衝撃を与える。

劇中キム・ヘソンは将来有望な医大生だったが、不意の事故で麻痺して体が不自由になり、人生の希望を諦めたまま生きているジヒョク役を演じた。ジヒョクは隣の家に引っ越してきたウンスク(S.E.S.のユジン)が世話を務めることで、事故以来忘れていた希望を初めて抱くようになる人物で、キム・ヘソンはシニカル(皮肉な様子)で気難しい姿からだんだん明るくなる姿まで幅広く演じ、作品に深さを与えた。

キム・ヘソンは「ヒューストン国際映画祭」の受賞ニュースと関連して「始まる前に制作会社の代表が言ったことがあります。『この映画が必ず海外映画祭で受賞することができるように、アン・ソンギ先輩が受賞することができるようにする』と。それが叶ってとても嬉しいです。公開を待っている状況で、力になる受賞だったため、俳優陣と監督も喜んでいました。みんなで映画祭に参加してその雰囲気を楽しみたかったのですが、今は厳しい状況です。それで簡素に僕たちだけで集まって写真を撮ったりしました」と受賞当時の様子を伝えた。

下半身が麻痺した役を演じた彼は「体が不自由な設定なので、表現が簡単ではないだろうと思いました。顔や雰囲気でアピールしなければならなかったので気を遣いました。撮影に入る前から家で足を使わないようにしました。ベッドに実際に落ちたりもしました。最初の頃は、練習して怪我もしました。実際に落ちてこそ、その痛みを感じることができましたので。普通体を自由に動けるという事実の大切さを知らないでしょう。そのため足を結び、家で這いまわりました。体が不自由な方々の気持ちを100%分かることはできないですが、撮影中にその方々の苦情を感じました」と伝えた。

ジヒョクというキャラクターにリアルさを与えるため髭も伸ばして、爪を切らないなど様々な努力をしたキム・ヘソンだった。キャラクターの性格は、実際に内面にある暗い部分に集中したという。彼は「僕が持っていた自暴自棄の気持ちと同じでした。実際に僕は他人と比較する時にその心境を感じます。それを思い出しました。僕の悪い感情を出して、演技で表現したんです。演技するとだんだんこのような感情が積もるんです。子供時代はそうではなかったのですが、年をとると心配性になります。100%とは言えないですが、ジヒョクとほぼ同じ状態ではなかったでしょうか」と自身の演技を振り返った。

父親役として出演したアン・ソンギとの共演については「個人的に会ったことが1度もありませんでした。予想通り、とてもいい方でした。後輩たちに配慮して話をしてくれました。高圧的ではなかったです。『思いっきりハイキック!』の撮影時のイ・スンジェ先輩を見ているような気がしました。後輩たちが不快に思う冗談も言わないです。ただ僕が、挨拶以外にあまり話をしなかったです。劇中の関係性を見ると、気まずくて対話がほとんどないんです。そのため最初からそうしようと決めていました。気まずい雰囲気で撮影に入ったら、より気楽に演技に集中することができました。アン・ソンギ先輩がどのように思ったかは分からないです。後輩が笑顔で先に話しかけるべきだったのに。それでも僕は最初からそうしようと決めていました」と明かした。

映画の後半に、お酒と過去の記憶に酔って苦しむソンギルを抱きしめるシーンを思い出したキム・ヘソンは「僕が1番好きなシーンです。実際に僕のお父さんを抱きしめるような気がして温かかったです。これまでうちのお父さんもそのように抱きしめてあげたことがなかったので、反省しました。撮影中に悲しくなりました。お父さんの重さについてたくさん考えました。実際にアン・ソンギ先輩は健康で僕より大きいけれど、抱きしめたら小さく感じました。妙な気持ちがしてそのシーンが1番記憶に残っています」とし、「うちのお父さんはよく表現します。慶尚道(キョンサンド)出身であるにもかかわらず、1日に1回は必ず『愛している』と言ってくれます。気まずいです。僕の役割なのにできていなかったので反省しました。でもちゃんとできないんですよ。昨日も連絡したのですが『止めてほしい』と言ってしまいました」と実父への深い愛情を表した。

映画「ジェニ、ジュノ」でスクリーンデビューして以来、MBCシットコム「思いっきりハイキック!」を通じて注目を集めたキム・ヘソンは、人気と共に訪れたイメージの固定化に対する悩みについても率直に伝えた。彼は「演技変身について悩んでも、どうせ僕を呼んでくれないです。そのためわざと考えないようにしようとします。悩んでも、僕だけがストレスを受けるからです。忘れようと頭の片隅に置きました。もっと気楽に生きようと思います。以前は『演技が僕がすべき職業だ』と思っていましたが、今は趣味だと思っています。僕は性格が暗いので、自虐するのは向いてないです。そこで僕の好きな趣味だと思えば、心が軽くなりました」と率直に伝えた。

また、「得るものがあれば失うものもあるでしょう。それでもそのイメージのおかげで俳優として活動することができました。注目もされたし。もちろん、違う姿を見せるのが課題です。とにかく映画に出演し続けるため、課題を解決できるよう努力します。別に後悔はしません。1度も『思いっきりハイキック!』の出演を後悔したことはないです。逆にその作品のおかげでこれまで演技することができました」と付け加えた。

童顔なビジュアルについても同じだった。キム・ヘソンは「童顔ビジュアルという修飾語は限界があるので、30歳になるまで子役、高校生役のオファーが多かったです。当時はストレスを受けていましたが、今は逆に大丈夫です。キム・ヨンミン先輩も童顔ですが、そのおかげで演技できる役が多いでしょう。20~30代のときは童顔がコンプレックスだったんです。同じ年の俳優もそうですが、普通その年齢には男性的な、男の匂いがする演技に挑戦しようとします。その時期を超えたら、演技の幅が広くなると思います。何よりもどういう風に演技すればいいのかについてたくさん悩んでいます。以前は深く考えなかったですが、だんだん考えることが多くなります。心配性になり、自分を疑ったりもします。その悩みが1番大きいです」と話し、笑った。

演技について率直に心境を告白したキム・ヘソンは、挑戦したいジャンルとして“コメディ”を選んだ。彼は「軽いコメディに挑戦してみたいです。過去のイム・チャンジョン先輩が出演していたコメディジャンルが好きですが、壊れた姿を見せたいです。方言を使うキャラクターを1番やってみたいです。『応答せよ1994』でチョンウ先輩が務めた役もやってみたいし。僕が釜山(プサン)出身だから、上手くできるという自信があります」と伝えた。

キム・ヘソンは「『紙の花』が温かい映画として人々の記憶に残ってほしいです」とし、「今のような状況が1年間続いているので、国民たちも大変でしょう。劇場に訪れるのも怖くて。僕も以前のように見ていただきたいと言えないです。でも『紙の花』をご覧になる方々には温かさを感じてほしいです。あらすじだけ見ると暗いと感じるかもしれないですが、映画を見ると逆に明るい印象を受けると思います。笑顔で温かい心を持って帰っていただきたいです」と映画に込めた気持ちを語った。

「紙の花」は韓国で10月22日に公開された。

記者 : イ・イェウン