「暗殺」チョン・ジヒョン“見た目にはこだわらない…長い髪で銃を撃つ姿が想像できず切っただけ”

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あえて表に出すことはなかったが、ここ10年はチョン・ジヒョンにとって“自己証明”の歴史だった。「イルマーレ」(2000)以来出演した多数の作品が興行的に振るわなかった上、「ラスト・ブラッド」(2009)「雪花と秘文字の扇」(2011)などで海外にも進出したが成功には至らず、再び韓国に戻ってきた。

人気が底を打ったと評価されたチョン・ジヒョンは映画「10人の泥棒たち」(2012)で再起し始めた。彼女の出世作「猟奇的な彼女」(2001)の陰から抜け出したと言える。このような世間の評価についてチョン・ジヒョンが告白した。「いつもそこにいた。ただ、人々の期待が大きかっただけだ」と。着実に進んできたチョン・ジヒョンの歩幅を、私たちはあまりにも狭く見ていたのではないだろうか。最近、ソウル三清洞(サムチョンドン)のあるカフェでチョン・ジヒョンに会った。


感情が除去された人物…時代の悲劇の中で人間味を探す

22日に公開された映画「暗殺」でチョン・ジヒョンは満州を拠点にして活動した独立軍のスナイパーアン・オギュン役を演じた。劇中の年齢は20代前半だ。恋に落ちたり、感傷に浸る年頃だが、日本統治時代という時代の悲劇の中で生きる人物だ。日本帝国の2人の大物を排除しろという指令のもと動きながらも時々風景の美しさや愛の感情に戸惑う姿がこのキャラクターの魅力だ。

―独立軍の闘士だ。それを受け入れるときの気持ちはどうだったか。日本統治時代について特別な感情や考えはなかったか?

チョン・ジヒョン:なかった。率直に言うと民族性や愛国心のようなものに特別な感情はない。普段からも国の仕事にそれほど関心がなかった。映画のシナリオが完璧で面白いから欲が出ただけだ。そのためだったか、人間的にアン・オギュンを100%理解することは難しかった。「暗殺」に出演したことで人生に向き合う態度が大きく変わったわけではないが、新しい感情はあった。映画で「大韓独立万歳」と口ずさんで(他の闘士らと) 写真を撮るシーンがあったが、胸にジーンと来た。あんなに胸がジーンとしたことは初めてだ。

―広報の過程では少し隠されたが、一人二役だったじゃないか。親日派の父親に育てられたミツコは幼い頃姉のアン・オギュンと別れた人物だ。同じ親の下で全く違う人に成長した。一人は日本の体制に順応し、もう一人はそれを積極的に否定した。

チョン・ジヒョン:ミツコを通じてアン・オギュンを理解しようとしたし、アン・オギュンを通じてミツコを理解しようとした。一人二役そのものは難しくなかった。ただ、この人たちが同じ空間で会う瞬間があった。そのとき、2人を違うように表現しなければならないというプレッシャーがあった。むしろ気をつかわず自然にすれば良かったのに。惜しかった。シナリオではもっと暗い人物だったが、チェ・ドンフン監督の演出でより軽快になったと思う。いくら悲劇の中に住んでいても嬉しいときは嬉しいのが人間ではないか。そんなふうに理解した。

写真=SHOWBOX
―時代の要求とプライベートな感情を行き来する姿が印象的だった。劇中で流れ者で本音の分からない男ハワイピストル(ハ・ジョンウ) に恋愛感情を抱く。

チョン・ジヒョン:セリフを通じてコーヒーも飲んでみたい、恋愛もしたいと言ったが、ハワイピストルへの感情が恋愛感情であることを果たして知っていたのかは疑問だ。愛という感情も本で見たり、話を聞いただけな人物だと思う。本人の感情を本人もよく分からなかったはずだ。

―チョン・ジヒョンの象徴だった長い髪を切ったのもそれだけ人物に没頭するという意志の表現だと思った。

チョン・ジヒョン:見た目にこだわるスタイルはない。人々が好きなイメージがあるだけだと思う。個人的には一つのスタイルにこだわったり、命をかける方ではない。アン・オギュンが長い髪をなびかせながら銃を撃つ姿が想像できなくて切っただけだ。実は私、前も髪を切ったことがある! (チョン・ジヒョンは2009年、中国のアクション映画「ラスト・ブラッド」撮影のため、肩につくぐらいまで髪を切ったことがある-記者)


「低迷期への悔しさ? 全くない」

―そう言えば「イルマーレ」で共演したイ・ジョンジェさんと再会した。もちろん「10人の泥棒たち」でも共演したが、今回は現場でもっと長い時間を一緒に過ごしたと知っている。どんな話をしたのか?

チョン・ジヒョン:15年が過ぎた。これまでプライベートで会ったことはほとんどない。イ・ジョンジェ先輩とミレニアム時代、つまり1999年から2000年に変わるとき撮ったのが「イルマーレ」だ。そのとき「この世界に本当に終末が来るか?」と話し合った覚えがある。今回の現場では踏み込んだ会話はしなかったが、振り返ってみれば縁が深い。それで実の兄のような感じだ。

―イ・ジョンジェさんが「ジヒョンさんは家で悩みつくして現場では自由にしていたので、そこが羨ましかった」と話した。自身は現場で悩みながらするが、それがとても大変だと言った。

チョン・ジヒョン:その通りだ。感情は家である程度整理していく。特に「暗殺」では、あまり悩まずやらなければならないと思った。アン・オギュンは映画全体の8割以上に登場するが、そのシーンごとに話を強調しようとしたら見る人が息詰まるだろうと思った。あまりたくさん話そうとせず、軽くいける部分はそういうふうにいこうと決心した。

写真=SHOWBOX
―「10人の泥棒たち」以来ジャンル映画を中心に作品を選んでいるようだ。「ベルリンファイル」もそうだったし。

チョン・ジヒョン:わざわざそうしたわけでもないが、強いキャラクターが出る作品を主にしてきたと思う。個人的にもそういう作品がよく合う。ただ、撮影に入れば別に運動する時間がないので普段から体調管理はきちんとしておかなきゃ! と思って毎日ジムに通う。

―人々はチョン・ジヒョンをスターとして見ている。あの有名なCMでテクノダンスを披露し、急浮上したじゃないか。1997年、雑誌モデルとしてデビューして以来、あなたは女優として激しく自分を証明しようとしたようだ。人々はよく分かってくれなかったし。その例として「デイジー」(2005) を撮るときは数ヶ月間映画の衣装を着ていたし、「猟奇的な彼女」(2001) のときはパソコン通信から原作を探して読んだ。このような努力を分かってくれないことを悔しいと思ったことはないか?

チョン・ジヒョン:(しばらく考えた後) 悔しいとは思わなかった。それが自然な流れだし。そのときは若かったじゃないか。若い頃から女優と呼ばれたい気持ちはあった。ところで、スター性のない女優はまた違う問題だ。誰でも女優にはなれるが、誰でもスターになれるわけではない。スターと女優を区別することは無意味だ。線を引いてしまえば、両者の間に壁を作るような感じと言えるだろうか。

―スターの人生をあえて否定しないという意味だと思う。質問を変えてみる。スターに急浮上した後、自ら危機感を持ったことはないか。スターという名の下に自分が隠れてしまう感じだろうか。

チョン・ジヒョン:出演した作品が引き続き大衆から関心を受けられずにいたときは当然危機だと思った。しかし、逆に心配したり、憂慮する周りの反応がアイロニカルだった。そのとき私は20代だった。本当に人生の始まりじゃないか。すぐに引退するわけでもないし。私の考えと価値観は今も、そのときもあまり変わらないが、何人かの人は私に厳しい基準をつきつけた。

―すごい精神力が必要な人生と言える。時代のアイコンと呼ばれたし。

チョン・ジヒョン:生きるのは皆同じだ。違うことって何があるだろうか(笑) 今は女優チョン・ジヒョンとしてうまく生きていくため努力する。年を取っても演技は続けると思う。どんな女優として残りたいかという質問を数えきれないほど受けたが、その度に良い人になりたいと言う。悪役にせよ、他のものにせよ、良い人という感じを与えたい。本心だから多分皆さんに感じて頂けると思う。

写真=SHOWBOX

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン