【CLOSE UP】「私たち結婚できるかな?」イ・ジェウォン ― 世界のどこにもいない“元カレ”

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結婚を控えたヒロインの元カレ。職業は弁護士。好みの弁当を考試院(コシウォン:各種国家試験を受ける全国の受験生たちが集まって勉強できるように作った長期宿泊施設)まで持って来てくれた彼女を置いて浮気をし別れたが、自分に献身的な女性が必要だという理由で再び訪ねてきたこの男は、何事もなかったかのようににやにや笑いながら堂々と話す。「僕が訪ねて来てもいつでもお前は拒否できる。でも、お前、そうはしないだろう」。JTBC「私たち結婚できるかな?」でイ・ジェウォンが演じるサンジンは、ヘユン(チョン・ソミン)とジョンフン(ソンジュン)の恋愛に突然登場した元カレであり、ヘユンの姉ヘジン(チョン・エヨン)の離婚訴訟の担当弁護士という曖昧な立場に立っている男だ。だが、イ・ジェウォンは最初からこのように誰も視線を投げなさそうなサンジンの恋愛に興味があった。「実は少し不器用ですが、彼女がよく食べて生きるように外で熱心に働くというやり方で、自分ならではの恋愛をする人物がサンジンです。純粋だったり、ものすごく優しくしたりする男ではありませんが、自分ならではの方法で恋愛を探す人です」

どこにでもいるが、見たことがない男

演技をしていない普段のイ・ジェウォンは“みっともない”というよりあどけなくて、少しだけ気分を悪くしてもすぐ無邪気に笑いそうな顔を持っている。同時に、どこかへ行ってもまったく負けないようなしっかりとした視線を投げる。彼が「私たち結婚できるかな?」にキャスティングされるきっかけとなった、KBS「ドラマスペシャル」の「湿地生態報告書」で演じたノギョンは、友達の家に居候をして就職もできず戦々恐々としながらも、主人公のチェ君(ソンジュン)に女性とのデートのノウハウを教えようと、紙コップの底をくしゃくしゃに巻いてワイングラスを持つ振りをする。限りなく天然な姿が印象的だった彼が、サンジンのように“みっともない姿”と“くじけない姿”という相反する姿をすべて持つ役で戻ってきたのは当たり前のことかもしれない。そして、これは映画「カン・チョルジュン 公共の敵1-1」をはじめ、「アジョシ」とKBS「カクシタル」など見せた、憎たらしかったり、ふざけたりするのに欠かせない役を継続して演じていた間、「六つの原則の中で他の五つの原則は台本に全部出ているから、俳優として似たような役を“どのように”するかにより焦点を」合わせて少しずつ固めてきた実りであろう。どこにでもいそうな平凡な役の一つ一つを「イ・ジェウォンならではの何か」にするために努力してきたストーリーには、まるでノギョンが手で隅々まで擦って作り出した紙のワイングラスのように粗雑に見えるが、我慢強い真心が込められている。

自ら“ビデオオタク”だったというほど、目の前に繰り広げられる映画とドラマの世界に溺れていった高校時代、イ・ジェウォンはある俳優を発見すると、彼のフィルモグラフィーに最初から全部目を通し、また見れば見るほど映画にしっかりはまっていった少年だった。そして、卒業する学年になって進路を選択しなければならなかった時、とうとう自らその世界に入ってみようと心を決めたことは、まるで毎日食べるご飯に他のおかずを一度のせてみることのように自然なことであった。「学問への情熱がとりわけ強い大邱(テグ)寿城(スソン)区の学区内で唯一」演劇映画学科の進学を希望していた彼は、「自分にどれだけの可能性があるのか気になって」週末ごとにソウルにある塾に通いながら進学の準備をした。平日は学校へ、週末は明け方にKTX(韓国高速鉄道)に乗って塾へ行き来するという過酷なスケジュール。しかし、イ・ジェウォンは「大邱の田舎者だったからこそ、もっと頑張れた」という言葉でその辛かった時間を要約する。何かに集中するとそのまま突っ走ってしまう趣向が彼をこの世界について勉強させ、1年間で分かってきた演技の味は、忙しく行き来する生活に振り回されずに自分の準備をし、集中するようにした基盤になったのだ。

「サバのような俳優になりたい」

確信的な話をする時は弾力よく声のテンションを上げていたイ・ジェウォンは、Twitterに掲載した「サバのような俳優になりたい」という表現を詳説しながら、口元を大きく引っ張って笑った。「グルメ紀行番組でサバの特集を放送していました。安くてありふれた魚だから、簡単に食卓に上るのがサバじゃないですか。でも、その味は本当に……食べるたびに『サバってこんなにおいしかったっけ……』と思うんです(笑) 一瞬、そんな俳優になりたいと思いました」ある作品が繰り広げるストーリーは時に、そのストーリーを待っている人々の前に整えられる食卓となる。贅沢に整えられた食卓であれ、数少ないおかずでこぢんまりと整えられた食卓であれ、その上でイ・ジェウォンが居たいと思う場所は、最初は目立たないが、一度手が伸びると何度もスプーンの上に乗せるようになるサバなのだ。演技というスプーンの上に香ばしくてあっさりした味をのせたがるこの俳優は、これからまたどんな味に興味を感じるのだろうか。何になろうと、すでにサバの平凡ながら非凡な味を一番にした俳優だ。だからこそ、イ・ジェウォンが料理するサバのおかず一皿を、そしてまた違う味の何かを私たちはただ涎を飲みながら待ってみてもいいだろう。

記者 : イ・ギョンジン、翻訳 : ハン・アルム、写真 : イ・ジンヒョク、編集 : キム・ヒジュ