チャン・ジェイン「あなたの笑顔がメロディーを作ります」

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写真=Namoonleefエンターテインメント

チャン・ジェインの2ndアルバム「夏の夜」

「Busker Buskerは、オーディション番組に出演する前にストリート公演をしていたそのままの音楽を披露し、大きな人気を集めました。本来の姿に人々は呼応したのです。私もBusker Buskerを見て勇気をもらいました。弘益大学(ホンデ)近所のクラブで歌っていた時代の私の感性を受け入れてもらえるという希望ができたのです」

7月末、新ミニアルバム「夏の夜」の発売を前に、チャン・ジェインはあるメディアとのインタビューでこう語った。1stミニアルバム「Day Breaker」がアコースティックなフォークの感性を期待していたファンには裏切りのように見えたかも知れないとのことだった。

やがて姿を表した「夏の夜」には、5曲が収録されている。2つのバージョンがある「Rainy Day」を同じ曲だと考えると新曲は4曲であり、いずれも恋に関する楽曲だ。最初の楽曲の「夏の夜」から4番目の楽曲「Goodbye」まで、このアルバムに収録された曲は、結局一つのカップルが出会い、恋愛をし、危機を迎え、結局別れるまでの過程を綴ったストーリーになる。

チャン・ジェインは、今回のミニアルバムに自身の本来の感性を盛り込むために、自らプロデュースをし、収録曲にすべて自作曲を入れたという。そのためだろうか?「Day Breaker」と「夏の夜」を洋服に例えるのなら、チャン・ジェインには後者のほうがより楽で動きやすい服のように感じられる。

「夏の夜」は、ある女性の“片思い”に関する楽曲だ。語り手は、今夜好きな男と一緒にいたいと思っている。問題は、彼女から見る男性がこのような語り手の気持ちに知らないふりをしていることだ。だから焦ってしまう。歌詞はこのような内容だが、男性が彼女の気持ちを本当に知らないふりをしているのかは不明確だ。

むしろ明らかなのは、語り手が男性の気持ちを確信できず、自ら自信がないこと。そして彼女の思いは“片思い”だが、語り手は“小心者”である可能性が高い。だとすれば、このタイミングで語り手が気づくべきことは、ドラマ「紳士の品格」のチャン・ドンゴンの台詞のように、男性は直接話してくれないと女性の気持ちを死んでもわからないという“真実”だ。

実は、この曲は初めて聞いた時、メロディーが聴きとりやすいほうではない。チャン・ジェインの独特な歌声の後ろにメロディーが隠れてしまうというか。しかし、繰り返して聴くほど、ギターとエレクトロニック・ギターのアンサンブルが目立ち、サビのメロディーが耳に入り始める。20代シングル女性の率直な欲望を表した歌詞、様々な音を出すギターという楽器の魅力が耳を掴む曲だ。

「STEP」は、甘い夢のように幸せいっぱいな瞬間に関する楽曲だ。語り手は今嬉しくて自然に肩を動かして踊るほど幸せた。歌詞を見ると、その幸せは今彼女のそばにいる愛する人から来たことがわかるが、「あなたの笑顔がメロディーを作ります」「過ぎた時間がハーモニーをなします」などの表現からわかるように、幸せの感情を音楽の要素で隠喩した歌詞が印象的だ。

全体的なサウンドはフォークよりは軽いダンスが似合う感覚的なポップに近い。特に「STEP」という単語が6回も繰り返される部分で流れるキーボード特有の旋律が印象的な単純なメロディーが繰り返されるが、爽やかな感じを与える。

チャン・ジェインが「両足が止まりません。I can't say」「今両足を風に任せます。So just step」などの歌詞を歌う時に発生する一定のリズムは、サビの部分を除き、曲全体で使われているが、これは語り手があたかも踊っているように踏んでいる一定のステップを連想させる。歌声が部分的に使われたサビ部分のチャン・ジェインのボーカルが爽やかな楽曲だ。

「Rainy Day」は、雨の日に、恋人に対する気持ちを何度も確かめるある女性の話だ。語り手は恋人に会って帰ってくる途中だ。喧嘩をしたのか、これまで溜まっていた寂しい感情のためなのかわからないが、今彼女の心には穴が開いている。

歌詞は雨の日の風景を見ながら慰められ、平常を取り戻し、そして再び恋人への恋しい気持ちになる語り手の心理を繊細に伝えている。特に「私たちの姿があの夜空から流れてくる」「傘の下に滲んて来ます。記憶の中で微笑んでいる私たちの姿が」という歌詞が美しい。

曲が始まって1分11秒ごろから本格的に登場するバンドサウンドは、ドラマティックに変化する語り手の気持ちを豊富に伝える。特に、朦朧としていながらも、ふわふわしているようなエレクトロニック・ギターの演奏が聴者の感性を刺激する。洗練されたバンドサウンドとチャン・ジェインの心にしみる歌声、詩的な歌詞がうまく調和した楽曲だ。

5番目の曲「Rainy Day(小さい部屋)」バージョンは、バンドサウンドなしに、ギターを主に使っているが、オリジナルバージョンに比べればより詩的な“モノローグ”のように感じられる。

「Goodbye」は、恋人との別れを歌った楽曲だ。語り手は恋人と別れた後、夕焼けが見える窓際に座り、彼との別れを受け入れている。歌詞に出てくる、「伝えられなかった言葉」のため「ぽろりと流れ唇に止まっている」彼女の涙は、たぶん澄んでいて温かいけど熱くはないだろう。

「背を向けた彼の肩に日差しがいっぱい」という歌詞からも読み取れるように、二人の別れは激しい“破綻”というよりは、認めて受け入れた“整理”に近いようにみえるためだ。

ギターとピアノが使われたサウンドは、このような語り手の心の状態に似ている。遅い速度や温かいトーンで蛋白で整然とした感じを与える。少しずつ聴く人の心をヒリヒリさせる美しいメロディーやチャン・ジェインの精製された歌声が目立つ曲だ。

チャン・ジェインのミニアルバム「夏の夜」は、それぞれはっきりとした個性はあっても異質な雰囲気の曲が脈絡なく盛り込まれていた「Day Breaker」の時と比べれば、カップルの恋物語という現実的な脈略を得ており、確実に聴者が共感できる余地が増えている。
つまり、「Day Breaker」がファンシー(fancy)だったとすれば、「夏の夜」は“日常的”と言えるが、当たり前の話だが、素朴でやや変わっているところもある人間チャン・ジェインのナチュラルな魅力が強く表れるのは後者のほうだ。これは、つまり聴者が「夏の夜」を聴いた時、彼女の感性に集中する可能性が高くなったということになる。

にもかかわらず、チャン・ジェインの願いのように「Day Breaker」と「夏の夜」がはっきりと区別されるアルバムだとは言えない。サウンドのカラーやスペクトルなど、スタイルにおいて一定の違いがあるのは確かだが、二つのアルバムが共有している情緒も少なくないためだ。チャン・ジェインが認めようが認めまいが、二つのアルバムは紛れも無く彼女の分身だ。

したがって、チャン・ジェインが強調する本来の感性が、ただこのようなサウンドスタイルに限ったものではないとすれば、彼女が自分本来の感性をアピールするという理由で、彼女自身の音楽が幅広く発展できる余地を自ら狭くするミスをしないでほしい。

自分本来の感性とは極めて曖昧なもので、自ら発見できるものというよりは、他人との関係の中で初めて発見されるもので、意志をもって作られるよりは時間と経験が積み重なって結果的に形成されるものに近いためだ。

「夏の夜」は、チャン・ジェインが人々が求める音楽と、自身が求める音楽の接点を見出す過程から出た結果だ。そのため「STEP」に出てくる「あなたの笑顔がメロディーを作ります」という歌詞は、たくさんの人が自身の音楽を聴きながら幸せになってほしいというチャン・ジェインの気持ちとも読み取れる。

もちろん、このような接点を見つけることは非常に重要なことだ。しかし、チャン・ジェインがミュージシャンとしていわゆる“ロングラン”を願っているのなら、今彼女に大事なのはむしろ試行錯誤を恐れない気持ちであるように思える。チャン・ジェインはまだ“原石”に近い。最後に芸能プロダクションという“保護膜”から飛び出して一人歩きを選んだチャン・ジェインの健闘を祈りたい。

記者 : ソ・ソクウォン